2周年記念小説

□wake up
1ページ/1ページ


「なんでテメェが此処に居るっ」

「依頼に決まってんだろ!じゃなかったらこんなトコに赴かねェよ!」

「仕事の邪魔だ!」

「俺だって仕事だっつの!」



テロが起こった。

現場に着いてすぐ、攘夷浪士を検挙するべく刀を抜く。

殺さないように手加減しつつ攘夷浪士を斬りながら建物の奥へ奥へと進んで行くと、そこには見慣れた…見慣れきった銀髪が居た。

真剣相手にいつもの木刀で応戦し、体中傷だらけ。

また変な依頼受けやがって…と思いつつも、建物内で起こった爆破から逃れるように銀時と出口目指して駆け抜けている時だった。

爆破の影響で瓦礫が坂田の上に…



「っ!おい!」



それに気付いた瞬間体が勝手に動き、刀で坂田の上に落ちてきた瓦礫を振り払う。



「…サンキュ、やっぱ土方には安心して背中預けられんな」

「…馬鹿たれ」



ニッと笑う坂田に呆れつつ、坂田の言葉を心の中で反復した。

…嬉しくない訳が無い。

坂田は俺の憧れで…恋人なのだ。

そんなことを言われて、嬉しいと思ってしまうのは当たり前だろう。



坂田に手を引かれながら走り、あと少しで出口、という時だった。

俺たちが足を踏み入れたその部屋に、丁度俺たちとは違う廊下から逃げ出してきた攘夷浪士たちと出くわしたのだ。

俺と坂田は目配せをして、お互いに刀と木刀を構える。



全ての攘夷浪士を倒し、坂田がドサッと膝をついた。

腹を押さえている。

どうやら腹を斬られたらしい。



「痛ぇ…」

「おい、大丈夫か?」



俺は坂田の目の前で膝を付き、肩を貸してやろうと手を伸ばすとー



「土方…っ!」

「?」



ガンッと言う鈍い音がして、坂田がドサリと倒れた。



「さか、た?」



名前を呼んでも反応しない。

俺の顔に影が掛かる。



「覚悟、真選組副ち」



それがどんな顔をしていたのか、分からない。

もしかしたら仲間かもしれない、という考えもなかった。

俺はその影の主が何かを言い終わる前に、それの首元を斬る。



「…坂田、坂田?おい、坂田ァ!」



坂田の体を起こしゆさゆさと揺さぶってみても、坂田の目が開かれることはなかった。



〜〜〜〜〜



「…よお」

「土方さん、こんにちは」

「何しに来たネ、銀ちゃんまだ寝てるアル。ここに居ても無駄ヨ」

「…そうか」



病室のドアを開くと、眼鏡は笑顔で迎えてくれたがチャイナにはギロリと睨まれてしまう。



「まぁまぁ神楽ちゃん、折角お見舞いに来てくれたんだから、ね?僕らは少し外の空気吸ってこようよ。土方さん、お願いしても良いですか?」

「あぁ、分かった」



そう言って、眼鏡とチャイナは病室から出て行った。

チッと、チャイナに舌打ちされる。

鬼の副長と恐れられている俺だが、この場合怯んでしまうのも仕方ないことだろう。

俺と坂田は付き合っている。

それを誰に言ったこともない。

今の所、誰にもバレていないと思う。

だから本当は、俺が坂田の見舞いに来るなんて可笑しいのだ。

坂田が倒れた現場に俺も居たから、と言う名目で見舞いに来てみたが…。



昨日坂田が病院に搬送され、俺が病室で一人坂田の回復を待っていた時、病室のドアが荒々しく開かれ、そこにチャイナが立っていた。

チャイナは俺の目の前まで来ると、俺の胸ぐらを掴んでこう言った。



「何故お前が無事で銀ちゃんが倒れるネ!銀ちゃんは優しいからきっとお前を庇ったアル!そうに違いないネ!」



その場は眼鏡がチャイナを宥めてくれて収まり、俺は早々に病室を後にした。

本当はずっと坂田のそばに居て坂田が目覚めるのを待ちたかったが、坂田の家族同然のチャイナにそう言われてしまってはそれも出来ない。



俺は未だ眠っている坂田のベッドの隣に置いてある椅子に座り、掛け布団の中に手を入れて坂田の手を握る。



「なぁ、聞こえてるか?」

「…」

「チャイナの目、もっと厳しくなってんぞ。あれ俺たちのこと許してくれそうにねェんだけど」



昨日、屯所に帰ってからは涙が止まらなかった。

坂田が攘夷浪士に頭を殴られて倒れたのは、チャイナの言う通り俺を庇ったからだ。

もう全て倒したと思っていた攘夷浪士が、俺が気を抜いた瞬間、俺に攻撃しようとして…。

そいつに気付かなかった俺を坂田は庇ってくれた。



「早く起きろよ…俺だけじゃあの厳しい目に耐えらんねェんだ…」



いつも坂田は、俺を周りが気付かないように守ってくれた。



「お前が守ってくれたのは、正直嬉しいけどさ、辛い。やっぱ駄目だ、お前が居ないと、辛いよ」



声が詰まる。

俺はそんな坂田に何かしてやれてただろうか。

医者は、その内目を覚ますでしょうと言っていた。

けれど俺は、このまま坂田が目覚めなかったらどうしようと…そんな不安に包まれている。



「起きたら皆に言いたいんだ、お前とのこと。ベタベタは出来ねェけど、でも、今までよりはもっと普通にさ、出来ると思うし。もっと一緒にさ…出掛けたりとか…」



だから早く、目を覚ましてくれ。

こんな事件が起きてから気付くなんて、遅すぎると思うけれど。

もっとお前と恋人らしいことがしたい。

確かに二人きりのときは軽口を交わし、酒を飲み、体を重ね、俺たちにしては甘い時間を過ごせていた。

だけど、お前の目が覚めたら、もっと堂々としたいんだ。

こんなにも俺を思ってくれる恋人が俺には居るんだぞと、みんなに知ってほしい。

だから、早く…

俺はぴくりとも動かない坂田の手を、ぎゅっと握った。



〜〜〜〜〜



「よお」



病室のドアを開く。



「ニコマヨ!今日のお土産は?」

「饅頭だ」

「キャッホー!いただきまぁす!」



俺から紙袋を受け取ったチャイナは、嬉しそうに紙袋を振り回した。



「すみません土方さん」

「いや、気にすんな」

「僕たち待合室に居ますね」



眼鏡はチャイナを見て苦笑し、立ち上がって俺に椅子を勧める。

正直、こいつには坂田との関係がバレているんじゃないかと思う。

地味な奴ほど、空気に敏感だったりするからな。

ほら、うちの監察とか。

眼鏡とチャイナが病室を後にし、俺は椅子に腰掛ける。

そうして布団の中に手を入れて、坂田の手を握った。



「おい、まだ寝たりねェのか?お前が寝てる間に、ちょっとチャイナと仲良くなっちまったんだけど」



坂田が入院してから今日で一週間。

顔色は良くなってきたが、まだ目覚める気配はない。



「今日の土産は饅頭だぞ。お前の好きな。早く起きねェとチャイナが全部食っちまうぞ?良いのかよ」



俺なりに眼鏡やチャイナと仲良くなろうと考え、病院に来るとき必ず菓子を買ってくることにした。

二日目はクッキー、三日目はだんご、四日目はケーキ、五日目は和菓子、昨日はカステラ。

チャイナが食べ物に釣られやすいことは坂田から聞いていたが、まさか二日目のクッキーを渡した時点で



「お前実は良い奴アルな」



と言われるとは思わず、驚いた。

それからは毎日俺が何を持ってくるのか楽しみにしているようで、俺もだんだんチャイナに愛着が沸いてきた。

眼鏡も申し訳なさそうにするが、やはり菓子は好きらしい。

チャイナに奪われながらも、仲良く菓子を食べていた。

あの二人は毎日面会時間の始めから終わりまで病院に居る。

午前中は眼鏡の姉もここに居るらしい。

近藤さんのストーキングは大体午後からだから、近藤さんは病院に来たことはないみたいだが。



今まで、一週間会わないなんてザラだった。

だけど、俺はもうそろそろ限界を迎えそうだ。

起きている坂田に、好きだと言いたい。

起きている坂田に、好きだと言って欲しい。

柄じゃないが、坂田に思いっきり抱き付いて抱き締められて、坂田を感じたかった。



「早く起きろって…あんまりほったらかしてっと、浮気すんぞ」



そんな気はないけれど、いつまでも眠る坂田に拗ねたように言ってみる。

元はと言えば俺を庇ってこうなったのだから俺がどうこう言う資格はないが、でも、もう放っておかないで欲しい。



「良いのかよ、なぁ。浮気が本気になるかもしんねェんだぞ?お前より、好きになっちまうからな…」

「…う、ん…」

「うんって…え?」



聞こえるハズのない相槌が聞こえ、俺は椅子から立ち上がって坂田の顔を覗く。

前髪をかき上げながら頭を撫でると、坂田が眉をひそめた。



「う…ん…?」

「お、おい、坂田、分かるか!?」



名前を呼ぶ。

坂田はうぅ、と唸りながら、ゆっくりと目を開いた。



「…ひじ、かた…?」

「なっ、ナースコール!」



突然過ぎて涙なんて出てこない。

俺は急いでナースコールのボタンを押し、坂田にちょっと待ってろと言い残して、待合室に居る眼鏡とチャイナを呼びに向かった。



〜〜〜〜〜



「よお」



万事屋の戸を開ける。



「トシちゃん!お土産は?」

「今日はケーキだ。でも夕飯食ってからな。皆で食うぞ」

「ウン!」



神楽はケーキと言う単語を聞いて嬉しそうに笑った。



「土方さん、いつもありがとうございます」

「いや、良い。これ冷蔵庫に入れといてくれ」

「はい。じゃあ僕ら夕飯の買い物してきますね」

「あぁ、頼む」



新八にケーキの入った紙袋を渡す。

新八も嬉しそうに笑って、俺から紙袋を受け取った。

俺はそんな二人に微笑んでから、この家の主で俺の恋人が居るであろう部屋の襖を開ける。



「起きてるか」

「起きてるよ」

「…そうか」



銀時の近くまで行くと、お仕事お疲れ様、と言って抱き締められた。

そして、唇にキスされる。

だから俺も銀時を抱きしめ返して、俺からも銀時の唇にキスをした。



夕飯まではまだ時間がある。

子供たちが帰って来るまで、二人っきりで甘い時間を過ごそうじゃないか。





〜〜〜〜〜

なんか、すごく、真面目に書いた気がする〜…(気、だけです/笑)

阿莉朱様のみお持ち帰り可です。
リクエストありがとうございました!





[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ