2周年記念小説
□広くて綺麗な世界
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「おい鴨、出掛けるぞ」
スパン、と私室の襖が開けられる。
そこに立っていたのは真選組の副長の一人で、僕のこ…恋人でもある銀時くんだった。
「は、え?銀時くん、急に」
「着流しに着替えろよ」
「仕事、は?」
僕の言葉を遮る銀時くんは、非番だからか着流しを着ている。
でも僕は非番ではなく通常勤務だ。
「鴨の分、午後から総悟に変わって貰った。デート一回で手を打つって」
「デート…」
沖田くんに変わって貰ったと言うことは、僕は午後から非番になると言うこと。
銀時くんがわざわざ掛け合ってまで僕を連れて行きたい所があるのかと思うと、凄く嬉しい。
…嬉しいけど、その条件がデート…
「良いから、着流しに着替えて。時間間に合わねェ」
「う、うん、分かったよ」
しゅんとする僕を、銀時くんは急かす。
あまりモタモタしていたら置いて行かれてしまいそうで、僕は銀時くんの言葉に頷いてから急いで着流しに着替えることにした。
〜〜〜〜〜
「うわぁ…!」
一面に広がる青と緑。
銀時くんに訳も分からず連れてこられたのは、屯所からそう遠くない牧場だった。
「良かった、間に合って」
「凄いね!銀時くん!見て、馬に羊にいっぱい…!」
目の前には、広大な草原を駆け回る馬や羊、牧場に来る人が触りやすいようにと小さな柵に入れられた兎たち。
動物が大好きな僕にとって、全てが魅力的に見える。
目の前の光景に興奮しながら銀時くんの裾を掴むと、銀時くんは困ったように笑った。
「うんうん、分かってる。それは後でな」
「?」
「牛の乳搾り体験。したいだろ?」
「っ、うん!」
受付時間、もうすぐで締め切りだから。
と、銀時くんはそう言って僕の手を引き歩き始める。
…時間がないって、このことだったのか…
銀時くんが牧場に連れてきてくれたことも、僕のために色々調べてくれたことも嬉しくて、僕は緩む頬をそのままに銀時くんについて行った。
〜〜〜〜〜
「どう、楽しかった?」
「凄く楽しかったよ…!ありがとう、銀時くん」
「そ、良かった」
牧場を隅から隅まで堪能して、今は屯所近くの甘味屋に居る。
人を斬る、という日常とは真逆の体験。
僕は今日全てのことを一緒に体験した銀時くんにも、どれほど今日が楽しかったかを伝えたかった。
銀時くんは僕が喋りたくて仕方ないのが分かるのか、僕が喋る度に微笑んで頷いてくれる。
「兎、飼いたいなぁ…凄く可愛かったよね。でも馬も格好良かったな…羊はチーズが作れるし…豚も可愛いよね。でも屯所で飼ったら食料にされちゃうな…」
「そうだな」
小さい頃誰にも相手にされなかった僕に、広くて綺麗な世界を教えてくれた銀時くん。
銀時くんと一緒に居ると全てが新しくて楽しくて、嬉しい。
今日だって僕を牧場に連れて行ってくれたのは、僕が以前動物が好きだということをポツリと漏らしたのを覚えていたからだろう。
銀時くんは、僕のことを一番に気にかけてくれる。
強引な所もあるけれど、とてもとても優しいのを、僕は知っている。
「銀時くん」
「ん?」
「…僕、魚も好きだよ」
「…分かった分かった、次の非番は水族館な」
「…へへ、うん!」
くしゃり、と僕の頭を撫でる銀時くんは、どこか嬉しそうな顔をしていた。
〜〜〜〜〜
銀鴨萌えるな…サブカプにしてしまいたいくらい…(笑)
名無しさんからのリクエストでしたので、お持ち帰りは禁止です。
リクエストありがとうございました!