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□かてきょシリーズ
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「できた」

解答用紙を渡すと気だるげに眼鏡をかけて赤ペンを走らせる。

「…ピヨ」

正解。

意味不明な一言も3年も経てばわかってくるものだ。

『プリッ』だとかなり悪い結果。『ピヨ』はよくできました。

まあ、『プピーナ』だけは未だに分からないけれど。

「やった!これなら期末大丈夫かな」

「まあ、いけるじゃろ」

「凄い自信」

「金もらっとるからのぅ」

中間テストの結果を嘆いた母親が連れてきたのは、隣に住む2つ上の先輩だった。

学校ではとても有名で、詐欺師なんて異名を持ってても人気者で、テニスが巧くて。

勉強もしてなさそうなのに成績は良いらしい。

「そうじゃ」

座卓の向かいに座っている仁王先輩が両手を上げて伸びをしたあと何気なく話しかけてきた。

「なに?」

「もうちょい、こっち」

招き寄せるように、くい、と上に向けた人差し指を倒して身を乗り出した仁王先輩に少しドキドキしながら顔を寄せる。

「手、出して」

言われるがままに差し出すとゆっくり指先が触れて絡まって。

ドキドキ。

心臓が破裂しそうだ。

「念、入れちゃるけん」

初めて見る柔らかい笑顔に無意識で息を止めていた。

『ブーッ』

仁王先輩が手に力を込めたとたんに鳴ったけたたましい音に、ビクッと体全体が震える。

「ハハハ」

次いで聞こえてきた笑い声に目を見開くと『どうじゃ?』と何もなかったように聞いてきた。

「…もうやだぁ」

ドキドキしたのに。

嬉しかったのに。

からかわれた事がわかって、驚いたのと腹立たしいのがない交ぜになって涙が滲む。

「偶然カバンに入っとったんじゃ」

「…」

「泣き顔もええけど、これくらいで泣きなさんな」

そう言いながらぐい、と引かれた手。

「期待通りの反応で可愛いぜよ」

握った指を解かれて、薬指にはめられた銀色の輪。

「に、おう、先輩?」

これって。

「お守りと、虫除け」

それから、お前さんは俺へのプレゼント。

そう言って自分の薬指の銀色を見せながら笑った仁王先輩を見て、今度こそ本気で泣いてしまった。


end
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