龍神様の夢の跡

□9 魑魅魍魎の主
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牛「何故だ……妖怪でもねぇ…てめぇに…」



奴「血なら流れてる。悪の…総大将の血がな……」



倒れた牛頭丸に背を向ける奴良くん。
そして私と雪女を交互に見たあと、切な気な表情をした。


奴「知ってたよ。自分の…こと……。夜、こんな姿になっちまうんだな」



奴良くんは失望したかい?と眉を下げながら私を見た。



『失望って………なんで?奴良くんは私達の事守ってくれたんでしょ?今回も、窮鼠の時も。それに…………』



一呼吸置いてから奴良くんを見る。


『……例え奴良くんが妖怪だったとしても、奴良くんは奴良くんだよ。なんにもかわらない。つららちゃんにも言ったけど、奴良くんは私の友達だよ!………もちろん、奴良くんが迷惑じゃなければだけど』



笑顔でそう告げた。奴良くんは唖然とした顔をしていたが、すぐに妖艶な笑みを浮かべて言うじゃねぇかと私の額をこづついた。



『あ!そういえばつららちゃんは………』



すっかり忘れていた。と隣を見ると地面に力なく倒れるつららちゃんが。



『ぎゃぁぁぁぁあ!!つららちゃん!?だ、大丈夫!?……ってうわぁぁ!こんなに冷たくなって………!』



半泣き状態でど、どうしよう………つららちゃんがぁ!つららちゃんが天に召されるぅぅぅ!!と叫ぶ。←

私のせいだ。私がちゃんと止血出来なかったからぁ!!



奴「大丈夫。気絶してるだけだ。………てか、つららが冷たいのは雪女だから元々だぞ」


『…………そ、そうだった………』



思いっきり普通の人間の感覚で見てた、そっか…………つららちゃん雪女だから…………



ほっとした私はへなりとその場に座り込んだ。


奴「ほら、お前も来いよ。宿まで連れていってやる」



奴良くんが腕を引こうとしてくれたが、私はそれを止めた。



『…私、もうすこしここにいるよ。彼に聞きたいことがあるんだ』


と未だに倒れている牛頭丸………くんを見た。


怖い人(妖怪)だけど、きっと悪い人ではないと思うんだ。と笑うと奴良くんは呆れたような顔をしていたが了承してくれた。


奴「気を付けるんだぞ。そいつ、いつ襲いかかってくるかわかんねぇからな」



『襲いかかっ………』


奴良くんが恐ろしいことを言い残して消えるので、冷や汗が止まらない。


確かに………さっきまで敵だったし………いつ殺されても文句は言えないのかもしれない。

でも、ひとつだけ聞いておいたい事があったんだ。



_________



『……山の天気は変わりやすいってよくいうけど…………』


ゴロゴロゴロゴロっ!



ピシャァァァン!!



『うわぁぁぁ!!』



流石にこれは酷い。

さっきまで星が見えるほど綺麗に晴れ渡っていたのが嘘のよう、おまけに隣には私に刀を向ける牛頭丸さんがいます。


しかも雷ヤバイですワタシカミナリダメ……。



助けてください。殺される←



『(なんでこんなことに………)』



遡ること10分前



牛頭丸さんの回復を待っていた私はポツリポツリと降ってきた雨に慌てて大きな木下に避難。


その際、牛頭丸さんは放置←







…………は流石に酷だったので木の下に運んであげようとしたのだが………。



『……!!お、重っ!?なにこれ!?下手したら大きめの狸の信楽焼より重いっ!』←



………。



例えが微妙すぎた。というか、私信楽焼持ったことなかったわ。



爪の重さで倍増された牛頭丸さんを運ぶのは1乙女としてかなりの労力を要される。


とりあえず頑張ってみよう。ということで彼を背負って数歩歩いた、その瞬間。



ガチッ



『……………え?』



耳元でハッキリ聞こえた金属音、鼻につくような血の臭い、そして首に当てられている冷たくて鋭いなにか………。


サァーっと血の気がひいていく。




牛「なんのつもりだ…………」



低い声が静かに背中に響く。



『…いや、えっと………け、怪我してる上に雨にいつまでも当たってると風邪引くかなって思ったのでそこの木の下に運ぼうと思っただけなんですすいません』←



完全に逃げ腰の私。
我ながら情けない。
というか、やっぱりこうやってみると話し合うっていうのは無理そうだね、運んだらすぐに帰ろう、それがいい←



『…だ、大丈夫ですよ。運んだらすぐに帰るんで……………』




その時。




ピシャァァァン!




『いやぁぁぁあぁ!!』




雷までなりはじめて、私は背中の彼を振り落とさない程度で全力ダッシュして近くにあった洞窟に滑り込んだ。




________




『(それで今に至ると…………)』



運んだらすぐ帰るつもり……だったのだが、運の悪いことに雷が鳴り出してしまった。
私は雷が大の苦手でとてもじゃないけど雷の中一人で宿に帰るなんて考えられない。



『…はぁ……どうしよ……』



こんな山の中、しかも夜に人なんてそうそういないだろうし、ましてや携帯なんて通じるわけがない。


かなり袖の余る超ロングパーカーのフードを深めに被りながら大きくため息をついた。



『………』



ちらっと隣の妖怪を確認してみる。
すでに先程やられた傷のほとんどは回復しているようだ。さすが妖怪、半端ない回復力。
これなら一人でも帰れるだろう。



『………あの。帰らなくていいんですか?』


沈黙に耐えきれなくなった私は控えめに巣に帰らないのか聞いてみる。



牛「お前が妙な真似をしないか見張ってる。それだけだ」



この山で妙な真似をされたら牛鬼様に迷惑がかかる。と付け足した。


そうですか……。と返事を返したあと、私はさっき気になっていたことを思いきって聞いてみることにした。



『……あの………貴方………もしかしてつららちゃんの事が………』



「美亜!!!」



疑問を口にする前に森の奥から大きな狐………もといフォンがかけてくる。



『あ。フォン』



フォ「あ。じゃねぇー!!お前は何処に行ってたんだ!?こんな時間になっても帰ってこねぇーから心配して迎えに来たんだぞ!?大体お前はいつも………!」



ガミガミとフォンは日頃の私の愚痴をこぼし始めた。

てか段々迷子と関係ない内容になっていってる…………。




フォ「………この間だって、俺の大事にとっておいた油揚げ、勝手にみそしるにつかいやがって!」


『ごめん。それはホントにごめんて………』



わざとじゃない。ただ、今日のお味噌汁の具を考えた時にいいところに油揚げが置いてあったから使っちゃっただけなんだ。



フォ「……!?おい!そいつもしかして牛鬼組の若頭じゃねぇーのか!?」



『牛鬼組………?』



聞いたことのない単語に首を傾げる。
しかし、二人の間では妙な空気が漂っていて、ただただそれを見ていることしか出来ない。



フォ「武道派組織の若頭様が一体我が主になんの用だ」


低く唸るような声でフォンは体制を下げる。
完全に犬が相手を威嚇するような形だ。



牛「ほぉ………ただの人間じゃねぇーとは思ったが、妖狐のお供付か………おもしれぇ」



こちらも低く体制をとると刀を構える。




っておいおい……まさか………


私の嫌な予感は的中して、二匹は一斉に相手に向かって走り出した。




『ストップ!!!二匹ともやめて!!』



こんなところで戦われたらたまったもんじゃない私は二匹の間に入って制止した。



フォンは私が入ったことですぐに止まったが、無論向こうは止まる気はない。




フォ「!!!?」



『えっ!?ちょ!!』




そのまま刀は私へと降り下ろされた。
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