+ 桜 +

□雨 音 3 【†】完結
2ページ/10ページ



行灯の柔らかな光が夢と現を織り交ぜる。

朧げな視界に黒髪が揺れる。

夢から醒める俺を待っていてくれるのは、

今も昔も…晋助、お前なんだな。


「…ずっと…そばに…?」


俺が辛い時は、必ず側にいてくれるな。


もう、大丈夫だからと笑ってみせる。


ごめん、そんなに心配そうな顔すんなよ。


そっと手を伸ばし、口づける。

少し冷たい唇が心地好い。


「し…ん…すけ…」


感謝しているよ。

あれから永い時が流れた今も、雨に幻を見るけれど。

そんな時は、あの日のお前の言葉が俺を救ってくれるんだ。

『ありがとう』なんて今の俺には、照れ臭くて言えない。

だけど勘の鋭いお前なら、言わなくてもわかってると少し照れ臭そうに唇を歪めて笑うんだろうな。

そんな顔を想像し、見下ろす男に微笑んだ。


その微笑みごと唇を奪われる。

息もつかせないほどの荒々しい口づけ。

熱い舌使いに堪らず、背中にまわした手に力を込める。

首筋に這わされた唇。

甘い痛みが走る。


「あっ…」


軽く仰け反ると、愛おしむように指が銀髪を絡めた。


「…晋助」


もう一度とキスをねだる。


窓を叩く雨音。

橙の灯に揺れる影。

絡み合う二人の吐息。


唇を合わせたまま、主張し始めた中心をゆるゆると扱かれる。


「…んっ…」


先走りがクチュクチュといやらしい水音を奏でる。


強弱をつけて攻め立てる手淫に、堪らず限界が訪れた。


「やぁっ!…んッ!…アァッ!!」


ドクドクと溢れる白濁を指に絡め、晋助が笑う。

辛そうな表情に見えたのは、影のせいか。

大きく足を開かされ、濡れた後ろにゆっくりと指が入り込む。


「ッ!」


その圧力に全身が戦慄く。

躯の中を指が踊る。


「んぁ…っ!ハァッ、んッ!」


指先が、ある一点を掠めた。


「ッ!く、あぁっ!!」


甘い刺激に躯がビクリと跳ねる。

それに気を良くしたように、悪戯な指はそこばかりを攻める。

口から零れるのは、唾液と嬌声。

一度精を吐き出し、萎えかけた中心に再び熱が集まる。

絶え間無く指から与えられる快楽。

なのに、体はそれ以上の享楽を求めようとする。

まだ足りないと、腰が揺れる。


「やッ!…あ…もぅっ!いれっ…て!!」


懇願に指が抜かれ、代わりに比べものにならない圧力がゆっくりと侵入する。


「ハァッ! アァァアッ!!」


熱の楔を咥え込んだ体が喜びに大きく仰け反る。

強く抱きしめられ、聞こえた囁き。


「……俺の…もんになれよ…」


何、言ってんだよ。

あの日から俺は、お前のもんじゃねぇか。


サラリとした黒髪を撫で、微笑む。


「俺は、ずっとお前のだよ…」


パタリと胸に落ちた滴は、涙だったのだろうか。

激しく動き出した熱に浮され、確かめる事はできなかった。


熱くほてる躯。

狂おしいリズム。

押し寄せる快楽の波。


「しん…アァッ!す…ンッ!!」

名前を呼ぼうとすればするほど、激しく腰を打ち付ける。


「銀…時! 銀時っ!!」


「ハアッ!ッン、あぁぁッ!!」

体中を熱が駆け巡る。

ドクリと体の奥に熱が注ぎ込まれ、それと同時に自分も精を吐き出した。

緩やかに意識が落ちていく中、聞こえた悲痛な声。


「俺を…見てくれよ…」


それもまた、降り続く雨の幻聴だったのだろうか。

 
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ