2周年記念小説

□青い空、広い海
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最近、悲しくなったりイライラしたりすることが多くなった気がする。

いや「気がする」じゃないな、確実になっている。

原因は、来月産まれてくるお腹の子たち。

双子だそうだ。

男の俺が、天人の薬で愛する銀時との子供を妊娠したと知ったときは本当に嬉しかった。

銀時も喜んでくれたし、親しい人たちも喜んでくれた。

少しずつ大きくなる腹を、銀時は毎日愛おしそうに撫でた。

今も俺の腹に耳を当て、腹の中の二人に話し掛けながら撫でている。



「父さまだよー、早く会いたいな。早く出てきてー」



これを毎日毎日飽きることなく繰り返す。

銀時はきっと良い父親になる。

でも、俺は。

俺と銀時との子だ、絶対に可愛い。

それは断言出来る。

でも、二人が産まれてきて、銀時の一番が子供たちになってしまうんじゃないかって不安で不安で。

そんな馬鹿げたこと…って自分でも思うから、銀時には言えないし。

言えないから溜め込んで、悲しくなってイライラする。

子供たちに早く会いたいけど、会いたくない。

自分の中の矛盾に、混乱する。



「…まだ1ヶ月あるぞ」



出来るだけ何でもないように、銀時に言う。

銀時は顔を上げて、俺の顔を覗いた。

銀時が自分を見てくれただけで泣きそうになるなんて、かなり情緒不安定じゃないか。

じわり、と涙が浮かびそうになるのを必死でこらえる。

銀時は幸せそうに微笑んだ。



「もう、1ヶ月だよ。早く十四郎との愛の結晶に会いたい。俺たちの子供だから絶対可愛いもん。俺には血の繋がった家族が居た記憶がないからちゃんと育てられるか不安だけど、でも十四郎が居るから大丈夫。十四郎が居てくれたら、何でも出来る」



…あぁそうだ、銀時ってこういう奴だよな。

だから好きになったんだよな。

そう思ったら、さっきこらえた筈の涙が一気に浮かんで、零れた。



「十四郎、どうして泣くの」



銀時は俺が泣き出したことにあまり驚いていないようだ。

きっと俺が考えていたことに、薄々気付いていたんだろう。

銀時が親指で優しく涙を拭ってくれる。

全ての動作が暖かくて、涙はさらに溢れた。



「ぎ、とき…っ」

「うん」

「おれ、も、はや、く…っ、ふたり、に、あい、たい」

「うん」

「で、も、さ、そんとき、っ、ぎん、の、いちば、ん…おれ、かな…っ?」



親になると言うのに、自分のなんと情けないことか。

それでも銀時は、俺の言葉を聞いて笑ってくれる。



「当たり前だろ。十四郎が俺の一番だから、二人が産まれてくるんだよ」

「…う、んっ」

「十四郎の一番は、俺でしょ?」

「んっ!」

「それと一緒、お互いの一番はお互いだって、それはずっと変わらない」



銀時の言葉は、俺の不安を全てすくってくれた。

心が一気に軽くなる。

軽くなった心に、今度は銀時とお腹の子たちへの愛おしさがじわりと浮かんで、いっぱいになった。

俺が泣き笑いすると、銀時は苦笑して抱き締めてくれる。

悲しくなったりイライラしてしまうこともあるけど、俺を暖かく包み込んでくれる銀時なら、それを溶かしてくれるんだって分かったから。

俺は幸せな気分で、自分の大きな腹を撫でながら銀時の肩に顔をうずめた。



〜〜〜〜〜



その三週間後、予定日より一週間早く二人は産まれてきた。

先に産まれた方を空(くう)、後に産まれた方を海(かい)と名付けた。

空と海のように、二人がずっと繋がっていられますように。





〜〜〜〜〜

マタニティーブルーな十四郎^^
それを癒せるのはやっぱり銀さんだけなんです^^

名無しさんからのリクエストでしたので、お持ち帰り不可とさせて頂きます。
リクエストありがとうございました!





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