大切なさがしもの


□第3話 近づく距離
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「ん・・・・・。」


あれ・・・ここは・・・・。

礼奈はゆっくりとベッドから起き上がる。

右にある窓から外を見ると、夜になりかけているという事がわかった。


「・・目が覚めたみたいだね。」


マチはそういうと、椅子に座って読んでいた本を閉じ礼奈に声を掛けた。

「あ・・マチ。付いててくれたんですね、ありがとうございます。」

礼奈が感謝の気持ちを述べるとマチは何故か溜息をついた。

「あんた、そのございますっての辞めな?慣れないのさ。私だけじゃなくて皆。」

・・・敬語を使うなってことかな。
んーでもなぁ。これが一番喋りやすいんだよね。
だんだん慣れていけばいいかな?

「あ、はい。わかりま」

「ん?」

敬語を使おうとした礼奈の言葉の途中で威圧感を放つマチ。

怖い。


「・・・わかった。」

マチは一つふっと笑うと本を傍の机に置き立ち上がり、礼奈のおでこに手を当てた。

「熱・・とかじゃ無いみたいだね。もう大丈夫なのかい?」

そっか.
私、また意識を失って倒れたんだ。

「多分、大丈夫。今日で3回目だし。なんか慣れてきたかも。」

「そう?ならいいけど、無理したら駄目だかんね。」

マチはそう言うと軽く微笑んだ。

マチって最初怖い人なのかもって思ってたけど、すごく優しいな。

「うん、あ、ありがとう。」

礼奈は優しさに慣れていないせいか、少しぎこちなくお礼を言った。

そういえば、さっき倒れた時受け止めてくれたのはフェイタンだったな。

そう思いながら部屋の中をきょろきょろとする。


いない。


そりゃこの狭い部屋だったら、いたらすぐ分かるよね。

そう礼奈が一人合点している時だった。


「・・・フェイが気になる?」

え。

考えていることを読まれびっくりする礼奈。

「え、いや、気になるというか、受け止めてくれたので近くにいるのかと思って。」

そう礼奈が言うと、マチはまた溜息を一つついた。

「全く、さすがに女の子の部屋に二人きりではいないさ。」

??
どういう意味だろう。

「?そういうものなの?」

よくマチのいう意味が分からなかった。

よく考えて見れば男性と二人きりというか、、女性と二人きりという状況も初めてかも知れないな。

ここに来てから初めてばかりだなぁ。


「・・そういうものさ。本当に何も知らないみたいだね。」

礼奈が一人考えこんでいると、マチがそう言いながらもう何度目かの溜息をついた。


「ごめんなさい。」


思わず謝ってしまった礼奈。

案の定マチは何で謝るんだいと軽く笑うとさっきまで自分が座っていた椅子を片づけ始めた。


「それより、お腹減ってるんだって?」

「あ・・・。」

そうだった・・フェイタンの前でお腹が鳴ったんだった。

「遠慮なくそういうことは言いなよね。」

そのマチの言葉を聞きながら礼奈はベッドから降りると頷いた。

「うん。わかった。皆はいつもご飯とかどうしてるの?」

その言葉にマチは多少考え込む。

「あー。ライフラインは一応こんな所だけど生きてるんだ。
だから、たまに私とパクが作ったりするけど、外で食べてきたり、まぁ、皆適当にしてる。」

え、生きてるんだ。電気とか水道とか。
ちょっと意外・・。

そうだ、それなら、もしかしたら。

「じゃあ材料とかもあったりする?」

「ん、一昨日大量に盗ってきた物がまだ残ってたと思うけど・・・もしかして作るつもり?」

「うーん。量にもよるけど、ただずっと居させてもらうだけっていうのも、何か悪いなって思ってたから。」

その言葉にちょっと驚くマチ。

「何だい、こっちが勝手に連れて来てるのに。まぁ止めはしないけど。じゃあ行くよ。」

その言葉と同時に扉を開けて出ていくマチに、礼奈は大人しく付いて行った。


こんなに長い間2人で話し続けたのは、やっぱり初めてかも。

・・・クラスメイトと何が違うんだろう。
何か、遠慮が無い?というか、素、というか。


「何ぼーっとしてんだい?」

いつの間にか立ち止まっていた礼奈にそう声を掛けるマチ。

「あ、ごめん。」

考えるのは後からにしよう。
そう思いながら礼奈はマチに続いて広場へ入っていった。

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