2周年記念小説

□ピンショット
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「そうじゃ金時、写真集出来上がったき、見てみるとええ〜」

「銀時な」



銀時が坂本さんに用事があると言うので、二人で事務所に来た。

事務所に着いてすぐ、銀時は坂本さんに何か袋を渡して、それで用事は終わってしまったらしい。

じゃあ帰ろうか、と言う銀時に付いて社長不在の社長室を後にしようとすると、坂本さんが銀時をそう呼び止めた。



「おぉ、凄ェ」



坂本さんが差し出した写真集を銀時が受け取る。

この写真集は二ヶ月ほど前、ハワイで撮影した俺たち六人の写真集だ。



「十四郎は相変わらずのイケメンじゃった」

「あ、ありがとうございます」



あはは、と笑いながら坂本さんに言われ、俺は頭を下げる。



「ほんじゃあ、高杉迎えに行ってくるぜよ。戸締まり頼んだき」

「え、俺は?」

「はい」



坂本さんはそう言い残し、ひらひらと手を振って社長室を後にした。

…銀時の質問を無視して。



「…なにあいつ坂本の分際で!」



銀時は坂本さんに無視されたのが気に入らないらしく、むぅと口を尖らせている。



「銀時、もう良いだろ?な、早く見ようぜ」



むくれる銀時から写真集を受け取って、銀時の手を引いて社長室を後にした。

そうしてロビーのソファーに座ると、銀時が俺に体重を預けるように抱きついてくる。



「十四郎、俺格好良い?」

「ん、もぉ…格好良いに決まってんだろ…お前は世界一格好良い」



すりすりと頬ずりされて、ふわふわな天パがくすぐったくてしかたない。

でも甘えてくる銀時が凄く可愛くて、俺は銀時の髪を撫でながら頬にキスをした。



「うー、そう言ってくれるの、十四郎だけ」

「馬鹿、みんな思ってるって」

「ふふ、ありがと。あ、最初はみんなで撮ったやつだ」



俺の言葉を聞いて機嫌を良くした銀時が、俺からゆっくりと離れて写真集を開く。

銀時が離れてしまったのが寂しくてぴったりと寄り添い銀時の肩に頭を預けると、銀時も俺にすり寄ってきた。

あーどうしよ、すげェ幸せ…



「撮影、楽しかったな」



炎天下の中、汗だくで街中や浜辺で写真を撮ったのも今は良い思い出だ。

六人で撮ったときなんかは会話をしたりして自然な感じで写真を撮ったので、凄く楽しかったのを覚えている。



「だね…あ、この十四郎可愛い」

「うっわ、凄ェ嬉しそうな顔…銀時が隣に居るからだ…絶対ェ総悟に馬鹿にされる…!」



銀時が指差したのは、六人で並んで歩いている写真。

俺は銀時と山崎に挟まれていて、銀時の方を見ながらとても機嫌が良さそうに笑っていた。

銀時に可愛いと言われるのは嬉しいが、後々写真集を見る総悟には絶対にからかわれるだろう。

あいつ、俺のことからかうの好きだからな…

いや、でも。

こんな写真を見たら、銀時と俺が一緒に居て騒ぐファン、もっと増えるかも…

なんて考えていると。



「やっぱ可愛い〜、これ写メって待ち受けにしようかな」

「…ばか」

「十四郎バカなの」

「ふふっ、ん」



銀時が俺の頭を撫でながらそう言うので、嬉しくなってキスを強請った。



「んー」

ちゅ



銀時は微笑んで俺のキスに答えてくれる。

甘い雰囲気が漂う中、銀時が写真集のページを捲った。



「こっからピンかぁ」



銀時が捲ったページには、山崎のピンショット。



「山崎は抜かして良いんじゃね?」



正直どうでも良い。



「十四郎酷い」

「あ、なぁ、この近藤さん、現地の人みてェ」



クスクスと笑う銀時を気にせず、山崎のピンショットページを捲る。

次のピンショットは近藤さんだった。



「あいつ日焼けしてたからなー…つーかどれが近藤か分かんねぇよ」



にかっと笑う近藤さんは現地の人と見間違うほど日焼けしていて。

確かに銀時の言う通り、一般の人に混ざってどれが近藤さんか分かりにくい。

それがなんだか面白くて、思わず笑ってしまった。



「次は総悟か」



銀時がパラパラとページを捲って、次は総悟だ。



「総悟の写真アップ多いな!可愛く撮りすぎだろ」



総悟は別に可愛いを売りにしている訳ではない。

が、総悟の顔を好きなファンは沢山居るわけで。

浜辺でビーチボールを持ち、胡散臭い笑顔を浮かべた写真や、顔に砂を付けて舌を出したような本当に胡散臭い写真が沢山載っている。



「…まぁ、顔は、な」

「顔はね」



俺たちから見たらかなり胡散臭い写真だが、総悟ファンが見たら堪らないのであろう。

それは分かるから(需要と供給ってやつだ)とりあえず黙ってページを捲った。



「次はー…新八だ」

「こうして見ると新ちゃん幼いなー」



次のピンショットは新八だったが、総悟の後だからだろう。

普通の写真なのに何故か物凄く癒される。

犬と戯れたりピースをしたり、全部の写真が笑っていて。

確かに幼い感じはするが、可愛らしい。



「まぁまだ十代だし」

「ピチピチしてんね」



ほんと、肌が十代なんだよな…羨ましいことに。

銀時は今でも俺の肌はツヤツヤだと褒めてくれるが、やっぱりもっと褒めて欲しいから。

今度、メイクさんに手入れの仕方教えてもらおう。

そんなことを考えながらページを捲る、と。



「次は、俺か」



そこにはサーフボードを抱えた俺の姿。

前に一回だけ銀時とサーフィンに挑戦したことがあると言ったら、じゃあサーフボード持ってみようか、となったのだ。



「十四郎、格好良い!」

「そ、そうか?」

「これとかちょう格好良くね?凄ぇ凄ぇ、男らしい!」

「男らしいって、なんか変だな」



銀時の言葉に笑ってしまうが、銀時に褒められるのはかなり嬉しい。

どの写真も良いなー、と俺の写真を眺める銀時に頬が緩んだ。



「この写真、頼んだら引き伸ばしてくれないかな…」

「そ、そんなにか?」

「うん、実物に近い可愛さが出てる」

「…あ、ありがと」



あまりにも銀時が褒めてくれるから、段々と恥ずかしくなってきて目を逸らすと


ちゅ


俯き気味の俺の額に銀時がキスをする。

くしゃくしゃと頭を撫でられると子供扱いされてるみたいだ。

…満更じゃないけど。



「でもやっぱり実物だなぁ…こんな可愛いなんて、俺だけが知ってるんだもん」

「…だって、銀時専用だもん」



銀時以外には無愛想っつか、どっちかと言ったら態度悪いもんな、俺。



「か、わ」



銀時は俺の言葉に目を見開いて、ぎゅうぅと俺を抱き締めた。



「く、苦しいー」

「十四郎くん、今日は外じゃなくてお家でご飯食べよ。早く十四郎とイチャイチャしたい」

「…うん」



本当は事務所の帰りにご飯食べて行こうねって話してたけど。

俺も、そうしたい。

早く銀時に甘やかしてもらいたい。

こくりと頷けば、銀時は俺の頭を撫でて微笑む。



「で、最後が俺なのね」



銀時が写真集のページを捲ると、ピンショットの最後は銀時自身だった。

その写真に、俺は言葉を失ってしまう。



「…」

「十四郎?」

「…こ、んな、の…いつ撮ったんだ…?」

「えーと、あ、十四郎がメイク直ししてるときかな」

「…」

「…ど、どう?」



バストアップの写真。

海から上がってすぐであろう、銀時の髪や体は濡れていて。

前髪をかき上げながらカメラを見るその目は、写真を見る者を一瞬にして虜にしてしまうほど、強い。

俺が黙ってしまって不安になったのか銀時が俺の顔を覗き込んできた。

そんな銀時の胸に顔をうずめるようにして、俺はぎゅうと銀時に抱きつく。



「十四郎?」

「ど、どうしよ、直視出来ねェ…!」

「本人を目の前にして!?」



銀時にそう突っ込まれるが仕方ない。

だって、だって。



「だってズリィ!何だよこの格好良いの!色気垂れ流しやがって!」

「それ、誉めてる?怒ってる?」

「両方!」



にっと口角を上げる写真の銀時は、男らしくて…色気が半端じゃない。

写真を見てるだけでゾクゾクしてしまう。

そんなの、俺が直視出来るわけがない。



「はは、十四郎面白い」

「うー…どうしよ、凄ェドキドキする…!」



銀時に何を言われようと笑われようと、俺の心臓はどんどん五月蝿くなるばかり。

もうどうにも出来なくて。



「ホントに可愛いなー十四郎は」

「つーか銀時エロい…!これ、そうだ、アレだ」

「エッチしてるときみたい?」

「…!」

「だって十四郎思い浮かべながら撮ったんだもん。必然的にそうなるって」

「っ、ば、か」

「凄いドキドキしてるね」



銀時は俺の胸に手をあててクスリと笑った。



「…っ、どうにかしろよぉ…!」

「はいはい」



あとはもう、俺の心臓を可笑しくした張本人に責任を取らせるだけ。

その強い瞳が俺だけのものだと実感出来るまで、今日は離してやらないから。

…覚悟しとけよ?





〜〜〜〜〜

クラーク様のみお持ち帰り可です。
リクエストありがとうございました!

銀時が坂本に渡した袋は、晋ちゃんのお弁当^^^^





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