2

□貴方に溺れて
1ページ/1ページ

大して話した事もない、あの御方…。私はグロ様の事が好きなのです。    

恥ずかしい話ですが男性に好意を寄せるという事が初ての経験でしたので、どうすべきか分からず、上司の入江様へ相談してみましたが、         

「グロなんて…。あんな男やめときなよ」     

と、一括されてしまいました。そして何故だか白蘭様にも知られていて、   

「君がグロ君をねえ…?」

なんて、にやにやしながら笑われてしまう始末。  

貴方様は隊長。     
私なんてただの諜報員。 
所詮は身分違いという事でしょうか?       

* * * * *

程のそんな出来事を思い
返しながら廊下をフラフラと歩いていると、ドンッと誰かに当たる感触で現実へと引き戻されました。  
 
「おい、何をやっている?貴様は廊下すら真っ直ぐに歩けんのか!」     

…そのお声、間違いありません。         

「も、申し訳ありません!グロ様!」       

そう、そのお声の主は想いを寄せているあの御方。私は恥ずかしくて目を合わせる事すら出来ません。それ私の小さな心臓がトクト
クと音を奏で始める始末。
ああ、お慕いするグロ様を前になんて失態を犯してしまったのでしょう…。  

「何故、貴様は此方を見て謝らんのだ?」     

頭上から聞こえるお声に、ふと顔を上げれば切長の瞳が私を射抜き、躯は熱り、唇が渇いてきました。  

「も、申し訳ありません、でした…」       

頭を上げて震える唇で再度伝えればグロ様は満足そうに口を開き、      

「ふん、やれば出来るじゃないか。謝っているのに何故そんなに顔が赤いのだ?欲情でもしているのか…?
まあいい。次は、もっと
そそる格好と表情で迫るんだな」         

そうニヒルに笑い、私とは
逆方向へ去って行かれました。          
 
残された私は、ただグロ様の後ろ姿を見つめるばかりで。私へと向けられた言葉は、世間では卑下する相手へのモノであり、決して愛を囁いたわけではないというのに。何故だか自惚れている自分がいるのでした。














貴方に溺れて      
(くらくらする視界と心に)(私は酔いしれるばかり) 




fin.         

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ