おお振り小説

□きみの声
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いつだって、心に響くよ。

きみの声は。

どこにいたって、聞こえる。











      きみの声









「あっぢ〜。今日の練習も疲れた〜」

なんて、田島が気のぬけた声を出す。
時間は夕方。真夏の中の練習が終わり、田島と三橋と泉は並んで歩く。

「きょ、今日は、あつ…かった、ね」

「そうだなー、最近ずっとあちーな!」

はぁ、と泉はため息をもらす。
そう何度も『暑い』と言われると、
もっと暑くなる。 そう、感じる。

「泉?ため息なんかして、どうしたんだよ?」

お前らのせいだよ!! なんて、言えない。

「べつに?疲れただけ」

そっけなく返す。
俺がこんなに疲れているのは、こいつら
だけのせいじゃない。
アイツだ。アイツのせいだ。


       浜田。

アイツの姿を最近見ない。
連絡もよこさない。
ついこの間まで、一日に何回も連絡してきてわ、『泉〜、会いたいよ〜!』なんて言っていたくせに。
毎日部活があって忙しいから、会えねぇよ、
と言ったのは俺だけど。
 
色々考えながら歩いていたら、
田島と三橋は手を振って帰っていった。

まぁ、なんというか。
浜田に会えなくて悲しいんじゃなくて。
毎日の日課(?)みたいだったことが、
突然なくなるというのは、なんとなく。
寂しいんだ。

(ちっくしょ、浜田。今度会ったら、覚えてろよ)


違うな。浜田に会えなくてムカついてるんだ。なんか、腹ん中がイライラしている。
はやく、連絡よこせ。
はやく、声きかせろ。
はやく、会いに来い。
はやく―――――





            会いたい。















自分の部屋で浜田は、ただじっと
携帯の液晶画面を睨んでいた。

(ど、どうしよう。泉に連絡したい。
でも、泉忙しいし…怒られる、かな)

液晶画面には泉の名前。
泉に会いたい。会いたい。会いたい!!!




    『会いたい』


「?」
なにか、声が聞こえた。
いや、なにかじゃない。これは……

泉の声だ。

俺の、世界で一番大切なあの子が、
あの素直じゃないあの子が、
俺を呼んでる。
俺を求めている。
 
  
    『会いたい』

ん。わかってるよ、泉。
聞こえてるよ。君の声が。
今、君のもとへ行くから。

「…泉」

そう言って笑った浜田は、すぐさま
家を出て行った。




キコエタヨ。『アイタイ』ッテ。オレヲ、
ヨンダデショウ?







あとがき

なんか、訳分からなくなりました。
「すごい浜田」が書きたかったんです。

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