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□暗部
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キレいに片付いた部屋。

そこで1人の男がもう太陽も真上にくるであろう時間にまだ布団の中に居た。

急な任務が入らない限り、カカシは一日をほとんど寝て過ごす。

あいつが来るまでの時間だが・・・。

ドタドタドタッ――

人の眠りを妨げる行為に何の悪意もない。

「カカシ先輩っ!おはようございます!!」

テンゾウがいつもと変わらず好い笑顔で俺の顔をのぞきこんできた。

「・・・おはよう。テンゾウ」

そして、俺はしぶしぶ起きることになるのだ。

「先輩、せっかくの休日にいったいいつまで寝るつもりなんですか」

「あぁ〜〜うん」

俺がまだ眠気眼で受け答えしていると・・・

「俺なんて今から任務なのに」

「あぁ、そうなんだ」

ぶすっとしているテンゾウにあえて無愛想に答えてみる。

「しかも、しばらく帰れそうにないんですよね」

「そうなの?」


寂しいなんて言わないよ・・・

「ねぇ、カカシ先輩」

「ん・・・なぁに?」

「俺としばらく会えないの・・・寂しい?」

「・・・テンゾウ?」

これまでだってしばらく会えないことは何度かあった。

だが、こんなことを聞いてきたのは初めてだった。

だけど、その時はあんまり深く考えなかったんだ・・・。

「ほら、バカ言ってないで早く行った行った」

「・・・・先輩っ!!」

「え・・・っ!?」

テンゾウは急に俺にキスしてきた。

俺はあまりに急だったので思考が追いつかず、ただやられるがままだった。

長い口づけのあと、テンゾウは言った。

「一つお願いがあります」

「は・・・?」

「この任務から帰って来たら、カカシ先輩からキスしてくれませんか?」

「な・・・なんだとぉ〜」

あまりに唐突な話に俺は空いた口がふさがらなかった。

確かに、俺からキスしたことは今まで一度もない。

それをこいつはそんなに根に持っていたのか。

「いけませんか?!」

そいつの真剣な眼を見てしまったら、断ることなんてできない。

「いいよ。俺がキスしてあげる。だから頑張って行っておいで」

その俺の言葉にテンゾウの顔がパァ〜っと明るくなった。

「あっありがとうございます!」

テンゾウはすくっと立ち上がった。

「約束ですよ」

「うん」

「それじゃぁ、行ってきます!!」

そう言ってテンゾウは出て行った。

満面の笑みを俺に向けて・・・

それが、俺の見たテンゾウの最後の姿だった。



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