世界の引鉄〜World Trigger〜
□その隙間に見えたのは
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言えない。
「うわぁ、本物の嵐山准だ!!」
「え、うそ?!あのボーダーの?!!」
「出水先輩もいるよ!!」
言えるわけがない。
「あれ・・・一緒に居るのって、吉河先輩?」
「わー、やっぱボーダーだったんだあ。流石だな!!」
「すっごい絵になるよね!!美男美女って感じ!!」
「うそ?!英里ちゃんってボーダーだったの?!私、そんな人と友達だなんて、感動!!」
実はボーダーじゃないんです、なんて。
言えるわけがないんだ。
・
・
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左に出水、右に嵐山さんというなんとも鉄壁な状態で道を歩く。
やっとのことであの人だかりを抜けた私たちは今、ボーダーの本部に向かっている。
どうやって抜け出したかって?
そりゃもう・・・
『・・・一目散に走り出しましたよ、ええ。』
「大丈夫か、英里?」
『なんとか、平気です・・・。』
「英里は短距離めっちゃ速いけど持久力ねえしなぁー。」
『黙れ、黒染めすんぞ。』
「こえ。」
なんせ持久力のない私。
なんとか学校という壁は越えたが、道行く人が最低二度見する。
ボーダーの顔恐るべし。
更に、左側のやつもルックスだけは良いイケメンと来た。
私ここに居ていいのか。
「二人で先に行って下さい。」といいたいけれど、迎えに来てもらっている事実上口に出すのは憚られる。
って言うか、一人で本部に行くとか無理。
途中で逃げ出す自信がある。
『・・・ってか、なんで嵐山さんが迎えに来てくれたんですか?』
「ん?ああ、ホントは迅と来ようと思ったんだがな、」
『?』
「うーん、色々あるんだってさ。」
『ふーん、迅さんがねぇ。』
何故か頭にあのおでこにグラサンの半目の笑みが浮かんで、慌てて消す。
そんな私を知ってか知らずか、嵐山さんが口を開いた。
「そうだ、英里。」
『はい?』
「俺の事、准って呼んでくれていいぞ!!」
『はい?!!』
うわぁ、何だろう!!
天然って怖いね!!
『いやいや、一応年上ですし。』
「でも、アラシヤマサンって呼びにくいだろ?」
『ええと、まぁ・・・。』
まぁ、ぶっちゃけると・・・呼びにくい。
色々と噛みそう。
凄く略したくなる。
そして、あんまりにも爽やかな笑顔で言うから・・・
『えっと・・・じゃあ、准・・・で。』
押し負けした。
「ああ!!敬語もなくていいぞ!!」
『え?ああ、うん。』
なんか、もう・・・なんでもいいや←
「うわぁ、嵐山さんずりぃ!!」
『じゃあ、出水も准って呼べば?』
「良いぞ!!」
「え。い、いや、遠慮しとくっす。」
そこは引くんだ。
偉いね、出水。
「なぁ、英里。嵐山さんが“准”なら俺の事も名前で呼んでよ。」
『え。無理。』
「なんで〜?」
『だって・・・出水は名前の方が長いじゃん。』
“出水”と“公平”だったら出水の方が呼びやすい。
私がそう言うと「呼びやすさ重視かよ・・・。」と落胆の声。
何を期待してたんだお前は。
すると今度は・・・
「三輪だって名前のが長いだろ?なんであいつは名前呼びなんだよ!」
と。
なんで怒ってんのこいつ。
嵐や・・・准は相変わらずの爽やかな笑み。
うん、すごいや。
『秀次は・・・、・・・いいの。』
「うわぁ、ずりぃ。幼馴染ステータスずりぃ。」
『うるさいうるさい。いいじゃん、出水だって名字が名前みたくて可愛いよ?』
「“イズミ”って名前の子いそうだもんな!」
「嬉しくないッス。」
本部への道は長い。