世界の引鉄〜World Trigger〜

□人と人との闇だった
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例えば、戦乱の時代を生きる武士だったなら。

主の為に、誰かの為に戦うことは本望だったのかもしれない。

例えば、戦争の真っ只中を生きる兵士だったなら。

祖国の為に、華々しく我が命を散らすことは誇りだったのかもしれない。


・・・でもね。

それとこれとは違うと思うんだ。

っていうか、全然違う。

誰が好き好んでボーダーのエリート、A級・・・しかも広報担当だなんて目立つような隊に入隊するんだ!!

『えーと、本日より新しく嵐山隊に入隊(仮)することになりました。吉河英里です。よろしく。』

なんか、知ってる顔がいっぱいいる。

「え。ええ?!吉河先輩?!なんで?!どうしたの?!!」

ちょーテンパってるのは出水と仲がいい・・・ように見える佐鳥くん。

「英里先輩と一緒に仕事ができるなんて・・・!!」

と、なんかすごいキラキラした眼差しで見てくるのが小学校で妹と同じクラスだった藍ちゃん。

「うるさくてすみません。よろしくお願いします。」

なんて、礼儀正しいのが同じ委員会の充くん。

なんで佐鳥くんだけ苗字呼びかって?

賢くんっていいにくいから。

とにかく、嵐山隊の人たちがみんな知ってる人とは思わなかった。

いや、知ってたけど。

准だけ面識なかったから、忘れてた。

「なんで?先輩どうしたの?!っていうか、いつボーダーに入ったの?!!」

『いつって・・・ついさっき。』

「ええーー?!」

「賢、落ち着け。」

「佐鳥先輩、うるさいです。」

藍ちゃん、はっきり言うな。

その通りだけど。

あ、ショボーンってなった。

「えっとまぁ、経緯は後で説明するんだが・・・」

准がそこまで言った時、バーンと音を立ててドアが開いた。

なんだ?と思い、そちらを見やると背の高い男の人が立っていた。

・・・誰?

「「「「太刀川さん!!」」」」

嵐山隊が口を揃えてそう言った。

『え。・・・誰?』

その人はツカツカと私の前までくると、

「吉河英里ってのはお前だよな?闘おう。」

と、言った。

なんだこいつ。キチガイか?

私が何も言わずにそんな顔をしていると、准が私とその人の間に立ってこう言った。

「なに言ってるんですか、太刀川さん!英里は今日入ったばっかりなんですよ?!」

太刀川・・・。

聞いたことあるような・・・。

コッソリ藍ちゃんに聞いてみると、

「A級1位の隊の隊長で、アタッカー1位の人ですよ。」

と、教えてくれた。

うわぁ、なんというハイスペック野郎だ・・・!!

なんて、考えてる間にも話はどんどん進んでいく。

当事者をおいて話を進めちゃう感じですね、わかります。

「まだ初日なんだから難しい話はしなくてもいいだろ?」

「まだ初日なんですから模擬戦は早いかと思います。」

と。

太刀川という人は、忍田さんに私のことを聞いたらしい。

それで飛んで来たとか。

迷惑な人だな。

このままでも准に迷惑かかるから、私は勝負を受けることにした。

『あのー。いいですよ?模擬戦?
やっても。』

「お。話のわかる奴だな。」

准には止められたけど、「いいよ、准も見ててよ。」と言うと渋々引き下がった。

ああ、懐かしいなー。

と思い、弧月を手に取ると・・・

『?!!』

びっくり。

すごく、重い。

『重っ!!』

「使ったことあるんじゃないのか?」

そう言われても、私が使ってたのはもっと軽かった。

そういうと、訓練室の外側から声がかかった。

忍田さんの声だ。

《昔のものとは違うからな。弧月も改良を重ねたんだ。》

なるほど。

その結果重くなったってことか。

私がトレーニングサボってるってのもあるかもしれないが。

《英里はスコーピオンを使うといい。》

そう言われて、スコーピオンを出してみる。

弧月とは対照的に重さを感じないほど軽かった。

少しの間、トリガーの使い方を教わった。

根本的なとこは同じだけど、技とか武器とか、結構変わってて驚いた。

もう、お父さんたちがいた頃のボーダーじゃないんだよなー。

そう思うと少しだけ寂しかった。

「もういいか?」

対戦相手が待ち切れないという感じで尋ねてきたので、お待たせしてすみません、とだけ返した。

さぁ、久振りの対戦だ。

アレもまだ出来るかな?

出来ないとヤバイな。

この人強そうだしってか、強いんだよね。

ああ、早く試したい。

それと同時にトリガーを起動する。

向こうも起動した。

あれ?

なんか見たことあるような?

開始の合図と同時に私は地面を思いっきり蹴った。
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