BASARA・噺

□年の差メロドラマ
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年が明けてすぐ。まだ雪深い奥州大森城に一人の若者が城主・伊達実元に剣術指南として呼ばれた。

鬼庭 綱元

主に兵や一定以上の身分の若者に教える為だ。

(俺もまだ22なんだが…)
多少引っ掛かりはしたが、まぁこの若さでは大抜擢だ。それにたいした面倒な仕事な訳でもない。寧ろ楽だ。

(毎日こんなんで良いのだろうか…)

と、不安さえ感じるくらいだ。

それがある日、ほんの少しだけ状況が変わった。

いつもの様に剣術の稽古をつけていると視線を感じた。最初は気にしなかったが、それはその日から毎日続いた。

(誰なんだ?)特に殺気などは感じない。忍等ではない

気になると稽古にも集中出来なくなってきた。


そしてついに見付けた。不意にチラッと視界に入った

子供だった。部屋の襖を少しだけ開けて。

(確か…時宗丸…様?)

この城の主、実元様の嫡男。歳の頃は、数えで三つだったか…遅くに出来た嫡男の為か、大層可愛がられているとか。

 ただただ、ジィッとこちらを見詰めている。


気になって休憩に入り、遠回りをしてその部屋に近付いた。


キョロキョロして、何か?を探しているように外を見ている。


(?)


急に襖ギリギリまで身を乗り出して


「…居ない…ょ?」
小さな小さな声がした


(誰かを探しているのか?)


だが、先程の場から居なくなった者等居ない。皆その場で休憩している。自分を除いては。


(俺を探しているのか?)

声を掛けるべきが悩んでいると、視線を感じたのか急にその子が上を見上げた。バチッと目が合った


 かぁぁぁぁ

 ?

一気に耳まで顔を真っ赤にしたかと思うと、パンッ!と勢い良く襖が閉められた。

(…愛らしい…)

その表情に一瞬にして胸が鷲掴みになった。特に稚児が好きな訳でも男が好きな訳でもなく、どちらかと言われたら絶対女の方が良い。自分には嫁も居る。しかし先程の顔…当たり前だが幼さのある顔立ちに、大きな瞳。栗毛色の髪を高い位置で一つに結っていた。


「……あの、鬼庭と申します。お開けしても宜しいか?」

意を決して先程閉まった襖の向こうに声を掛けた。


「………ぅ」

「? 開けます」

「っ!」
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