情報屋「濶ヤ」
□プロローグ
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〜序章〜
「何か佳い情報でも手に入れたか、淀。」
暗い闇の中。
まるで化け猫が引っ掻いた後のような月が時折雲の間から顔を覗かせている夜。
青年はそんな闇の中にいた。
右手は携帯電話を握っている。如何やら通話中のようだ。
暗い闇と月が代わる代わる青年を塗り替えていく。
彼が歩くこの街は、無法者が蔓延る都市「ヨコハマ」。そして、彼はそんな無法都市ヨコハマにて情報屋を生業としている青年だ。
彼の名は“濶ヤ”。ここいらでは、ちょっとした有名人である。
『朗報だよ、たっちゃん。“彼”はポートマフィアにいるらしい。』
淀と呼ばれた声の主は実に楽しそうであった。
「そうか、上々だ。」
濶ヤは闇夜に浮かぶ三日月の如く目を細めた。