+ 椿 +

□銀色の宝物 1
1ページ/4ページ



 この夏1番の暑さになります。

今朝、結野アナが告げた気温は

午後3時を過ぎても下がらない。



― 放課後の教室 ―


学級日誌を書いていると、もう一人の日直が戻ってきた。

「お待たせ〜。ほいっ、ポカリ銀さんスペシャルでーす」

ポンと手渡されたペットボトルは、よく冷えている。

が、それ以外なんの変哲も無いポカリ。


「…どのへんがスペシャル?」


「コンビニで買ってきました〜」


机から団扇を引っ張り出し、パタパタと扇ぎ始める。

学校から1番近いコンビニは徒歩10分。

コイツはバス通学だから当然、歩いて行ったのだろう。

この炎天下の中。

遅いと思ったら、そんな所まで行っていたのか。


「あー、そりゃスペシャルだわ。つか、学校の自販機はどーした?」


それが、ヒドイ話なんだよぉと瞳を潤ませる。

「入替え中でさ、どーすっかって思ってたら沖田君登場よ。んで、チャリに乗っけてもらったんだけど………コンビニ出たら沖田君、消えてた」


冗談だと思って待ってたんだけどさぁ、見てコレと差し出された携帯を覗いてみる。


件名【レディス4始まるんで】
本文【なし】


さすが、S王子。

放置プレイか。

「俺、先輩なのにヒドくね?しょーがないから歩いたんだけど、すげー暑いわ」

  パタパタ ゴクゴク ゴクゴク


「災難だったな…で、なんでポカリ飲んでんだっ!」

「喉渇いたんだもん。俺のもう無いし…怒ってる?」

不安そうに俺を見る。

そんな顔されたら、怒れるわけがない。

「怒んねーよ。つか、許可をとれ」

どうせなら間接キスが楽しめるくらい、残してくれ。

空になったボトルが恨めしい。

 
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ