2周年記念小説

□ブラウン管越しの君
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「十四郎、膝貸して」

「ほら」

「ありがと」



ソファーに座ってテレビを見ていたら、銀時が甘えるようにすり寄ってきた。

俺がポンポンと膝を叩くと、嬉しそうに頭を乗せて横になる。



「明日は何時からだ?」

「明日〜…9時にヅラが迎えに来るって言ってた」

「じゃあ俺が家出るときに起こすか」

「うん、お願いします」



ふわふわな天パを撫でてやると、銀時は嬉しそうに笑った。

その笑顔は作りものじゃない。

そんな顔をさせているのが自分だと思うと、胸がいっぱいになる程嬉しくなる。



「ちゃんと寝た方が良いんじゃねェか?」

「んーやだ、十四郎の膝枕が良い」

「…ったく、仕方ねェな」



撫でられるのが気持ち良いのか、銀時は瞼を閉じた。

仕方ないと言いながらも、俺も銀時の髪を撫でる手を止めない。

ふと銀時からテレビに視線を移す。

ブラウン管には、見慣れた銀髪が映し出されていた。



『本当はお前のこと…』

『そんな…』

『俺と付き合ってくれ』



そっと重なる唇。

その銀髪は美人な女優の肩を抱いて、女優に優しくキスをした。



「…」



なんだよ、今日キスシーンがあるなんて聞いてねェぞ…。

俺は俺の膝を枕にして気持ち良さそうに眠る銀時を恨めしい気持ちで見つめる。

銀時はデビューして二年目の俳優だ。

デビューしてから、ドラマや雑誌に引っ張りだこ。

今最も人気のある若手俳優と言って良いだろう。

そんな銀時とサラリーマン二年目の俺は幼稚園からの幼なじみで、付き合って六年目の恋人同士。

銀時は俺と付き合っていることを社長に伝えていて、俺たちはその社長の好意でこうして二人で一緒に住まわせてもらっている。

銀時の為にも別れた方が良いと思っていたのに、俺との関係を社長に話したと銀時が言ってきた時は本当に嬉しくて、そして惚れ直した。

これからもずっと銀時と居れるのかと思うと、毎日が楽しくて仕方がない。

それほど俺は、銀時が好きだ。

…だから銀時の出演するドラマは見てもキスシーンは見たくないわけで。



「…」



膝の上で眠る銀時を見つめる。

銀時を起こさないように上半身を屈めて…



ちゅ



銀時の頬にキスをした。

ドラマのキスは気持ちが入ってない。

初めて銀時がドラマでキスをすると知ったときに、銀時が俺に言った言葉。

信じているけど、それでも不安になる。

俳優なんだ、仕方ない、けど。



「…十四郎?」

「…起きてたのか」

「どうしたの?」



銀時の頭を撫でる手を再び動かし始めると、寝ているとばかり思っていた銀時に名前を呼ばれる。

どうしたの、とは、突然頬にキスしたことだろう。



「別に…」



理由を正直に話すのは何だか気恥ずかしくて、俺は言葉を濁した。

なのに銀時はゆっくりと起き上がり、俺の上に跨ってゆっくりと俺の体を押し倒す。

前髪をかき上げられ、優しく頭を撫でられた。

ちゅ、と額にキスされる。



「ドラマにヤキモチ?」

「…うるせェ」



隠しても、理由は銀時には筒抜けだ。

ずっと一緒に居た。

俺よりも俺のことを知っている銀時だ、当たり前か。

にこりと微笑む銀時に悪態をつくと、名前を呼ばれた。



「十四郎」

「…なんだよ」



好きとか、愛しいとか、そういう感情が全部混じった声。

とろけるような、甘い、そんな優しい声で俺の名を呼ぶ。



「大好き」



唇に柔らかくて暖かい感触。

銀時の声と、その与えられた感触だけでこんなに気持ちが落ち着いて、その上高ぶってしまうなんて。

どうしてくれるんだ、完璧に銀時のせいだぞ。

…そうは思うのに、頬が緩んでしまう。

非難したいのに、そんな言葉が出てこない。

その代わり俺の口から出た言葉は、なんとも幸せなものだった。



「…知ってるよ、バカ」





〜〜〜〜〜

人気者な銀時に、毎日もやもやしながらも、でも好きって十四郎が可愛いと思う^^

悠哉ちゃんのみお持ち帰り可です。
リクエストありがとうございました!




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