2周年記念小説

□赤に染まる
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しまった、結構時間掛かっちまったな。

教員室を出て自分の教室へと足早に向かう。

廊下は夕日で真っ赤に染まっていた。



「坂田、悪ィ、とっつァんの話長くてー…」



ガラリ、と教室の扉を開ける。



「…」

「…坂、田?」

「…」



俺が名前を呼んでも反応しない銀髪。

自分の机につっぷしている坂田に近付くと、すーすーと気持ち良さそうな寝息が聞こえた。



「熟睡かよ…まぁ一時間くらい待たせちまったからな…」



壁にかかっている時計に目をやると、5時ちょうど。

担任である松平に呼ばれて、教員室で一時間も話していたことになる。

坂田が寝てしまうのも仕方ない。



「…いつも、待っててくれてありがとう」



別に俺たちは一緒に帰ろうと約束している訳ではなく。

二人で一緒に帰るようになったのはいつからだったか、当たり前になってしまった。

今日だって



『悪ィ、とっつァんに呼ばれた』

『分かった、待ってる』



の会話だけで、坂田はこうして俺のことを待ってくれている。



「…なんで待っててくれんだろうなァ…」



坂田が寝ていることを再度確認しての独り言。

起きていたらこんなこと、聞けない。



「俺のこと、好き、とか…いや、ないないない」



こんなこと、言えない。

坂田が起きていないにしろ、恥ずかしい独り言を言ってしまった。

自分の言葉に首を振って、すやすやと眠る坂田を見つめる。



「…でも、すげェ嬉しい…だって俺だけだろう、待っててくれんの」



面倒くさがりで物事に無関心なことが多い坂田が、俺のことを待ってくれているなんて。

俺に興味があるのか?

俺を気に入ってくれているのか?

どちらにしろ、俺にとって嬉しいことばかりだ。

だって俺は。



「いつまで俺はこのポジションに居られるんだろうな」

「…お前が望むなら、いつまでも」



聞こえないハズの声がする。

目の前の銀髪が揺れて、ゆっくりとその目が俺を捉えた。



「!?おま、起きて…っ!」

「土方、俺はー…」



坂田が立ち上がり、驚きで動けない俺の前に…

真っ赤に染まる教室の中、二つの影が重なった。





〜〜〜〜〜

勝手に銀→←土にしてしまった^^
雰囲気を重視したつもりなんですが…はたして成功したのか…(笑)

ふーちのみお持ち帰り可です。
リクエストありがとっ!





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