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□夏休み
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「せんせー、アイス買ってきたよ」

「おぉ、サンキュ」



夏休みに入り、俺は3年生の補習授業を担当している。

毎日毎日学校に来て一週間、今日はやっと補習最終日だ。

明日から一週間、俺は仕事を全部持ち帰って学校には来ないつもり。

だってだって、

坂田が一緒に過ごしたいと言ってくれたから。



「今日で終わりだね、補習」

「あぁ、お前補習組じゃないのに毎日来させて悪かったな」

「大丈夫だよ、俺も先生に会いたかったんだから」



坂田はそう言って、俺にキスをした。

此処は準備室で二人きり。

誰かに見られているとかそう言う心配はないけれど。



「ん…止めろ、まだ補習あんだから」



坂田に触れられたら全て委ねたくなってしまう。

甘えたくなってしまう。

これでも一応態度を変えているつもりだから、今はあまりベタベタして欲しくない。



「じゃあ補習終わったら目一杯キスさせてね」それを分かっている坂田はふふっと笑って俺から離れた。



…俺の腰を厭らしく撫でていくのも忘れずに。



「〜っ、坂田!」

「じゃあセンセ、補習で」



ヒラヒラと手を振って準備室を後にする坂田に軽く舌打ちする。

どうすんだ馬鹿、授業どころじゃなくなるに決まってんだろ。

補習が始まるまであと10分、俺は坂田が買ってきてくれたかき氷のようなアイスを食べて気を紛らわすことにした。



〜〜〜〜〜



『この問題を…坂田』

『えぇ!俺希望補習ぐ』

『うるせェ、さっさと前に出てこい』

『酷い…』



なんて補習中に朝の復習をしながら、無事に補習は終わった。

補習を受けていた生徒たちは早々と帰り支度をして挨拶をしながら教室を後にする。

全ての教材を抱えて準備室を目指し廊下を歩き始めると、急に抱えていた重さが半分になった。



「…坂田」

「同じ所に行くんだから、持つよ」



ふわふわの髪を揺らして、坂田は微笑む。

こういうさり気ない気遣いが出来るからこいつは大変モテるわけで。

俺はこの気遣いの出来る所が大嫌い。

でもそれが俺に向くものだったら…大好きだけど。



「…お前はタラシか」



はぁ、とため息を吐いてそう言うと、坂田は拗ねたように唇を尖らせた。



「先生にだけだもん」



…あぁ、なんだこいつ

髪の毛わしゃわしゃにしてぐりぐりしてェ…!

そう思った途端、俺の歩くスピードは速くなる。



「せ、先生?」



不思議に思ったのか、坂田も俺に遅れないように歩くスピードを上げた。



〜〜〜〜〜



準備室に入り荷物を机の上に置き、坂田から荷物を取り上げてそれも一緒に置く。

何が何だか分からないといった坂田をソファーに座らせ、俺は坂田の膝の上に跨った。



「せ、センセ…ん、ちょ、ま」

「やだ、待たない」



両手を坂田のふわふわ銀色に突っ込んで、遠慮なしにわしゃわしゃ撫でる。

額をぐりぐり押し当てて俺は悦に入った。



「お前、ホント可愛い…廊下で抱き付くかと思った」



補習が終わったから教師の俺は少しお休み。

坂田に擦り寄って甘えると、坂田は苦笑しながらも俺を抱きしめ返してくれた。



「俺可愛いのかな?先生の方がもっともっと可愛いよ」

「んー、可愛いの」

「先生が?」

「坂田が」



ちゅ、と触れるだけのキスを繰り返す。

朝からずっとこうしたかったから幸せだ。



「センセ、今日から新婚生活だね」

「一週間だけどな」



ずっと一緒に住みたいんだけど。

飯だって作るし掃除だってするし洗濯だってなんだってするのに。

坂田のためなら、世間一般で言う主婦になれる。

坂田の顔を覗くと、何故だか笑われた。



「不満そう」

「だって、俺は早くお前と一緒に住みたいし」

「まぁまぁ、それの予行演習だと思って、ね?」



坂田はふふっと微笑んで、俺を宥めるようにキスをする。

予行演習って…坂田も一緒に住みたいと思ってくれてるのかな…と思うと胸がドキドキした。

ずっとずっと坂田と居たい。

一秒でも離れたくない。



「坂田、シたい…」



そう言ってキスをしようとしたら、口元に坂田の手が当てられた。

なんで、と言うように坂田を睨むと、坂田は困ったように笑う。



「俺一回で終われる自信ないし…ベッドの上でゆっくりイチャイチャしたいもん」



…ずるい。

そんな風に言われたら、従うしかないじゃないか。



「…じゃあ、早く帰る」



坂田の上から立ち上がり、荷物を纏めようと机に向かう。



「うん、あ、センセ」

「ん?」



坂田に背を向けた瞬間に呼ばれ、俺は首だけ振り返った。

すると坂田は俺の耳元で



「俺が大学入ったら、先生ん家に上がり込んじゃうから」

拒否権はなしね



確かにそう言って、楽しそうに笑う。

俺は暫く何も言えず

言ったら言ったで感極まって泣いてしまった。





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スイッチの切り替えをする土方先生が書きたかったんですが…あれ…





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