大切なさがしもの


□ハジマリ
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20××年 4月20日


礼奈は自分の通う高校への道を歩いていた。
目線はちょっとした田舎道のでこぼこした道路。
今日は高校3年年生1学期の4月20日。

人によっては特別な日だけれど、私にとってはその他の日と何ら変わりはない。

今日も今日とて、何かが起きるわけでもなく、普通に過ぎていく。

そんなことを考えながらある程度舗装されているような道を見つめながら歩いていた。

ドン!

何かにぶつかると、バサッと持っていた通学鞄を落とす。

「むぐ・・」
「・・あいたたたた」

下を向いていたのだから当たり前といえば当たり前だが、礼奈は誰かとぶつかってしまった。

礼奈は鼻が当たっただけだが相手は転んでしまったみたいだった。

「いやいやお嬢ちゃんすまんのう・・」
「いえいえ・・」

明らかに
礼奈の方に非があるのに、優しげな顔をした全白髪のおじいさんがそう礼奈に謝る。


礼奈は鼻を押さえる手を放すとおじいさんに手を伸ばそうとしたが、もうすでに立ち上がった後だった。

行き場をなくした手をそのまま鞄に向けて鞄を拾いあげる。

―――あれ、横ポケットに入れてた生徒手帳がない・・・


「ほれほれ、これじゃろ、生徒手帳・・おお、今日お誕生日なんじゃな、お誕生日おめでとう。」

辺りをきょろきょろしていた
礼奈に、落ちた拍子に開いてたページを見ながら、おじいさんは優しくそう言った。

「あ、ありがとうございま・・!?」

ズキッ

頭がずきっとする・・
何でだろう?

「お嬢ちゃん、下を向いて歩いてたようじゃが、何か探し物かい?」

「い、いえ、そういう訳では・・!?」

ズキズキッ

そう否定しようとした
礼奈を、また頭痛が襲った。

頭が・・・頭が痛い・・・!!!

思わず両手で頭を押さえて下を向く。

「お嬢ちゃん・・?大丈夫かい・・・?」

―――っ!

なんか、気持ち悪い・・・!!

そのままおじいさんのことも考えずに、生徒手帳も受け取らないまま
礼奈は学校の方向に走り去っていった。
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