A・A小説

□不思議なやつ
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「貴ちゃん!!!」


悲鳴・・・に近かった。
その声の主は・・・、超特急でこちらに向かって走ってくる少女。
 
光っている・・・・

僕は彼女を見るたびに思う。彼女は、光っている。
萩本恵菜。 ぼくが恋している少女だ。

「貴ちゃん!!なにしてんの!!!?」
「は、萩本・・・」

一瞬。ほんの一瞬。萩本恵菜、通称メグがぼくを見た。
いや、見たというか         睨まれた。

「瀬田君」
「はい」
「貴ちゃんから、離れてくれる?」
「はい。 ほら、秋本。離れろ」
「嫌やぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!歩と離れたら、おれは死んでまう!」
「貴ちゃん!!」

秋本がぼくの腕を掴んでいる。ぼくはそれから離れるように、
自分の体を秋本と反対方向に引っ張る。
メグは、秋本の腕を強烈な力で引っ張っている。

「なんや、修羅場やなぁ」
「そうやね」

優しい声が聞こえた。
篠原だ。「そうやね」って言ったのが、篠原だ。

「瀬田、大丈夫か」

蓮田、ありがとう。心配してくれてるのか。
でも、お前さりげに篠原と登校してきて、おれのこと見ないで言ってるだろ。

「なんやの。貴ちゃん、いっつも瀬田君、瀬田君て」
「仕方ないやないの。秋本は、瀬田君にぞっこんなんやから」
「京美!!」

メグの怒声が響いた。
そのとき、ちょうど

「ああああ!!!!あゆむ〜〜〜」

やっと秋本がぼくから離れた。
涼しい風が、体を貫いた。

「あちゃ、もう終わってしもうたの。もったいない」
「もったいなくない。これで、よかったんじゃないか」
「なんやて!!?歩は、おれと離れて、う、嬉しいんか!!!??」
「ああ。もう、天にも昇る気分だ」
「あゆむ〜は、冷たいなぁ」
「伸ばすな」

ふと、秋本の隣から視線を感じた。
メグだった。ぼくを、ぼくのことをすごい目つきで見ている。
怒っていても、綺麗だった。

って、なにを考えているんだ、ぼくは!!
メグは、今ぼくに怒っているんだぞ!?

メグが、どうして怒っているのか。
それは、メグが秋本に恋をしているからだ。

恋をしているといえば、高原は森口に恋をしている。
蓮田は、篠原に恋をしている。
メグは秋本だし、秋本は・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

『おれは、歩のこと好きやで。マジで好きやで』

ぼくはかぶりを振る。
なんで、あいつはこんなこと、普通に言えるんだろう。
おかしい。秋本貴史という人間は、おかしい。





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