A・A小説
□君のすべてが愛しくて※
2ページ/4ページ
―ああ、そうか。そうすれば…―
「っ、は…っ、 ?」
紫苑がやっと、ネズミの異変に気が付いた。
ネズミが微笑んでいたからだ。
「ネズミ…?っ、どうした、んだ」
「ねぇ、紫苑」
めずらしく、ネズミの口から甘ったるい声が出た。
ネズミは、紫苑の顔に手を伸ばし、頬を撫でそのまま下に指を下ろし、
顎に手をかけた。
その力は、いつも以上に強く、紫苑を不安にさせた。
「あ…、痛いよ、ネズミ」
「紫苑。あんたは、おれのこと好きか?」
なにをそんなあたりまえのことを…と紫苑は思いながら、
平然と答えた。
「好きじゃなかったら、こんなことしてないよ」
「……………そうだな」
そう言ったネズミの顔は、いつもの美しい顔とは、違っていた。
いや、美しくはある。
だが、その美しさは冷たく背筋を凍らせるものだった。
クスクスクスクス……
ネズミが笑っている。
前髪で、目が見えない。ネズミの、綺麗な目が見えない。
ネズミは紫苑の中からゆっくり出て、いきなり立ち上がった。
キッチンにいくと、なにかを持ってまた紫苑の目の前に座った。
ネズミが持っていたもの。それは、
ナイフだった。
→