世界の引鉄〜World Trigger〜
□そして振り返った時
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満月が綺麗な夜。
雲ひとつない冷やかな空に。
ただ一つの歌声が響いた。
「ある日」を歌った歌だった。
けれど、その歌は誰もが“視た”歌だった。
その日は、始まりと終わりが重なった、非日常的な日常だった。
〜そして振り返った時〜
世界にはいろんなことがある。
そりゃもう数えきれないくらいにね。
で。
知らないこともたくさんある。
私が知っている事なんて、世界単位で見れば雀の涙。
そんなことは分かってる。
分かってるよ?
でもさぁ・・・
『生放送だなんて・・・聞いてないーーー!!!』
こんにちは。青い空と太陽さん。
来年やっと華のJKになる万年ギリギリ遅刻セーフの現在中学3年生吉河英里は今、人生最大の壁に直面しております。
朝、准から電話があった。
「テレビに出てもらいたいから来てほしい」
と。
ボーダー本部への道のりで迷子・・・長い休憩を挟んだけれど、そこをたまたま通りかかった風間さんに助けて・・・一緒に来た。
ここまでは何の問題も・・・ない。
うん、なかった。
・・・ことにしよう。
で、ボーダー内で撮影が行われるらしいんだけど・・・
いつ放送されるの?という私の問いに対して、生放送ですよ。と答えた充くん。
へー、そうなんだー。
・・・。
ばっかじゃないの?
そして、先程のセリフへと続くのです。
「先輩、知らなかったんスか?」
『知らないよ!!』
「・・・嵐山先輩。」
『・・・っ准!!』
「ん?どうしたんだ、英里?」
『なんで言ってくれなかったの?!!』
「え?なにを?」
『だからっ!なんで生放送だって、教えてくれなかったの?!』
「え?あー、えーと・・・。忘れてた。」
ごめん、と謝る准。
心なしか頭についてる羽根(?)までシュンとなっている。
その姿が可愛くて、許しそうになったのは秘密の方向で。
『忘れてたってぇ・・・・もう!!』
「大丈夫だ!英里はすごく可愛いぞ!!俺の妹みたいだ!」
ってそれ、さりげなく自慢してるよね。
『いや、そうじゃなくて・・・』
「そうですよ!!英里先輩はお綺麗ですし、可愛いですし、それにカッコいいです!!」
『え、ええと・・・藍ちゃん?』
「たしかに、そうですね。佐鳥みたく準備しなくったって先輩は大丈夫ですよ。」
「ちょっ、ヒドイ!!」
・・・何を準備してるんだろう佐鳥くん。
『はぁ、もう・・・いいよ。取敢えず、なんか適当にフォローしてね。』
「任せとけ!!」
『・・・天然は怖いので、藍ちゃん充くんよろしく。』
「分かりました。」
「はい!私も出来る限り協力させていただきます!!」
「ちょっ、英里先輩?!佐鳥は?!」
『え?ああ、うん。・・・よろしく?』
「なんで疑問形?!」
まぁ、なんとかなるよね。
開き直りも肝心だよね!!
っていうか、そんなに構えなくても准みたいなイケメンがいるならそんなに私の方に振られないんじゃないかな?
そう考えると少し気持ちが軽くなった。
でも。
現実はそう甘くは無かった。