2周年記念小説

□なんと言おうと
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雑誌の取材の仕事が終わり、みんなで夜飯を食べた後。

銀時と部屋に戻って、銀時が雑誌を読み、俺はテレビを見てくつろいでいるときだった。



「銀時、バキューム出てる」

「え、ホント?」

「ほら、神楽」

「あ、ホントだー」



俺たちも良く出演させてもらう歌番組「Nステ」に同じ事務所の後輩「超バキューム」が出演していて、俺は雑誌に夢中な銀時の肩を揺する。

バキュームのメンバーとは比較的仲が良い。

メンバーの志村妙は銀時と一緒にドラマ出てたしな。

女優としてデビューしたが、アイドルとしても売り出しているらしい。

月詠はクールで口数が少なくあまり話したことはないが、嫌われてはいないと思う…多分。

猿飛はホント消し去りたい。

会う度に銀時に付きまといやがって…!

そんなバキュームの中で特に仲が良い、というか懐かれているのが神楽だ。

色々あってよく面倒を見てやるのだが、俺たちの関係に気付いているのかいないのか…よく銀時のことをパピー、俺のことをマミーと呼ぶ。

懐かれるのには慣れていないが、俺と銀時のあとをヒョコヒョコ付いてくる神楽は可愛らしい。



『バキュームのみんなはSsのメンバーと仲が良いんだよね?』

「俺たちの話してる」

『そうアル!銀ちゃんとトシちゃんはワタシと沢山遊んでくれるネ!』

「ぶっ」

「か、神楽のやつ、あんだけテレビでトシちゃんって言うなって言ったのに!」



司会者が振った話題に意気揚々と答えた神楽に、銀時がお茶を吹き出した。

普段は良いけどテレビではイメージが崩れるから絶対にトシちゃんって言うなよ?と念を押しておいたのに…!

銀時は隣でむせているが、今はちょっと心配してやれない。

早く誰か神楽を止めてくれ!と思うが、テレビに映る志村も月詠も猿飛も、可笑しそうにクスクス笑うだけだ。



『銀ちゃんとトシちゃんなんて、本当に仲良いんだねー』

『そうヨ、二人はワタシのパピーとマミーネ!』

「「ぶっ」」



な、生放送だぞ神楽ァア!!



〜〜〜〜〜



「土方さぁん、山崎から良い知らせでさァ」

「あァ?なんだよ…」



恐怖のNステが終わった後、俺たちの部屋を総悟が訪ねてきた。

銀時は洗い物中だ。

ちなみに銀時が神楽に「生放送で変なこと言っちゃダメでしょ!」とメールを送ったが、逆に「だってホントのことヨ!銀ちゃんのバカ!」と言われて凹んでいた。



「銀土サイトの更新率パネェっス!だそうで」

「神楽ァア!つかその前に山崎ィイ!!」



山崎は俺たちの小説やイラストが載っているサイトをよくチェックしているらしい。

以前山崎が「銀山って、銀新より少ないんですよねー…」とぼやいてる所をボコボコにした記憶がある。

色々な組み合わせがある中で、さっきの神楽の発言による俺と銀時の組み合わせが好きなサイトの更新が沢山あったと言うことだ。



「まぁまぁ良いじゃねェですかィ、嬉しいくせに」



にやりと笑う総悟に、俺は髪をくしゃりとかきながら答えた。



「…そう、なんだよ…嬉しいんだよな…」



写真集のときもそうだったが、これで俺と銀時が一緒に居る所を見て喜ぶファンが増えるかと思うと…凄く、嬉しい。

銀時はどう思ってるか分からないけど、俺は銀時と他のメンバーが一緒に居て喜ばれるのは正直気に入らないし。



「ま、良いと思いやすよ」

「良いのか…?」

「良いでしょうよ、付き合ってんだから」

「…そうかな」



俺の心を見透かしたように笑う総悟の言葉に、少し勇気を貰った気がした。

そうか、付き合ってるんだもんな、俺たち。

喜んでも、良いのか。



「総悟?どうしたの?」

「あ、旦那ァ。これ近藤さんからのお土産でさァ」

「ケーキ!お礼にこのクッキー持って行きなさい」

「わぁい」



なんて一人で安心していると、洗い物を終えた銀時が玄関まで出てくる。

総悟から箱を受け取り中身を確認した銀時は嬉しそうに笑って、昨日作った(俺は型抜きを手伝った)クッキーを総悟に渡した。



「なんか、近所のおばさんみたいだな」

「なんだとぉ?」



二人のやり取りが可笑しくてクスクス笑うと、銀時に頬を抓られる。

勿論、優しくだ。



「まぁまぁ…じゃ、そう言うことで」

「おう、サンキューな」



総悟は俺たちを見て呆れたように笑いながら、銀時からクッキーの入った紙袋を受け取る。

ヒラヒラと手を振って俺たちの部屋を総悟が出て行ってから、俺は台所へ向かうために振り返った。



「銀、紅茶淹れよう」



銀時はもう、今貰ったケーキが食べたくて仕方ないはずだから。

銀時は甘い紅茶で俺はコーヒーにするかな…いや、でも面倒だから(銀時が淹れるんだけど)俺も紅茶にするか。



「十四郎」

「ん?」



台所へと足を進めた瞬間、銀時に腕を掴まれる。

なんだろう、と銀時の方を振り返って首を傾げると、銀時にキスされた。



「愛してるよ」

「な、なんだよ、急に…」

「急じゃなくて、いつも思ってる。誰がなんと言おうと、俺は十四郎だけだからね」



急に真剣な表情で言われ、俺は顔が赤くなるのを感じて銀時から目をそらす。

どうして急にそんなこと…

あぁ、さっきの神楽の発言から俺たちのファンサイトのことに行き着いたのか。



「…なに、エスパーなのか?」

「高校から一緒に居るんだよ。十四郎のことならなんでも分かる」

「…俺はたまに分かんなくなるよ、銀時のこと」



銀時の服の裾を掴みながらそう言うと、わしゃわしゃと頭を撫でられる。

銀時はいつも、俺のことに関して楽しそうだ。

今だって、凄く楽しそうに笑っている。



「分かんなくなったら、聞いて。なんでも答えてあげるから」

「…じゃあ、質問」

「ん?」



俺は頭を撫でる銀時の手にすり寄りながら、クスリと笑った。

銀時が俺に笑いかけてくれるだけで、心がすぅっと落ち着いてしまう。

落ち着いて、でも銀時の笑顔にドキドキして。

何年も一緒に居るはずなのに、こんなにときめくのは銀時だけだ。



「俺のこと、好きか?」

「好きだよ」

「俺のこと、愛してる?」

「愛してます」



ちゅ、ちゅ、と軽くキスを落としながら囁かれる愛の言葉。

ずっとずっと聞いていたいくらい心地良い。



「なぁ、どうして何の繋がりもなかった俺を、気にかけてくれたの」

「高校の話?」

「ん」



俺の同級生の紹介で知り合った俺たちがこうして付き合うまでに至ったのは、銀時が俺のことを気に入って、気にかけてくれたからだ。



「付き合い始めた頃に言わなかったっけ」

「…もっかい聞きてェの」

「なるほど」



銀時が俺のことを好きになってくれた時の話は何回だって聞きたい。

だってくすぐったいけど、嬉しいから。

自信が持てるから。

銀時は俺の言葉に苦笑して、俺の手を引きながら台所に向かった。



「十四郎ってさ、初めて会ったときはテンション高かったけど、結構近寄りがたい雰囲気でしょ?大人しそうって言うか寡黙って言うか」

「無愛想だってよく言われる」

「なのにさ、初めて会った日の夜にメールくれたじゃん。そのメールが頑張ってテンション上げてるのが分かって、めちゃくちゃ可愛いなこいつと思ったの。それがキッカケ」

「だってさ、会話続かなかったらそれっきりじゃん…俺、本当に銀と仲良くなりたかったから」

「うん、一緒に居るうちにそういう部分が見えてきて嬉しかった。俺と喋るときだけ態度変わったりするのも、面白かったし」

「面白かったって、必死だったんだよ、バカ」



台所にケーキの入った箱を置き、シンクに寄りかかった銀時に抱き付く。

昔の話をしながら微笑む銀時をキッと睨むと、やっぱり笑われた。



「分かってるよ、その必死さがまた愛おしくてさぁ」

「でもあれは消したい過去だな…必死過ぎて恥ずかしい」

「俺が可愛いと思っても、消したい過去?」

「…どぉしてそんな嬉しくなること言うんだ…」

「だって十四郎には、俺と出会ってからの記憶は全部大事にして欲しいから。恥ずかしいことなんて何も無いよ。俺にとったら、全部全部可愛くて仕方ない」

「銀…」



銀時とどうやったら仲良くなれるかって、出会った頃は本当に必死で。

今思い出すとそんな自分が痛々しくて恥かしい。

なのに銀時はそんな俺を可愛いと言い、忘れて欲しくないと言う。

…そんなこと言われたら、忘れられない。

銀時と出会ってからのことで、忘れたことなんて一つもないけれど。



「さ、て、紅茶淹れようか」



銀時はにこりと微笑んで、俺の頭をポンポン撫でた。

そうして俺の体を優しく離して、やかんに水を入れる。

その後姿を見て、俺は笑ってしまった。



「銀」

「ん?」

「顔赤いぞ」

「気のせいじゃない?」



銀時の頬が薄く色付いている。

それを気付かれたくなくて、俺から離れて紅茶の用意をし始めたんだろう。

とぼける銀時が面白くて、俺はもっと銀時をいじめることにした。



「銀ってさ、沢山俺のこと褒めたり嬉しいこと言ってくれるけど、意外と照れ屋だよな」

「照れてないよ!気のせいだよ!」

「ふぅん?」

「あ、そうやって可愛くない顔して。良いです、銀さん一人でケーキ食べちゃいますっ」

「あ、ズリィ、チョコケーキは俺の!」

「だめー」



ケーキの入った箱を抱えてぷいっとそっぽを向く銀時はまるで子供だ。

銀時と居ると飽きることなんてない。

そんなの一生来ない。

こんなに可愛くて、格好良くて、優しくて、楽しくて。



「銀、俺、可愛くない?」

「…」

「…」

「可愛いに決まってんだろうが…!!」

「ふふっ、ちょろいちょろい」

「罠だと知って掛かってしまう…!後でお仕置きだからね?」



ぎゅうと抱きしめられ、甘いテノールが耳に響く。

大好きな人からのお仕置きなら、甘んじて受けよう。

だって俺のことを見ていてくれるなら、なんだって幸せなんだ。

誰がなんと言おうと銀時には俺だけだって、感じさせてくれよな。





〜〜〜〜〜

長め…に頑張ったつもりなんですが…!
いつか高校時代の、銀時と仲良くなりたくて必死な十四郎が書きたいな^^

グループ名[Ss(エスエス)]はSilverSoulの略(笑)

あんのさんのみお持ち帰り可です。
リクエストありがとうございました!





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