2周年記念小説

□知らないキミ*
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15万打記念小説の後日。





「土方くん!先日は世話になったのぉ!」

「社長」



会社の廊下を歩いていると、突然後ろから声を掛けられた。

振り返るとそこには社長である坂本さんの姿。

…つーかこの人のこと会社で見るの久々だな…と思うくらい、坂本さんは世界中を飛び回っている。



「金時は土方くんと付きおうてからまん丸になって可愛さが増したき、感謝しちゅう」

「まん丸?」



あっはっは、と笑いながら肩を叩かれた。

まん丸って体型のことではないよな…と首を傾げると坂本さんはさらに笑う。



「土方くんと会う前は他人に興味がなくてな〜大変だったんじゃ」

「そうなんですか?…あ、でも他人に興味がなかったとは言ってたかも…」



たしか銀時は出会ってすぐの頃「人付き合いが苦手」とか「自分から人と接点を持とうと思ったことがない」とか言ってたっけ。



「そうなんじゃ、わしにしか懐かんで…でも今はみんなに優しく出来るようになってきたみたいぜよ」



俺は実際、銀時が人と接点を持たないようにしている所は見たことがない。

俺には出会った頃から優しいし、甘やかしてくれるし…。

見たことのない銀時に、物凄く興味が湧いた。



「社長、あの」

「ん?」

「銀時の昔の話、聞かせて下さい」



〜〜〜〜〜



「ただいま」

「おかえり、十四郎さん。お仕事お疲れ様」

「ん、ありがと」



合い鍵(と言っても今はもう俺ん家だけど)を使ってドアを開けると、銀時がリビングから玄関に出てきて俺を迎えてくれた。

ぎゅうっと抱きしめ合って、二人で笑う。

キスもしたいけど、それは手洗いうがいをしてからだ。



「実はな、今日社長と話してて遅くなったんだ」

「辰馬?」

「うん、社長は面白いな。話が途切れなくて」



上着を脱ぎながら、今日あったことを話す。帰りが遅くなることはメールで伝えていたけれど、何故かまでは言っていなかったから。

手洗いうがいをしてリビングの床に座っていた銀時に抱きつくと、銀時は俺を優しく抱きしめ返してくれた。

それに気を良くして、俺は話を続ける。



「それでな、…って、銀時?」

「…なに?」



口を開いたとき、違和感を感じて銀時の顔を覗いた。



「眉間にシワ寄ってる」



銀時が眉間にシワを寄せるなんて珍しい。

眉間に人差し指をあてると、銀時はふいと顔を逸らした。



「…何でもないよ」

「何で怒ってんだよ」

「怒ってない」

「…銀時」



むすっとした顔を逸らしたままの銀時の名を呼ぶ。

銀時はゆっくりと俺の方を向いて、大きくため息を吐いた。

そうして、俺の肩に顔をうずめる。



「…駄目だよ」

「何が?」

「十四郎さんは俺のだから、俺が居ないところで他の人とあんまり仲良くしちゃ、駄目」



小さく、拗ねたような声色。

…こいつ、ヤキモチ妬いてたのか。



「ぎ、んとき」

「んわ、十四郎さん?」



そう思えばむすっとした顔も大きなため息も愛しいばかりで、俺は銀時に勢いよく抱きついた。

銀時は驚きながらも俺を抱き止め、けれどもやはり俺の行動の意味が分かっていないらしい。



「可愛い…やっぱり、社長の言う通りだ」

「また」

「銀時は他人に興味がないって言ってた。独占欲を持つの、見たことないって」

「辰馬が?」



俺が社長の名前を出すと、銀時はまたむっとして俺の言葉を遮ろうとする。

そんな銀時の言葉を遮って、俺は銀時の額にキスをした。



「銀時が独占欲を持つのは土方くんだけじゃ、って社長が言ってた」



そう、仕事が終わってから社長に銀時の話を聞いたときに、社長は俺にそんな嬉しいことを言ってくれたのだ。

小さい頃から銀時を見てきたけど、土方くんのように銀時が自分から必死に繋がりを持とうとする相手は見たことが無い、と。



「…うん、今までヤキモチなんて妬いたことない。でも十四郎さんが他の人と仲良くするの、あんまり良いと思えない」

「それが独占欲だろ?」

「…うん、まぁ」



密かに眉を寄せて、でも少し情けない顔でそう言う銀時が愛おしくて仕方が無い。



「俺、嬉しい」

「?」



首を傾げる銀時の頭を優しく撫でて、耳にキスをした。



「お前が俺を好きって証拠だろ?…だから沢山、ヤキモチ妬いて」

「…あんまり妬きたくないなぁ」

「俺は妬いて欲しい」



耳にキスされるのがくすぐったいのか、少し機嫌の良くなった声で銀時が笑う。

それに構わず銀時の耳にキスすると、ぐい、と体を離された。



「…俺は世界で一番十四郎さんが好きで、大事だよ」

「…うん」



真面目な顔をしてそう言う銀時に、俺は頷く。

いつも…語弊ではなく本当にいつも銀時は俺を好きだと言ってくれる。

毎日のことでもそれに慣れることなんてなくて、言われる度に胸がときめいて。

何回、何百回言われても足りないとさえ思ってしまう。

銀時は俺をぎゅうと抱きしめて、肩に額をぐりぐり擦りつけて来た。



「だからあまり、ヤキモチ妬かせないで?胸が苦しくなるんだ…」

「…仕方ないな、努力するよ」

「もー、十四郎さんの意地悪」

「嫌い?」

「…大好き」



クスクスと笑って、唇にキスされる。

ちゅ、ちゅ、と啄ばむようなキスを繰り返しているとき、俺はとあることを思いだした。

今は幸せな気分だから、本気で責めようとは思っていないけど。



「ところで銀時、俺と会う前は社長に甘えっぱなしだったらしいな?」

「え?…えーと、違います」

「社長が言ってたぞ。土方くんが現れてから、金時がわしに甘えてくれんくなった〜、って」

「気のせいだよ、うん」



言ってたっていうか泣き付かれたっていうか、羨ましがられたんですけど、社長に。

わしも金時にまた甘えられたい〜って。

目が泳いでる銀時ににこりと微笑む。



「ふぅん?納得いかねェな…」

「十四郎さん、顔、怖い」

「俺が納得いくまで説明して貰おうか」

「えっ、ちょ、ま…!」

「待たねェ」



話し合えば分かるよ、とでも言いたげな銀時を床に押し倒した。

銀時の上に跨って、俺はぐい、と銀時に顔を寄せる。



「俺襲われる方じゃないじゃんっ」

「良いから良いから」

「んぐ」

「ん…ふ、ぅ…」



ぎゃあぎゃあ喚く銀時の唇を塞ぐ。

銀時の上に乗っかって、キスの主導権は俺が握っていて。

…ふふ、ちょっと気分が良い。

勿論いつもの、銀時にされるがままなのも好きだけど。

滅多にないシチュエーションに興奮しつつ、俺は銀時の口内を堪能した。

舌を絡めあって、銀時のと交じり合った唾液を飲み込む。

そんなキスに我慢出来なくなった俺は、銀時の服を脱がそうと一瞬唇を離した。



「んー…おいしょっと」

「うぉっ」



瞬間、ぐらりと視界が揺れて、次の瞬間には銀時の顔が目の前に。

今度は銀時が俺の上に跨っている。



「やっぱこっちの方がしっくりくるね」

「こら、俺はまだなっとく、うむっ」



そう言ってにこりと微笑む銀時を睨むと、今度は銀時に唇を塞がれた。

…やばい、気持ちぃ…。

自分から仕掛けるキスも十分気持ち良かったけど、やっぱり。

…やっぱり銀時がしてくれるキスは、その何倍も気持ち良い、気がする。

歯列をなぞったり、上あごをベロリと舐めたり、吸って、甘く噛んで欲しくて伸ばす舌を意地悪く無視する所とか。

それでも俺が我慢出来なくて、銀時の背中に回した手に力を込めたり腰を浮かせて熱を持った部分を銀時に押し付けると。

銀時は目を細めて俺の舌を食べてしまうんじゃないかと言うくらい絡め、舐め上げてくれた。

ちゅ、と言う音を立てて銀時が俺から離れてしまう。

銀時の唇を追うようにぎゅっと抱きつくと、銀時は俺の頬にキスをした。



「俺が好きで愛して甘えたいのは十四郎さんだけ。これからずっと変わらないから」



銀時がヤキモチを妬いてくれて嬉しかった。

でも、結局は俺もヤキモチを妬いてしまうのだ。



「…誠心誠意伝えろ」

「今の、誠心誠意だけど?」

「…」



でもまぁ、それも悪くないか。

俺がヤキモチを妬くたびに、銀時はそんな俺を好きだと言ってくれるのだから。

俺は幸せそうに微笑む銀時をじっと見つめる。

銀時は俺が言いたいことが分かったのか、嬉しそうに笑って顔を近づけてきた。



「ふふ、十四郎さん大好き」

「ん…っ、ふ…」



唇から与えられる甘やかな快感、これから与えられるであろう激しくて濃厚な快感。

快感と期待が合わさって、背中をピリッと駆け抜ける。

銀時の背中に傷を付けられるのは俺だけだ、そう思うと銀時の周りの人間に優越感を感じた。

愛してくれるのも俺だけだ。

銀時のスウェットの中に手を入れて、背中に回した指に力を入れる。

銀時は一瞬眉を潜めて、それでも愛おしそうに俺にキスした。





〜〜〜〜〜

若干、本編とこの続編の十四郎さんの喋り方が…変わってしまった…(笑)

HINODEさんのみお持ち帰り可です。
リクエストありがとうございました!





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