+ 桜 +
□2月14日の昼下がり 【†】
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やがてカカオの甘い香りが部屋を包み始める。
どんな様子か覗きに行くか考えていると、鍋をクルクルと掻き混ぜながら桂が戻ってきた。
「待たせたな。さて、食べるか」
テーブルに置かれた鍋からは、トロトロに溶けたチョコレートが魅惑的な香りを振り撒いている。
良い匂いだなと顔を近づけると、
ベタッ
顔に塗られた。
「ちょっ、なにしちゃってんの?お前」
予想外の行動に愕然とする俺に、桂は淡々とチョコを塗り続ける。
「大丈夫だ。熱くないだろう?人肌に冷ましたからな」
「そーゆう事、言ってんじゃねぇ!」
「何をそんなに怒っているのだ。俺が作ったチョコと銀時を一緒に食べると最初から言ったではないか」
「言ってねえっ!『チョコを』が『銀時を』に変わってるからね、それっ!」
喚く俺をあっさり無視して
「ハッピーバレンタインだ、銀時」
頬に付けたチョコを舐めとる。
全然ハッピーじゃねぇし、人の話を聞けっての。
「マッジッで、やめろ!」
調子に乗って、そのまま押し倒そうとする桂を必死に押し返していると、何処からともなく獣の声が聞こえてきた。
「ククッ、楽しそうな事してんじゃねぇか」
スッと寝室の襖が開き、現れたのは……高杉。
どこにいた――ッ!
つか、何時からいた―――ッ!
「桂ァ、俺も交ぜろや」
「仕様の無い奴だな。仲間に入れてやろう」
俺を無視して進む会話に気を取られる。
その隙を見逃さなかった桂が、あっという間に俺を羽交い締めにする。
「あぁっ!コノヤロッ、離せっ」
振り解こうと試みるが、がっしりとロックされて動けない。
諦めて違う手をと大人しくすれば、目前の獣と耳元の変態から聞こえる不吉な笑い声。
……馬鹿二人が、結託…した。
こうなったらどうにもならない事は、経験上よく判っている。
が、諦めて受け入れてしまえる程、自分も素直ではない。
「久しぶりだな、銀時ィ。お前のチョコ、味わせてもらうぜ」
胸元にまで垂れたチョコを猫の様に高杉がチロチロと舐め始める。
腹を蹴り飛ばしてやろうと構えた瞬間、チュッと乳首を吸われ思わず声が出た。
「ンァッ!」
それに気を良くした高杉が執拗にそこばかり攻め始める。
「……やめっ…ンッ…」
押さえようとしても甘い吐息が零れだす。
流石、元カレ。
俺の弱いポイントを押さえてやがる。
「銀時、こっちにも集中しろ」
チョコの欠片を口に押し込まれ、舌の上で溶け出したそれを残らず奪うように桂が舌を絡ませる。
「ンンッ……ハァ…」
ヤバイ…気持ち……いい…。
高杉から与えられる刺激と合わされた唇から漏れる水音に意識が朦朧となる。
なんでこんなことになったんだろう。
ジャンプ読んでただけなのに…。
高杉に下着ごとパンツを脱がされながら、ぼんやりとそんな事を思った。