plan

□55000HIT(なるさ様)
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「銀!なぁっ、次はあそこ!」

「はいはい、ちょっと待って」

「早くー!」

「あんまり急ぐと転んじゃうよ」



今日は十四郎と久々にデート。

最近は万事屋か屯所でゆっくりすることが多かったから、十四郎は俺と出掛けられたのがよっぽど嬉しいみたい。

さっきからあっちに行ったりこっちに行ったりせわしなく動いている。

顔よし地位あり金ありの、俺には勿体無い恋人。

そんな十四郎と付き合い始めて一年、俺は付き合い始めに聞いた『坂田が初めての恋人』と言った十四郎の言葉の意味を身を持って体験している。

一年経った今でも進行形だ。

十四郎は所謂『電波』らしい。

らしいと言うのは、俺が十四郎以外の『電波』に遭遇したことがないから。

付き合い始めて、少しずついつものクールな十四郎ではない面が出てきた頃、そんな十四郎と居た所を妙に目撃された。

後日妙に会ったときに『土方さんって電波ちゃんだったのね…』と妙が言ってきて、十四郎が電波だと言うことが発覚したんだけど。

…妙ってさ、なんかそういうの詳しいんだよね。

俺と十四郎が付き合ってるって聞いても喜んでたし、むしろ性生活を赤裸々に語れと脅してきたり。

最近では(元々か?)九兵衛が加わって、たまや神楽も不穏な動きを見せているし…妙の影響力は恐ろしい…。

まぁ俺が黙ってても十四郎が赤裸々に語るから俺たちの関係はどこまでもオープンなんだけどね。

聞かれると嬉しそうに答えちゃうからなぁ…ま、それも可愛いんだけど。

俺は十四郎が電波だって、たまに別次元で会話してしまうくらいで特に影響はないと思っている。

だって十四郎ならなんでも可愛いと思ってしまうくらい愛しているのだ。



「銀時、さん?」

「あ、え?」



はしゃぐ十四郎を宥めながら手を伸ばすと、後ろから声を掛けられる。

振り返ると、そこには美人な女が立っていた。



「あぁやっぱり!この間はありがとうございました」



その女は人違いじゃないことを確認してから、にこりと笑って俺に近付く。

誰だ誰だと記憶を辿れば、その女に会ったのはつい最近のことだった。



「…あぁ!先週の」



先週の依頼人、だ。



「はい、山野です」



山野さん、は俺が覚えていたことに安心した様に微笑む。

俺も微笑みを返すと、今度は後ろから裾を引っ張られた。

振り返ると、十四郎が眉間にシワを寄せて立っている。



「…ぎん?」

「十四郎、ちょっと待っててね」



よしよし、と頭を撫でてやってから、俺は山野さんに向き直った。

十四郎の機嫌が悪くなる前に話を終わらせないとな。



「で、あれからどう?」

「お陰様で大繁盛です。人手が足りないくらいで…あ、もし良かったらまた手伝いに来てくれませんか?」



この人からの依頼は店の手伝いだった。

店と言うのは居酒屋で、売上が少し伸び悩んでいるので相談に乗って欲しい…だったか。

山野さんの笑顔を見ると、どうやら本当に上手くいっているらしい。

俺はそれに安堵する。



「あぁ良いぜ。また頼みに来てくれよな」

「ふふ、分かりました」



嬉しそうに微笑む山野さんに微笑み返すと、背後で息を飲む音が聞こえた。



「…っ!」



あ、まずい

そう思った瞬間、頬に鋭い痛みが走る。



バチンッ!



「きゃっ」

「…い、っつー…」



山野さんが小さな悲鳴を上げた。

俺の隣には、先程まで俺の後ろに居た十四郎の姿。

フルフルと握った拳を震わせながら、目元に涙を溜めて俺を睨んでいる。



「…っ銀時の馬鹿!俺と言うものがありながら…!!う、うわぁぁん!!」



そう叫んで、十四郎は走り去って行った。



「あぁー…」



やってしまった…



「い、良いんですか?追わなくて」



走り去った十四郎を見て、山野さんがオロオロと俺に声を掛けてきた。

それに俺は苦笑する。



「いや、追うよ。じゃあまたな」

「はい、また」



ヒラヒラと山野さんに手を振り別れを告げた。

十四郎がヤキモチを焼いて俺を殴って走り去るのは、今日が初めてじゃない。

毎回、だ。

外でデートした日は、必ず。

その都度学習しているハズなのに、いつも失敗してしまう。

今回は大丈夫だと思ったんだけどなぁ…

今回は待たせた時間が長かったかもしれない。

…そうか、手を握ってあげていればあんなに怒ることはなかったのかな?

俺は今日の反省点を振り返りながら十四郎が走り去った方向に足を進めた。



〜〜〜〜〜



「ひっく、ぐすっ」



ムカつくムカつく!

銀時には俺が居るのに!

銀時は俺が居れば幸せなのに!

これも全部銀時が格好良いからいけないんだ!

そりゃあ銀時は格好良くて優しくて甘やかしてくれてエッチは上手だけど…

だからってあんなにモテなくても良くないか!?

デートする度に女に声かけられやがって!

俺が居るのに女と楽しそうに喋るし!

俺だって、あんなに格好良くて優しい銀時が俺と付き合ってくれてることが夢みたいなことだって分かってる。

分かってるけど、そんな銀時と俺は一年付き合って来たんだ。

もう銀時なしじゃ生きていけないし、銀時だって俺が居なかったらダメなんだもん…!

お妙や九兵衛、たまさんや神楽は応援してくれている。

俺は銀時とのことを惚気たくて仕方がないから、話を聞いてもらえるのが凄く嬉しい。

だから聞かれたら何だって答えるし、別に彼女たちの前でイチャイチャするのだって何の問題もない。

その他は敵だ、男も女も。

銀時に色目を使うやつはみーんな敵!



銀時に平手打ちを食らわせて走ってきて結構経った気がする。

俺はイライラが抑えられなくて、屯所に帰ろうと思い近道となる路地裏に入った。

今日は久々に銀時と出掛けられたのに…

いつもの、万事屋や屯所でイチャイチャも好きだけど。

二人で手繋ながら、もっと色んなとこ見て回りたかったな…

もう少しで路地裏を抜ける、と言うときだった。

体がぐっと後ろに引かれる感覚。

やばい、倒れる…!と思ったのに、俺は次の瞬間暖かいものに包まれていた。



「トシくん見ーつけた」



耳元で囁かれ、体がビクッと揺れる。

こんな腰にくる声、一人しか居ない。



「…ぎ、ん?」



少し振り返ると、ぎゅっと抱きしめられ耳にキスされた。



「どうして置いていくの?寂しかったよ」



ちゅ、ちゅ、と軽いキスを繰り返され絆されそうになる怒り。

でも!でも!

一番の俺をぞんざいに扱ったことは、すっごい悪いことなんだからな!



「っ、だって!女と楽しそうに喋ってるし!俺居るのに!」



今日は謝ったってすぐには許してやらない!

そう固く心に決めて、俺は俯く。

いつもそうだ。

銀時は俺が怒ると抱きしめてキスして、俺を甘やかしてあやふやにしちゃう。



「ごめんね、先週の依頼者だったんだ。無碍には出来ないでしょ?」

「でもっ」



俺は銀時が他の人と喋ってるの、嫌だ!

銀時が他の人を見るのも笑いかけるのも嫌なんだもん!

うぅ、と唸ると銀時がふふっと笑う。

なんで笑うの、と抗議しようと思って振り返ると、優しく細められた瞳と目が合った。



「十四郎だけだよ、俺は…」

「ん、んン…」



塞がれる唇。

甘い瞳で、甘い言葉で、甘い唇で、俺の脳はどろどろに溶かされる。

絶対に許してやらないんだから!…と固く誓った決意まで

宥める様に俺の髪を撫で、銀時の唇はゆっくりと離れていった。



「ごめんね?」



困ったように笑いながら、髪を撫で続ける銀時。

今まで何人にその笑みを見せたの?

今まで何人に今みたいなとろけるようなキスしたの?

聞きたいことは山ほどある。


けど、でも



「…俺だけ、好き?」

「うん、勿論」

「俺だけが居れば、良い?」

「うん、十四郎が居ればそれで良いよ」

「大好き、なんだから…」

「うん、俺も大好き」

「…ぎん」



銀時の頬を包み込むようにして瞳を合わせた。

俺が質問するたびに降ってくるキスの雨。

…今日だけ。

今日だけ、なんだからな。



「…許してあげる」



俺がそう言うと、銀時は心底安心した、と言う顔をした。

俺が怒るたびに銀時はこうして俺を追いかけて、宥めて、安心して。

どこまでも優しい銀時。

俺はもっともっと銀時が愛おしくなった。



「ありがとう…手繋いで、デートの続きしてくれる?」

「…仕方ないなぁっ」



軽いキスを与えられ、手を優しく握られる。

銀時に笑いかけたら、銀時も嬉しそうに笑ってくれた。



初めて出来た恋人はこんなにも優しくて格好良い。

絶対絶対、手放してなんてやらないんだから!





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お待たせ致しましたm(_ _)m
55000hitキリ番です!ありがとうございます!

フェミニスト銀時と電波十四郎。
ちゃんと電波になったかな…どきどき…





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