2周年記念小説

□午前三時半
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「ただいまー」



ガチャッと玄関の扉が開く音がして、リビングから急いで玄関に向かう。



「おかえり、金時」

「ただいま、十四郎」

「風呂、沸いてるよ」

「ん、ありがと」



時計は午前三時半を指していた。

いつもと変わらない。

俺の恋人、金時はホストをしている。

にこりと微笑んで俺の額にキスした金時は、そのまま風呂場へ直行した。

俺と金時は幼なじみで、高校の時から付き合い始めた。

金時が大学に行かずホストになると言い出したときは色々問題も起こったし大変だったが、今ではこうして一緒に住んで、毎日を穏やかに過ごしている。

俺は風呂場に入っていく金時の背中を見送って、金時の大好きな甘いココアを入れる為に台所へ向かった。



〜〜〜〜〜



「ふー、気持ち良かった」

「お疲れ様」

「ん、ただいま十四郎ぉー」

「んん、いい匂いになったな」



せっけんの良い匂いを纏った金時が、ソファーに座っていた俺の足元に座り、腰にぎゅうと抱きついてくる。

俺は目の前にあるフワフワな金髪に顔をうずめて、息を目一杯吸った。

シャンプーだって同じのを使ってる筈なのに、どうして金時が使うと甘い匂いになるんだろう。

甘いものが好きだと体臭まで甘くなるのか?
でも、良い匂いだ。

酒や煙草、女物の香水の匂いを纏って帰ってくるこいつに、風呂に入ってから抱き締めてくれと頼んだのは一緒に住み始めてすぐの頃。

ホストになると言うのは渋々納得したけど、匂いでも、嫉妬してしまうから。

それから金時は家に帰ってすぐに風呂に入ってくれるようになり、その後こうして俺を抱き締めてくれるようになった。



「今日も待っててくれてありがとう」

「良いよ、俺が待ちたくて待ってんだから」

「でも嬉しい。十四郎がおかえりって言ってくれると、疲れ吹き飛ぶもん」

「はいはい」

「本気なのに」



俺は金時が仕事のときはこうして毎回、こいつが帰ってくるのを寝ないで待っている。

おかえり、と迎えると、金時が嬉しそうに笑うから。

ただいま、とちゃんと帰って来てくれる金時に、俺が安心出来るから。



「分かってるよ。ほら、一緒に寝よう?俺明日午後からだからゆっくり寝れるぞ」



俺の腹にぐりぐり顔を擦り付けてくる金時の頭を撫でてやる。

金時は俺の言葉に目を輝かせ、嬉しそうに笑った。



「午後から?授業休めない?」

「…どうして?」



聞かなくても分かってるけど。

金時の言葉は、魔法みたいに俺を嬉しくさせる。

俺の前じゃホストの皮なんて被らないのを知っているから。

俺が首を傾げると、金時は少し眉を顰めた。

拗ねたこいつも、可愛くて好きだ。



「え、十四郎に送って欲しいっていうか、今から十四郎を存分に頂きたいって言うか…あぁ、もう」

「うわ、金時」



今まで腰の辺りにいた金時が、俺を押し倒してソファーに上がってくる。



「だめ、我慢出来ない」

「こらっ、もー…」



俺に関して余裕のないこいつは、もっと好きだ。

俺は出来るだけ呆れた声を出す。

それでも俺の首筋にキスをする金時に見えないのを良いことに、金時の背中に腕を回しながら笑った。





〜〜〜〜〜

お互いがお互いを必要としてるのが一番甘々かな…と思って^^

名無しさんのリクエストでしたので、お持ち帰り不可です。
リクエストありがとうございました!





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