+ 桜 +

□想いを君に
2ページ/7ページ



なのに、俺は…俺って奴は…!!

あっさり忘れちまうなんて!

馬鹿か?脳内手帳は山崎並か?!

切腹して詫びても足りゃしねぇっ!!


だが、自分を責めている時間はない。

何としても、二人きりの誕生日を手に入れなければ。

残された時間は、一週間以上ある。

順調に仕事を片付ければ、10日を非番に出来るかもしれない。

希望の光りが見えた。

が、その前に総悟だ。

コイツにだけは知られちゃいけねぇ。

絶対に邪魔される。

いや、邪魔されるだけならまだいい。

忘れていた事を銀時に言い付けられたりしたら……。


『土方君にとって、俺の誕生日なんてそんなモンなんだね。いいよ、沖田君に祝ってもらうから』


なんて、アイツは絶対に言う!
そんなのっ、そんなの絶対嫌だァァァッ!!


最近になって漸く恋人らしい関係になったというのに、亀裂が入ること間違いない。


『調度良い機会だし、もう会わないでおこうよ。さよなら。行こう、沖田君』


やめろーっ!
そんな事、言わないでくれぇぇぇッ!!


「どうした、トシ?泣いてるのか?」


近藤さんの声に我に返れば、耳元に総悟。


「土方君、さいて……あ、涙目」


「……そぉぉごぉぉぉッ!!」


銀時の声色を使って、恐ろしい囁きをしていた総悟に手刀を振り落とす。

が、軽い身の熟しで避けられた上、迷惑そうな顔で見下ろされる。


「おっと、土方さん。八つ当たりはやめてくだせィ」


「八つ当たりじゃねぇだろ!耳元で妙な事、言ってんじゃねぇっ!」


怒鳴りつけても、どこ吹く風。

悪びれる様子もない。

ホント、腹立つ。


「ヘィヘィ、すんませんした〜。じゃあ俺、旦那の誕生日プレゼント選びに行くんで、今日の見回りお願いしま〜す」


「なっ!?待て、総悟ッ!!」


追いかけようと廊下に出た時には、既にその姿はない。


「ほんっっと、逃げ足だけは速ぇなッ!」


叫びが人気のない廊下に木霊した。

今日という日ほど、総悟を憎いと思った日はない。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ