2周年記念小説

□早く言えよ
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銀時に会いに万事屋に来たが、生憎家主は留守だった。

仕事だって話も聞いてないし、まぁすぐに帰ってくるだろうと、いつものように勝手に部屋に上がる。

ソファーに座っているのもなんだか退屈で、万年床でも干してやろう、と布団を持ち上げたときだった。

カタカタッという音がして、床を見る。



「…これ、エロビじゃねェか…?」



そこには数本のDVDケース。

よく見ると、表紙に写っているのは女で、かなり際どい格好をしているものまであった。

俺は布団を床に投げつけ、そのDVDを手に取る。

ナース、教師、メイド、SM…!

そりゃあ、あいつも男だし、元々女好きだし、エロビ持ってんのは不思議じゃない。

でも、俺という恋人が居て、しかも俺は結構頻繁に万事屋来ているのに。

それに、身体だって重ねる回数は、その、多かったはずだ。



「ぐずっ…」



悔しくて涙が出てくる。

女々しいのは分かっているが、どうしようもない。

俺だけが今の状況に満足してたのか、とか、俺だけじゃ満足出来ないのか、とか。



「う、ぅ…っく」



俺は銀時と居れればそれで満足だった。

勿論身体を重ねるのも、好きだ。

あいつはいつも優しくて、甘え下手な俺でさえ甘えられる奴だった。

…ぐるぐると考えている内に、悲しみは苛立ちへと変わっていく。

元来気の短い俺だ、心はすぐに怒りでいっぱいになる。



「ムカつく!死ねよ!」



このDVDを捨てるようなことはしない。

ただ、あいつがこれを自分で捨てるまで絶対に身体は重ねない。

怒りにまかせてDVDを元の場所に置いた時、寝室の襖が開けられた。



「あれ、十四郎?来てたんだー…って、あ」



呑気な声が聞こえ、そして俺が見つけた物の察しがついたんだろう。

銀時の声には、見つかってしまったか、というニュアンスが含まれていた。



「知らねェ!帰る!」

「ちょ、ちょ、待て!」

「うるせェ馬鹿死ね!」



本人を目の前にしたら、怒りがどんどん込み上げてくる。

暫く顔も見たくない!

そんな気持ちで怒鳴りながら玄関を目指すと、銀時に腕を掴まれた。



「離せ!」

「離さないっつの!良いか、十四郎、よく聞け」

「知らねェっ」



両肩を掴まれるが、俺は絶対に顔を合わせまいと顔を逸らせる。

銀時に何回か肩を揺さぶられ、ギッと銀時を睨む、と。



「コスプレしてみる気ないか」



目が合った瞬間に銀時が放った言葉を、俺は理解することが出来なかった。



「…は?」

「だから、コスプレ。…実はさぁ、最近コスプレエッチに興味があって?でも十四郎そういうの嫌いそうだからエロビ見て十四郎に変換してたんだけどー…やっぱ十四郎じゃなきゃ萌えないって言うか…いや、普通にヤるのも好きだよ?」



思わずポカンと口を開け首を傾げた俺に、銀時は渋々と言った表情で話し始める。

俺は銀時の言葉を聞きながら、さっき見つけたDVDの表紙を思い出した。

ナース、教師、メイド…確かに、コスプレに興味があると言われたら納得するようなラインナップだ。



「…え、SMはコスプレじゃねェぞ」

「あ、うん、俺Sだから興味あって。大丈夫そうなとこまで、十四郎に試してみたいなーと」

「…早く言え馬鹿」

「え、あ、すみません」



銀時の説明は、信じてやっても良いと思わせるものだった。

…要は俺じゃなきゃダメってこと、だろ?

俺が何を言うのかソワソワして待つ銀時を睨む。

怒られると思ったのか、眉を下げてしゅんとした銀時の額にキスをすると、銀時は驚いたようだった。



「…で、俺に何を着て欲しいんだ?」

「え!良いの!?」



俺の言葉に、銀時は見えないしっぽをブンブン振る。



「…お前がエロビ見るよりマシだ」

「十四郎が着てくれるなら見ない!」



ぎゅうっと抱きつかれて、俺はさっきまで一体何をイラついていたのか忘れてしまった。

それほど、銀時は嬉しそうで。

…俺もそんな銀時を見て嬉しくなる。

こんなに喜んでくれるなら、どんな服でも着てやろう。

実際見るに耐えないものでも、きっと銀時は似合うと言って喜んでくれるだろうから。



「あと…痛ェのは嫌だぞ?」



俺も大概甘くなったもんだ。

何が鬼の副長だ。

まぁ、この甘さは銀時限定、たった一人に向くものだから…良いか。

嬉しそうに目を細めて頷く銀時の額に、俺はもう一度キスをした。





〜〜〜〜〜

前にも似たようなの書いてたので、同じにならないように必死でした…。

マユ様のみお持ち帰り可です。
リクエストありがとうございました!





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