世界の引鉄〜World Trigger〜

□「もう大丈夫」
1ページ/3ページ

未来

その分岐はいくつにも広がり、無限の可能性を作り出す
けれど、"今"が通るその道はたった一つで

命が生と死を繰り返すように

未来もまた

その存在の生と死を、繰り返す



〜「もう大丈夫」〜



有給3日目。

とうとう私は街へ繰り出した。

だって、1日目2日目と碌な休日じゃなかった。

まあ、副作用について分かったのはよかったけど、昨日なんて酷かった。

結局勉強したのは最初の1時間だけで、その後いつの間にかみんな寝てた。

で、いつの間にか帰ってきた姉と妹が玄関の靴を見てお菓子とか持ってきてくれたんだけど・・・

『はあ・・・。』

思い出しただけで溜め息だ。

2人がお菓子を持ってきたのは2時半。

私が最後に時計を見たのは11時。

つまり、私たち4人は真昼間三時間寝ていたわけだけど。

『なんで、なんであいつは・・・!!』

なんであいつは私を抱き枕にして寝てたんだっ!!!

たしかに部屋の中は寒かったし、先に寝たのは多分私だし、私にも落ち度はあった。

でも!!あの質の悪いイタズラはなんだ。

しかも、寝起きの発言が「んー?おはよ、英里。」って!!

確信犯だろ!!

私だけ顔赤くして恥ずかしいじゃない!!!

しかも、妹の華乃なんて「莉麻姉ーっ!!英里姉が出水先輩に抱きついてるー!!」って・・・。

せめて逆にしてって思ったよ、うん。

姉たちからはからかわれるし、出水はなんかニヤニヤしてるし、散々だった。

で。

そんな昨日の二の舞を演じない為に朝から出かけている訳です。

こんな寒いのに。

やっぱ明日本部に復帰したら一発殴っとこうかな。

なんて考えながら歩いていたら後ろから襟首を引っ張られた。

『ぅえ?!』

「お前・・・危ねぇだろうが!!」

私の襟首を引っ張ったのは、最近本部でよく絡む(私が)荒船先輩だ。

『荒船先輩!』

「よう。」

本部で暇な時によくランク戦をする攻撃手は米屋に次いで荒船先輩である。

何故なら私が無駄に絡むから。

最初はちょっと怖いなって思ってたけど話してみると全然そんなことなくて、口は悪いけど優しいとこもあるし、やり方は鬼畜だけど稽古にも付き合ってくれる。

「おい、今失礼なこと考えたろ。」

『え?!!いや、ちゃんと褒めてました!!・・・よね?』

「疑問系にすんな。」

やばーい。不機嫌オーラの先輩だー。

話題を変えよう。

『ところで先輩!!どこで襟首を引っ張るなんて挨拶知ったんですか??』

「あん?」

『ごめんなさい。』

ダメだ。

不機嫌オーラ強くなったよ。

当たり前だけど。

何故ケンカ売った、私。


はあ、と溜め息が一つ聞こえた。

あ、さっきの私みたい。

「お前さ、」

『はい?』

「前見て歩けっての。」

前・・・。

『赤?!』

「そうだよ、危ねぇな。」

『あははー、ちょっと考え事してまして。』

なんてテンプレっぽい台詞を吐いてみる。

すると、似合わない、と笑われた。

悪かったな、似合わなくて。

いつの間にか青になっていた信号。

気づけば隣に並んで歩いていた。

『先輩どこ行くんですか??』

「ん?俺はこれ返しに行くんだよ。」

そう言って見せてきたのは数枚のDVD。

そういえば荒船先輩は映画通だって出水が言ってたなあ。

『おお!!偶然ですね!私もなんか借りようかなって思ってたんです!』

「マジか。」

『なんかオススメありますか?』

「青春学園ストーリーなんて見ないぜ?俺は。」

『せっ・・・!私だって見ませんよーだ。』

そう言うと先輩は笑っていた。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ