BASARA・噺
□好きの理由(わけ)
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−綱殿、オレのドコが好き?教えてvV−
突然の訪問。突然の質問。
いつもの様に誤魔化しても良かったのだが、稀に見ない真面目な顔だったので・・・。
真面目に考えてみた
−ドコがスキ?−
期待と不安が入り混じった表情を浮かべこちらの様子を黙って伺っている
「表情がな・・」
「うんっ!」
「豊かで見ているだけで嬉しくなる」
「エヘヘ〜。他にもある?」
照れ笑いしたので終わりかと思ったらまだ続くのか・・・。
ん〜・・・
「元気がすぎて心配な時も沢山あるが・・・」
「うんっ」
次に続く言葉に目を輝かせて頷く
「お前が元気にしていると、俺も、周りも元気を分けてもらっている。有難いと思う」
「へぇ・・・」
そんなもん?と不思議そうに呟く少年に無性に愛おしさを感じた
「・・・お前と一緒に居ると・・・」
「ん?」 キョトンとした顔で見上げる顔が、まだ幼さを映し出す
−あぁ・・−
「お前と一緒だと、俺は幸せだよ・・・」
「・・・・・」
ボッ カァァァ
? 照れているのか?
「綱殿、恥ずかしいなぁ・・・」
「? そうか?本当の事だからな。別に気にならん」
俺の着物の袂を少しだけ掴み、顔を真っ赤にして俯きながらも、上目遣いでこちらを見ている。非常に愛らしい。
これほど歳が離れていなければ。
御仕えする当主の従兄弟などでなければ。
もしかしたら、一線を越えてしまっていたかも知れない・・・。心の奥でそう思った。
決して口には出せないけれど。
「幼い時から変わらんな」
「? 何が?」
「いつだって愛おしいと思っている」
「・・・・」
カァァァァ
赤かった顔を更に真っ赤に染め急に立ち上がったと思うと
「恥ずかしいっ!」と叫び部屋を出て行こうとする
フッと思い立ち呼び止める
「お前は俺のドコが良いんだ?」
「へっ?」
至極不思議そうに振り向き、一瞬止まる。が、すぐにニカッと笑い両手を大きく広げて彼は言った
「ぜ〜んぶだよっvV」
先程出て行こうと開けた襖の間から光が入り込み、伊達にしては少しだけ色素の薄い髪が透けて眩しく光った
あぁ ずっと前。
コレがまだ小さくて、“時宗丸”と呼ばれていた頃にも同じ事を言われた気がする
―何故俺に懐くのか・・・理解し難い―
そう呟いた言葉に、胡坐を掻いた上に座っていた子供は満面の笑みで見上げて言った
―だって、綱殿のぜ〜んぶが大好きなんだもんっ!―
「・・っな殿?・・・綱殿っ?」
知らず、物思いに耽っていたらしい
「どうしたの?オレ変な事言った?」
いつの間にか目の前に戻ってきていた少年の両脇に手を差し入れ引き寄せると、膝に抱え上げる
「なに?抱っこしてくれるの?」
もうすぐ18になろうかというのに、未だに抱っこ等とせがまれる事も多々あるが、自分にだけなら良いだろう
「どれ、少しは成長したか・・・」と座ったまま持ち上げる
「綱殿力持ち〜vV」
自由な自分の手を前に出し、抱きついてくる。一体いつまで子供でいるつもりなのか・・・まぁ、他できちんとしているなら良いのだが。
軽く溜め息をつくと、少年はこちらの顔を覗き込み、子猫の様に首を傾げた
「他のにせがむなよ、俺だけにしておけ」と伝える
「? なに?抱っこの事?」と不思議そうに目を開いて、向かい合ったまま膝におさまっている
あぁ・・・あぁ、どうかこの命が尽きる、今わの際まで。
どうか彼が自分の全部を好きでいてくれますように・・・。
ただ、そう願うばかり