世界の引鉄〜World Trigger〜

□君がくれたその光は
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暗闇の中、希望と絶望の狭間にいる君を見ていた

その闇の中。彼らはまだ、闘っている

危険は闇に飲まれ、この戦場は何が何だか分からない

でも、

閉ざされた暗闇の、この恐怖の中でも

僕らには光が見える


諦めるな。

今こそ立ち上がれ。



〜君がくれたその光は〜



しんと静まり返っていたこの忘れられた町に数多の爆音が響いてる。

二年前。

突如として現れた近界民たち。

そいつらのせいで友人たちの何人かは戦場に身を投げるようになり、周囲の人間たちはやたらと消えた。

中学最後のこの冬。

私もとうとう戦場に身を投げる側になった訳だが。

そもそも何故、私はボーダーに入ろうと思ったのか。

言ってしまえば所詮ただの気まぐれだ。

そう、ずっと思っていたし、そうだと信じて疑わなかった。

・・・でも



でも、本当は・・・違かったのかもしれない。

否、違うんだ。


本当は。


本当は、私ーーー





動かなくなった近界民はそれでもなお人々に恐怖を与える。

壊されたレンタルショップを前に私は決意を固めた。


『先輩。荒船先輩。』

「・・・ぉう。」

『ありがと、う・・・ござい、ます。』

「・・・ああ。」

先輩は私の頭に手を置いて、ゆっくりと撫でた。

先輩は何も言わない。

この体は無機質なトリオン体だけど、先輩の優しさがひしひしと感じられた。

『っ、先輩ッ!!私、私は・・・今度こそ、今度こそみんなを、守りたいっ!!!』

学校の友達や先生。

ボーダーのみんな。

大切な家族。

『町の人たちだけじゃない。私、その人たちを守ろうとする、荒船先輩たちみたいなボーダーの人のことも、守りたいんです。』

幼い頃の私は純粋にみんなを守りたいと思った。

けれど、お父さんが殺されて、続けざまにお母さんは片手に収まるほどの冷たい"引鉄(トリガー)"となった。

私はいつの間にか、守りたいと思うその心を忘れてしまっていた。

自分には向いてない。面倒だ。

なんて。

でもそれはただの言い訳でしかなくて。

出水たちがボーダーに入って戦うのを目の当たりにしても、その殻から抜け出すことは出来なかった。

けど、迅たちに言われて、無理矢理だったけどボーダーに入って、また守りたいって思えた。

だから

『だから、私・・・絶対にお母さんの黒トリガーを起動出来るようになります!!そしたら、そしたらまた・・・稽古、して、くださ、い・・・。』

ああ、なんでこんな時に。

泣いちゃダメ。

先輩を困らせちゃう。

消え入りそうな自分の声。

しかしきっと荒船には届いただろう。

彼はそういう人だ。


先輩は何も言わなかった。

少しして、帽子を再び深く被らされた。

「英里」

『・・・はい。』

「やるぞ。」

『ッ・・・、はいっ!!!』

そうだ。

私の周りにはこんなにも頼りになる先輩がいる。

後輩がいる。

友達がいる。

仲間が、いる。

町の方に走って行った先輩の背中にお礼を言って、私は警戒区域に向かって走り出した。
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