BASARA・噺

□年の差ハリケーン
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「ねぇ、綱殿〜。お腹減ったぁ!団子食べたい〜!」

城に呼ばれた成実と使いを終え、帰る途中の俺。先を急いでいるのだ。政宗様が待っておられるに違いない。なのに…なのに何故こいつはこうなんだ…。団子屋の前で駄々をこねる!

深く溜息をにつき、肩越しに振り返ると団子屋の前で、ふて腐れた顔で立っている。いつもの事なのだ…

“甘やかしてはならんっ”

知らんぷりをして城への道を歩き始める

「う゛っ〜!綱殿〜!」

“我慢だ、ここで振り返ったら…”

バタンッ ?

「うわぁぁぁぁん…!」

ビクッ

突然の号泣に驚いて振り向く…

「…………ぁ」

成実は団子屋の前で寝転がり、手足をバタバタさせているのが見える。まるで駄々っ子だ…周りに人だかりも出来ている

「なっ!」

瞬間、自分でも驚くほどの早さで成実を担ぎ上げ、城に向かって走っていた


「あっ!団子!」耳元で成実が騒いでいたが、そんな事お構いなしで城門まで走り着いた。門番が大層驚いた様子で理由を尋ねるが、「なんでもない…」とだけ伝え、成実を担いだまま城に宛がわれた自室に戻った

「団子…食べたかった…」

まだ言うかっ!この俺が。鬼庭綱元が、いい歳して団子屋の前で駄々をこねたー、とうに元服の済んでいる男を担いで城まで走ってきたのだぞっ。いい恥さらしだ!

怒りを抑え拳を握りしめ、“餓鬼がっ!いつまで子供のつもりだっ”と心の中で叫んだ

成実は気付かず、ケロッとして「あっ、梵の所に行かなきゃ」等と言っている。そうだ、自分も使いに出た帰りだった…報告に伺わねば。


部屋を出ようとすると、成実は前に立ちはだかった。
「なんだ?」この期に及んでまた団子か?!それとも汁粉か?!心の中で悪態をついていると、突然ポスッと成実が抱き着いてきて顔だけ上に上げ、ニカッと笑ったかと思うと

「えへへっ、綱殿の匂いがする。久し振りだね」

「……」

今まで苛々していたのが嘘の様に消えていった。

そうだ。普段はそれぞれの治める城に居ての執務が主な為、こうして会うのは何ヶ月振りだろう

「…そうだな、しばらく振りだな」

「梵の用事すんだら、今日は一緒に居られる?」

愛らしい…(欲目)

人前や道などでなければ、甘えられるのも愛おしく感じる。

「そうだな、用が済めばな…」

「ヤッター!」

いつまでも子供の様だ…と困りながらも、甘やかしてしまう。三分の一位は自分の責任だ。後は若き奥州の当主とその守役の責任だろう。要は三人でついつい甘やかしてしまうのだ。

軽く溜息をつき自分の胸元に顔を埋める少年の頭を撫でた

「さぁ、早く用を済ませるぞ」

「は〜い♪」

早目に用事を済ませ一緒に団子屋でも行くか。それとも部屋でずっと抱きしめて話でもしようか。どちらにせよ、二人で過ごせるなら。それはきっと幸せな時間…

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