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□かてきょシリーズ
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「できたー」

言ったとたん解答用紙をさっと取り上げ赤ペンを走らせる。

無言でチェックを付けていく骨ばった長い指にばかり視線がいってしまった。

「見つめても正解にはならないぞ」

ピシャリと厳しい一言がとても悔しい。

「そんなに間違えてないもん!」

「凄い自信だな」

「はいはい。先生早くして」

中間テストの結果を嘆いた母親が連れてきたのは、隣の古武術道場の息子。

お小遣いあげるとでも言われたのだろう。学校では喋りもしない仲なのにこうして夜は先生をしてくれているクラスメートの彼。

本人は一体いつ勉強しているのか不思議なほどテニス漬けなのに成績はいいからイヤミな奴だ。

座卓の向かいに座っている日吉を見ながらぼんやりとしていると教科書で頭を叩かれた。

「なにすんのよ」

ポコッという情けない音のわりに結構痛い。

「終わった」

こっちの話はまったく無視した返事とともに、さっき解いていた問題集が差し出された。

「前よりは多少マシかもな」

「うるさいな」

「俺は事実しか言わない」

「…そりゃ、そうだけど」

結果は思った以上に間違えていて少し落ち込みそうになってきた。

 
「落ち込め。ポカミスばかりだ」

「前から思ってたんだけどさ、」

追い討ちをかける日吉に今日こそ訴えてやると顔を上げたのに、目が合ったとたん言葉に詰まってしまった。

「なんだよ」

サラサラの明るい薄茶の髪とか、切れ長の目とか、テニスしてるはずなのに色白な肌とか。

目の前の日吉が急に気になって喉の奥で何かが膨らんだみたいに声が出ない。

「おい?」

さっきまで見つめていた日吉の手が近づいて額に触れたとたんビクッと大きく震えてしまった。

「熱は無いな…」

ドキドキ、ドキドキ。

日吉が触れたところから熱が広がって胸が壊れそうに苦しい。

「大丈夫か?」

うずくまってしまった私の背中に当てられた手にドキドキが酷くなる。

「何で?心配?」

「…俺が苦しんでる奴見て何とも思わない酷い奴だとでも言うのか」

「だって、追い討ちをかけるような事言って、私、頑張ってるのに」

「本当にバカだな、お前」

恐ろしく失礼な言葉にまでなぜかドキドキする。

「けどまあ、お前の成績が上がったら俺はここに来れないしな」

「え?」

「好きだって言ったんだ。いい加減、気付け馬鹿」

また、頭を叩かれた。

 
今度は痛くなかった。


end
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