世界の引鉄〜World Trigger〜
□怖くて逃げて
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翌朝、いつもより遅い時間に起きる。
なんたって今日から「自宅学習期間」ですから。
ぶっちゃけ休み。
今家にいるのは私と姉だけ。
妹の華乃は友達と遊びに行ってるらしい。
なぜ平日に姉がいるかというと、高3だから。
高3は「受験対策」ということで2学期後半から授業がなく、学校に行かなくていいのだ。
必要な日以外は。
私がテストで酷い点数を取らない理由は姉にある。
頭がよくてゲームも上手い、なんていう姉に少なからず憧れていたから。
数学なんて姉の得意教科だから、ある時はモーレツなスパルタ指導により学年トップを叩きだしたことも。
そのおかげで今でも数学、英語はトップ争いの仲間入り。
ついでに総合は上から数えた10%の中には入っている。
さて、今日はどうしようか。
もしかしたら准たちから連絡があるかもしれない。
そう思い携帯を見ると数件の新着メールがあった。
その中に知らないメアドを見つける。
迷惑メールかとも思ったが、どうやら違うらしい。
内容は・・・
「もう一回、勝負しろ。」
・・・やっぱり迷惑メールだった。
こんなメール送ってくるのは一人しかいない。
太刀川さんだ。
なんで私のメアド知ってんの?!
出水?出水か?!
あいつ〜〜!
はぁ、とため息をつく。
思い切って電話してやろうかと思ったら、突然携帯の着信音が鳴り響きビクッとする。
太刀川さんだったら着信拒否しよう。
そう心に決め込み、画面を見るとそこには我らが隊長の名前があった。
『うわぁ。そ、そういえば准は私の隊長だった。』
まさか、あの嵐山准の携帯から私の携帯に電話がかかってくるなんて夢にも思わなかった。
ああ、私なにしてんだろ。
そう思いながら電話に出る。
『もしもーし?』
「お、英里?やっとでたな。」
『やっと?ああー、私起きるの遅いから。』
「ネイバーが来たらどうするんだ?」
『その時は、私じゃなくて太刀川さんに言って。あの人戦うの好きでしょ?』
私がそう言うと、電話の向こうから苦笑いが聞こえた。
『で。どうしたの?』
普通にタメで話してる私の適応力を褒めて欲しい。
「ああ、今日のボーダー特集の番組に俺たちが出るんだ。」
『そっか。大変だね。がんばって。』
私はもう少ししてからテレビに出ることになっている。
半端なく目立ってしまった私は、仕方なくテレビに出ることを承諾した。
テレビに出るのは嫌だけど、変な噂が立つのはもっと嫌だ。
一般の人も「ボーダー」という言葉に納得するはず。
そう、仕方ないんだ。
そんな私の憂鬱を他所に、バツが悪そうな准の声が携帯から聞こえた。
「いや、それがな・・・」
なんだろう?
何か悪いことでもあるのかな?
テレビで見るのは殆ど嵐山隊。
いつも通りにすればいいじゃないか、と私が言うと、自分たちはいいんだ、との答え。
じゃあなんなんだ。
「実は・・・その番組に英里も出てもらうことになったんだ。」
は?
『え。な、なんで・・・。そんないきなり?!!』
准はこっちが困るくらいシュンとした声でこう説明した。
「それが、『あの美少女はボーダー?!』事件のことで英里を知った人達が、一般人だっていい始めたんだ。」
『その事件の呼び方止めて下さい。』
なんできっちり引きずってんだお前。
って言うか、なんで一般人だって断定されてんだろ?
「英里、ボーダーじゃない、とか学校で言わなかったか?」
『あ。ああ、言った。光の速さで否定した。』
「だからだろうな。本人がそう言ってたってコメントが載っちゃって・・・」
『あー・・・。なんか、スイマセン・・・。』
「いや、いいんだ。その時は本当のことだったしな。・・・取敢えず、今から本部に来てくれるか?」
『わかった。すぐ行く。』
そう言って電話を切った。
正直、撮影の事は前もって知りたかったのだが仕方がない。
なんたって自分が撒いた種だ。
すぐに着替えて家を出る。
去り際に姉が「録画しとくからー」と言ったのは聞こえなかったことにしよう。
というか、なんで嵐山隊って知ってんだ。
ボーダーに入ったと言ったけど、A級のしかも嵐山隊だなんて言ってない。
・・・ああ、そうか。
准と迅さんはお姉ちゃんの後輩だった。
口止めし忘れたことを後悔しながらボーダー本部へと急いだ。