2周年記念小説
□ホンモノとニセモノ
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「気をつけてな?ちゃんと携帯を携帯しとけよ?」
「うん、分かってるよ。行ってきます」
心配そうに俺の持ち物を確認する十四郎をひと撫でして、俺は屯所を後にした。
〜〜〜〜〜
「坂田です。お呼びですか」
「待っていたよ。さぁ、早く入って」
襖越しに部屋の主に声を掛けると、嬉々とした声と共に襖が開けられた。
肩までの黒髪、身長は総悟くらい。
体は少し細めで、優しそうな目。
ここは真選組の上司である幕府のお偉いさんのお屋敷の一室。
お偉いさんの、一人息子の部屋。
「会いたかったよ、仕事、忙しいのかい?」
俺にすり寄ってきたこの人は俺のことを大層気に入っているようで、こうしてたまに、幕府のお偉いさん達の会食の前に俺をお屋敷へ呼び出す。
この人の父親は、お偉いさんの中でもかなり上位に居る人だ。
俺が断ったら真選組は簡単に潰される。
だから俺はお誘いを断らない。
真選組は俺にとって大切な場所だし、俺の大切な十四郎にとっても大事な場所だ。
そんな真選組を俺が少し我慢するだけで守れるんなら、それに越したことはないだろ?
幸い真選組の誰にもこのことはバレていないし。
「えぇ、最近攘夷浪士が集会を開いていると情報が入ったりして」
「そうか…少し、寂しいな」
「そんな顔なさらないで下さい。私たちの関係は二人の秘密ですから…それに会えない期間が長いほど、会えたときの感動は一塩だと思いませんか?」
自分で口にして、可笑しくなってくる。
よくもまぁこんな嘘がポンポン出てくるな、と。
サラリ、と黒い髪を撫でる。
俺の言葉に頬を染めるこの人は嫌いじゃない。
可愛いとも思う。
だけとそれ以上に愛しくて、可愛い人が俺には居る。
だから、この人に向ける言葉は全て嘘だ。
「…そうだね…秘密なのに、頻繁に会ったら秘密じゃなくなってしまう」
「そう言うことです。さぁ、お父様方との会食までの時間、今日は何を致しますか?」
することなんて決まってるけどね。
にこりと微笑むと、目の前の人は俺の首に腕を回す。
「隙間が無いほど、愛し合いたい」
「…私もです」
俺は黒い髪をかき上げて、意味のないキスをした。
〜〜〜〜〜
「ただいまー」
「お帰り、お疲れさま」
ぎゅう、と愛しい愛しい十四郎が抱きついてくる。
黒い髪をかき上げて、キスをした。
俺のキスが意味を持つのは、十四郎相手の時だけだ。
「…」
「…どうしたの?」
十四郎はぎゅうと俺を抱き締めたまま、じっと俺の顔を見つめる。
首を傾げると、十四郎はへにゃりと頬を緩めた。
「早く帰って来て安心した」
…あぁもう、どうしてこんなに可愛いの!
こんなに可愛くて愛おしい十四郎の為ならなんだって出来る。
確かに十四郎に隠し事をしている、と言うことには少し罪の意識を感じなくもないが、それでもこうして十四郎が幸せそうに笑ってくれるなら、その罪の意識でさえも俺にとって幸せだ。
「十四郎、ちゅうして」
「ったく、仕方ねェな…」
「いやいやいやいや、ここ玄関!屯所の玄関んン!!やるなら部屋でやって下さいよ!」
「ちっ…」
「何で舌打ち!?」
「十四郎、ジミーのお許しも出たことだし、部屋でヤろ?」
「…ん、だな」
「ちょ、変換おかしくね!?そのヤるじゃねぇよ!」
少し楽しそうな十四郎に引っ張られながら、自室を目指す。
早く十四郎と、隙間が無いほど愛し合いたい。
俺に愛を感じさせてくれるのは十四郎だけだから。
〜〜〜〜〜
ずっと書きたかった銀幕…!
また書く機会があれば銀さんをもっと悪くしたいです(笑)
りせは様のみお持ち帰り可です。
リクエストありがとうございました!