龍神様の夢の跡
□5 窮鼠、猫を食らう。
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それから数分後。
無事皆が帰ってきた。そのころにはだいぶ私の足も回復しており、皆に断って胡座をかかせて頂いた。
清「特になんにもなかったね」
『(いやいや、こっちは大事件が起きたんだけど………)』
とりあえず、何もされてないから言わないでいいか…………。
ガラガラガラ
「おぅリクオ。友達かい」
そう言って入ってきたのはおじいさん。きっと奴良君のおじいちゃんなのだろう。
清「どうもおじゃましてます」
『こんにちは』
ぬ「おうおうめずらしいのう。お前が友達をつれてくるなんてな。アメいるかい?」
ご丁寧に一人一人にアメを配ってくれた。
いいおじいちゃんだなぁ………。
おじいちゃん………かぁ………。
私のおじいちゃんってどんな人だったけ…………
家「美亜ちゃん?」
『……あっ!う、うん?どうしたの?』
気がついたら結構長い間考えてしまっていたらしく、もうそろそろおいとましようということになっていた。
『それじゃあ、おじゃましました!』
家「リクオくんまたね!」
___________
歩いたわずか一分程で家に着いた。
ホントに近かい。
『フォン。もう出てきていいよ』
するとチャックが自動で開き、中からフォンが飛び出してきた。
フォ「はぁ………やっぱり外は空気が美味しいみゅい………」
『うん。なんかごめんね』←
予想の他ダメージ(主に心の)を負っていたフォンに申し訳ない気持ちがほんの少しだけ沸いた。ほんの少しだけ。
フォ「そういえば……今日はやけに妖気の強いところに行ってたみたいだみゅ……?一体何処にいってたみゅ?」
『…えっ?どこって……斜め向かいの奴良君の家だけど?』
フォ「ブフォォォ!?な、なんて所に突っ込んだみゅ!?」
無謀な………!と飛び回るフォンの尻尾を掴んで墜落させ………ゴホンッ……落ち着せる。
『何が無謀なの?別に奴良君の家が妖怪屋敷って訳じゃないんだよ?』
フォ「何いってるみゅ!!あそこは妖怪の総本山!奴良組の総本家みゅいよ!?」
『フォン。そういう言い方しちゃダメだよ。確かに、奴良君の家はちょっと趣深いけどそれじゃあまるで妖怪の巣窟って言ってるようで嫌だなぁ…………』
フォ「し、信じてないみゅいね!?ホントにあそこは………『フォン!!』…みゅ……?」
『………私の友達を"妖怪"扱いしないで』
私がこう告げたときのフォンの顔。
それはきっと一生忘れられない。
…………とても悲しそうな顔をしていた。
フォ「………わかったみゅ………。嫌な思いさせて悪かった…………」
もう先に寝てるみゅ。と行ってフォンは布団に潜っていった。
『………っ……!』
バカみたい………。
ホントはわかってるのに…………。
フォンはただ私のこと心配してくれてる、それだけなのに何であんなにきつい言い方しちゃったんだろ…………。
これじゃまるで………
『……八つ当たり………』
頬に透明な雫が1滴また1滴と垂れていく。
明かりもつけずに暗い部屋のなか、私はただ『ごめんね、ごめんね』と呟く事しか出来なかった。
____
『…………ん』
目を開くと真っ暗な空間に座っていた。
どうやら寝てしまっていたらしい。
だからと言って今部屋の明かりをつけたらフォンを起こしてしまうかもしれない。
それは気まずいので私は気晴らしに外に出掛けることにした。
____
『……はぁ………どうしよう』
外に出たのはいいもののいく宛がない。
かといって家に戻るのも…………まぁ気が重い。
そんなとき目に入ったのは奴良君のお家だった。
『(なんか………騒がしい?)』
門が少しだけ開いていたので、奴良君には悪いが少し覗いてみることに。
『………!?な、なにこれ………』
そこには昼間は無かった光景。
どこを見ても妖怪、妖怪、妖怪…………。
『(やっぱり、フォンが言ってたのは本当のことなんだ…………)』
そう思うと無性にフォンに会いたくなる。
帰ろう。そしてフォンに謝らなくちゃ。
そう思って踵を返したそのとき。
「人の家を覗き見とは、いい趣味してんじゃねーか」
『ひいっ!?』
背後から低い声がして飛び上がる。
唯一役に立つ運動神経でバックステップして合間を取ると、そこには長い髪の妖怪がこちらを笑いながら見ていた。
『ひ、人の家って!あなたねぇ!?こ、ここは奴良君の家で………!』
「俺がその奴良君だったら?」
慌てて反論すると、予想を遥か上にいく答えが帰ってきて固まる。
えっ?今、奴良君っていった?
『………ぬ、奴良君………?リクオくんなの………?』
一応、確認をとってみる。
「さぁな?お前がそう思うならそうなんじゃないかい?」
『いや全然。別人にしかみえない』
妖しい笑みを浮かべる彼はとてもじゃないがいつもの奴良君とは思えない。
即答かよ。と呟く彼は目を細めて私を見つめる。
「それより。お前はなんでここにいたんだ?」
『…それは…………』
そのとき。頭上から美亜!!と言う声が聞こえた。
上を見上げるとフォンが一直線にこちらに飛び込んでくる。
『……!?ふ、フォン!?』
フォンは私と妖怪の間に入り、大きな狐へと姿を変えた。
「!?……ほぉ。妖狐かい?」
フォ「若き妖怪の主よ。この方に手を出してみろ。例え本家の若頭だろうと容赦はせぬぞ」
大きな牙を突き出し威嚇するフォン。
今まで見たこともない姿に私は呆然と見ていることしか出来なかった。
「別に手を出そうとしていた訳じゃない。これから出入りなんだ。鼠だ」
フォ「鼠………窮鼠か。それが我が主となんの関係がある」
「若っ!出入りの準備が出来ました!」
すると門から先程あった首のない男性が出てくる。そして、フォンを見ると顔色を変えて何処からかあやとりのようなものを取り出した。
「貴様ら。この方をどなただと思っている………」
明らかに声色が昼間と違う。
怖い…………。
「やめろ。そいつらは今回の出入りには関係ねぇよ」
「しかし、ただでさえ陰陽師と人間の娘を助けに行くなどという…………『!!い、今何て言いましたか!?』」
我慢しきれずに首のない男性に聞くと、男性はこちらを見て一瞬驚いた顔をしてこう言った。
「君はさっきの………。君のご学友が窮鼠というやつらに捕らえられたんだよ」
人間の娘………陰陽師…………。
きっとかなちゃんとゆらちゃんの事だ!
『…っ!フォン!二人を助けに行こう!』
フォ「はぁ!?バカなのか!?前も言っただろう!お前はただでさえ妖怪に狙われやすいと…………」
『………わかってる。わかってるんだけど………ごめん。私のわがまま。聞いてくれないかな?彼女達は私の大事な友達なんだ』
フォンの目を見てハッキリと告げる。
フォンはしばらく黙っていたが、やがて呆れたような、わかっていたような顔をして伏せる。
フォ「仕方ないな………。乗れ。今回だけだからな……」
ありがとっ!とフォンにバグをして背中にのせてもらう。
「お前らも行くのかい?なら、一緒に鼠狩りと行こうじゃねぇか」
妖怪の主と呼ばれたその男は、片手に大きめの盃を持って、後ろにたくさんの妖怪たちを従えていた。
『鼠狩り。私は無力でなんにも出来ないけど』
『待っててね。二人とも』