大切なさがしもの
□第2話 初めての気持ち
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居候が決定してからすぐに空いてる部屋に通され、礼奈は簡易ベッドに腰を降ろした。
さっき何人くらいいたっけ?
本当はもっとたくさんいるのかな。
と荷物を取ろうとしてそこで気付いた。
そもそも荷物が何もない・・・。
身一つとは正にこの事なんだろうな、と考えた所でふと思い当たる。
こっちの世界(暫定だけれど)に来た時に、洋服濡れてたっけ・・?
いや、濡れてなかった。
そういえば鞄はどうしたんだろう・・・?
そんな事は世紀の大移動(?)を起こした後にとっては些細な事なのかもしれないが、妙にそこが引っ掛かった。
よくよく考えてみれば、こちらに来た時の状況すらも、私は詳しく知らないんだ・・。
今度フェイタンさんか誰かに聞いてみよう。
そこまで考えた所で、ドアが勢いよく開けられた。
「ちょっとフィン!ノックぐらいしな!」
「おー悪い悪い!レイナ!ちょっと広場に来てくれ!さっき到着してなかった奴らがやっと集まってきてよ。レイナのこと話したら、会いたいってうるさくてな。」
そう言うと、マチとフィンクスの二人は広場へと戻っていった。
・・集まってきてという事は、やっぱりさっきは全員じゃなかったんだ。
それにしても、あの二人はいつもこんな感じなのだろうか。
・・・。
私もあんな風に思った事をすぐ言えるようになる日が来るのかな、と場違いな事を考えながら、礼奈はベッドから立ち上がると二人の後を追った。
礼奈が広場につくと、待ってましたと言わんばかりに全員が礼奈の方へと視線を向ける。
うわ。こんな大人数に見られてるのは初めてかも・・・。
礼奈が緊張していると、読書をしていた団長が読んでいた本を閉じ、立ち上がると口を開いた。
「皆、久しぶりの集合有難う。今回の目的を話す前に、気になっている奴もいることだし、もう知ってる奴もいるが、1人紹介する。
・・・いや、自分でしてもらおうか。」
え・・・。
団長がそう言うと、一旦団長の方に向いていた視線が再度礼奈に集まる。
えっと、どうしよう・・・。
あー。駄目だな。しゃきっとしないと。
この前マチさんにも言われたし・・。
そう思い出しながらチラッとマチさんの方を見ると、力強く頷いてくれた。
そのまま後ろにいたフェイタンさんとも目が合う。
・・・なんか睨まれてる・・・??
自然と顔が強張る。
どうしよう・・・
礼奈が戸惑っていると、フェイタンが少し視線をずらしながら、ぼそっと口を開いた。
「・・・・そんな怯えることないね。さきちゃんと話せてたよ。それに・・・お前はそんな弱くないはずね。」
弱く、ない・・・?
よく意味が分からなかったけれど、何故だか心がほっとする・・・。
他の団員達は驚いた様ににフェイタンを見ていた。
ありがとう、フェイタンさん。
礼奈は意を決したように口を開いた。
「初めまして。水川礼奈です。訳あって、フェイタンさんにここに連れて来られました。何で私がここに・・・この世界?にいるのかもまだ良くわかってないですが、これからお世話になります。宜しくお願いします。・・・・あ、20歳です。」
「そういう事ね。団長が興味持つと思たからワタシが連れてきたよ。」
礼奈とフェイタンがそう言い終えると、表情を変えない者、悩んでいるような顔をしている者、驚いている者、反応は様々だった。
私はどうしたらいいんだろう。
微妙な沈黙に礼奈が戸惑っていると、座っていたマチが立ち上がった。
「私はマチ。さん付いらないから、宜しく。ほら、そういう事で、こっちも自己紹介、でしょ?」
そうマチが言うと、立ち上がる者、礼奈の所まで行く者等、団員達が次々に簡単な自己紹介を始めた。