龍神様の夢の跡
□1 終わりは始まりの鐘となる。
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"__ヤクソクだよ?"
『うわぁ!?』
頬を撫でるような冷たい風と頭に響いた高い声に慌てて飛び起きる。
『!いったぁ……』
直後、ズキンッと身体中が痛みだし思わず声をあげた。
何でこんなに身体中が痛むんだろう………?
身に覚えが無い痛みに頭を悩ませているが、そもそも直前まで何をしていたのかが全く思い出せない。
ふと、周りをキョロキョロと見渡してみるが白白白…………とにかく白一色の空間だ。
『こ、ここって一体…………』
「ようやく目を覚ましたか。小娘」
頭上から大きな重低音が聴こえるので、見上げてみるとそこには黄金に輝く龍の頭が。
『………ってり、龍!?』
あ、あ、ありえない!?
だって龍って確か架空の生き物だったよね!?
あれ!?龍は実在してて、恐竜が架空の生き物だったっけ!?←
なんて訳もわからないことで混乱していると、私が驚いたことに満足したのか、先ほどより少し声のトーンを上げて龍は言葉を続けてきた。
「いかにも。わしは雷龍じゃ」
雷龍と名乗ったその龍はゴロゴロと雷のなるような音を出して笑う。
『あ、あの。一つお尋ねしてもいいですか?』
雷「なんじゃ?」
若干怖くもなくもないが、見たところご機嫌のようなので、雷龍さんに今一番聞きたかったことを聞いてみることにした。
『ここはどこなんですか?』
雷「ここか?ここは天界、お前さんの精神世界じゃな。なんせお前さん死んでしまったものじゃからのぉ」
『はっ!?死んだ!?』
また雷をゴロゴロとならし笑う雷龍さん。
いや、こちらからしたら全然笑い事じゃないのだが←
それにしても今まで全く死んだという実感が持てなかったのだが………?
『………そういえば体が少し透けてる…………ような気がしなくもない』
雷龍さんの雷の光に手を透かしてみようとする。
うん、やっぱり透けてない←
本当に私は死んでしまったのだろうか………?
雷「うむ…どうやら混乱して記憶を失っているようじゃな。何があったのか思い出せないのであろう」
その言葉に小さく頷く。
全くもってその通りであり、思い出そうとしてもそこだけテレビの砂嵐のように見えなくなってしまう。
思い出せない。
家族の顔や祖父母の顔はぼんやりと浮かんでくるが、家の住所や電話番号、学校の名前や友達の顔でさえ私は忘れてしまったようだ。
雷「………まぁよい。そのうちに思い出すじゃろうて。」
雷龍はたいして気に止めない様子で告げると大きな欠伸をした。
雷「そうそう。お前をここに呼んだのは他でもない。お前さんがあまりにも可哀想な死を迎えたものだからのぉ、特別にワシが生き返らせてやろうというものじゃ」
『い、生き返れるの………!?』
いや、そもそも可哀想な死にかたをしたって………一体何をやらかしたんだ前世の私よ←
雷「もちろんじゃ。ワシを誰だと思っておる。龍神雷龍じゃぞ?…………まぁ、龍神とて万物の掟に逆らうことはできんのじゃがな。
…………お前さんには別の世界で生きてもらうことにしよう」
『別の………世界?』
別の世界と言うのはどういう意味なのだろうか。まるで世界がいくつもあるような言い方をしている。
雷「その代わり………お主にはワシの…………龍神の血を継いでもらう。無論、この血を引けば多くの者に襲われるかもしれぬ…………だがそれがお前さんの宿命なのじゃ」
『龍神の血………?宿命……?』
なにやら難しい言葉を並べると、雷龍は私の目の前に黄金に輝く鱗のペンダントを差し出した。
恐る恐るそれを受けとると、そのペンダントは先程よりも強い光を放ちやがて私の首へと勝手にかかる。
勝手に←
『な、なにこれ!………っ!しかも外れないっ!』
気味が悪くなった私はすぐさまペンダントを外そうとするが全く外れる気配がない。
雷「それはお前さんの龍神の力を安定させるペンダントじゃ。それを着けていれば無茶さえしなければ暴走したりはせん。」
逆に暴走することがあるの!?←
それはそれで不安なのだが。
雷「さて…………そろそろ時間じゃな………では、お前さんに多くの幸があることをここで祈っているぞぃ。
_____さらばじゃ」
その言葉を最期に、私は再び深い深い眠りに落ちていった。