2周年記念小説

□甘え方
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「ねぇ銀ちゃん!膝枕!」

「ズリィぞチャイナ。旦那ァ俺に膝枕して下せェ」

「銀さん、このお饅頭美味しいですよ」

「銀時ぃー将棋やらないかー?」

「旦那、頂きものの羊羹もありますよ」


「んー、神楽は右で総悟くんは左に膝枕ね。新ちゃん、お饅頭食べさせてくれる?あ、近藤、俺今動けないから盤ここまで持ってきて。山崎、羊羹とイチゴミルクお願い」


「「「「「はーいっ」」」」」

「…」



俺の恋人である銀時はみんなに慕われている。

…いや、慕われているなんてレベルじゃない。

好かれている。

愛されている。

そして銀時は自分に好意のある人間にはとことん優しい。

勿論恋人である俺には特別優しいのを知っている。

けれど付き合って一年、俺はそれが本当に不安で不満で仕方ない。

確かに銀時が俺だけに優しく他の奴に厳しい奴だったら、嫌だ。

皆に優しくて、皆に好かれている銀時が好きだから。

…でも、やっぱり。

そんな矛盾した思いは、常に俺の胸の中にあった。



今日も銀時は俺に会いに屯所に来てくれたはずなのに、一緒に屯所に来た神楽や新八、それに銀時を見つけてやって来た近藤さんや総悟、山崎が銀時の周りを固めていて、俺の入る隙なんかない。

銀時は俺が居なくても楽しそうだし…

銀時の恋人は俺なのに。

俺には銀時だけなのに。

そうは思うものの、楽しそうにしている銀時や皆の笑顔を見てしまうと邪魔する気にはなれなくて。

俺は誰にも気付かれぬようひとつため息を吐いて、そーっと自室を抜け出した。



〜〜〜〜〜



「はぁ…」



台所でインスタントのコーヒーを淹れ、一息つく。

コーヒーの苦味が、心のイガイガに染み込んで行くような気がして俺は眉をひそめた。

…確かに、皆に優しい銀時が、俺は好きだ。

皆に慕われ、そんな皆を守ろうとする銀時が。

でも実際、銀時が皆に囲まれている姿を見て、銀時が皆を守る姿を見て…俺は嫉妬している。

この年になって、自分がそんな考えに揺れるなんて思ってもみなかった。

自分だけが相手を好きなんじゃないかと思うなんて…。

思えば銀時に一目惚れをしたときから、俺は可笑しかったんだと思う。

それまでは仕事一筋だった。

仕事のことしか考えていなかったのに。

銀時に出会ってからは銀時のことが頭から離れなくて、寝れない日が続いた。

今だって銀時のことを考えると、寝れなくなる日がある。

やっぱり俺は、俺だけに優しい銀時を望んでいるんだろうか。

はぁ、とため息を吐く。

まさかこんなに頭の中が一人の人間で埋め尽くされるなんて。

頭の中がぐちゃぐちゃだ。



「…でも、好きなんだよなぁ」

「俺のこと?」



その時、自分一人だと思っていた台所に自分のものではない声が響いた。



「ぎん、とき?」



振り返ると、そこに立っていたのは俺の頭の中を占める人物。



「お前、何も言わないで出てくなよ。びっくりすんだろ」



つかつかと俺のもとまでやってきた銀時は、俺を後ろから抱き締めた。



「…別に、俺が居なくても困んねェだろう。皆居るじゃねェか」



こんなこと言いたくないのに。

俺だけを見て、俺だけに優しくして。

…本当はそう言いたいのに。



「新八と神楽は道場に帰した。近藤と総悟くん、ジミーは仕事戻ったよ」

「…で?」

「で?って…十四郎を構いに来たんだけど」

「…誰も頼んでねェよ」

「俺が、十四郎を構いたいんだよ」



俺を抱き締める銀時の腕に力が入る。

それと比例するように俺の心臓はどんどんと動きを速めた。



「…苦しいっつの」

「嫌いじゃないくせに」

「嫌いだ…本当は嬉しいくせに素直になれない自分が、嫌いだ」



じわっと目頭が熱くなる。

あぁ、と思った瞬間に涙が零れた。



「っぅ…」

「お、おい、十四郎?」

「なに、お前、っ、知り合い全員甘やかさなきゃ死ぬの…?お前の恋人は誰、だか、言ってみろって、んだ」

「…土方十四郎くんです」



目を擦っても涙は止まらない。



「っ、も、っかい」

「俺が愛してるのはお前だけ。部屋で目一杯甘やかせてよ」

「甘えたことなんて、ねェだろ」

「これからは思ったこともして欲しいことも全部言って。そしたら俺、全部叶えてやるから」

「…無理だ、そんなん、慣れてねェ」



銀時が俺の体を離し、俺を自分と向かい合うように方向転換させた。



「これからたっぷり甘え方教えてあげる」



ちゅ、と額にキスされて、とっさに目を瞑る。

そろりと目を開けると、そこには満足そうに微笑む銀時が居た。



〜〜〜〜〜

(一週間後)

「銀時、ぎゅう」

「はいはい」

「(じぃ…)」

「ん?なぁに?して欲しいことは言わなきゃ分からないよ?」

「…キス、して」

「喜んで」

「(副長怖ぇェエ!!)」





〜〜〜〜〜

甘えなれてない十四郎もたまには(笑)

名無しさん、リクエストありがとうございました!
(お名前がなかったので、この作品のお持ち帰りは禁止です)





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