BASARA・噺

□天然ラヴァーズ
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 『ねぇねぇ、綱殿って何が好きかなぁ?』


ある午前中の一日。お茶を飲みながらの歓談の最中、いつも元気な伊達成実が溜め息混じりに従兄弟とその守役に尋ねた。


「「はぁ〜?」」


二人のハモリはごもっとも。尋ねた本人が一番長く時間を過ごしているのだから。

「そんなの今更だろ?お前の方が分かるだろ?」いっつも一緒なんだから・・・

『もう〜!!』

冷静な従兄弟の言葉を遮り、癇癪を起こす

「それが分からないから聞いてるんだよ!」

はいはい・・と政宗に窘められ落ち着いたかと思えば、急にガックリと肩を落とした

「いっつも俺が一方的に話しててさ。綱殿聞いてるだけだもん・・・。」

「ふ〜ん、大体なんで今更好きな物なんか知りたいんだ?」

政宗の急な質問に成実は驚いたと思うと俯き顔を赤らめた。

「それはさ・・・もうすぐ綱殿・・誕生日だから・・・」

いつもと違う小さな声で呟く従兄弟に胸がキュンとなった

(我が従兄弟ながらキュートだ)などと考えていると小十郎が口火を切った

「そういう事は、やはりそれと無く本人に聞くのが一番では?」

と、もっともらしい事を言った。尋ねた本人も実は半分そう考えてはいたのだ。

「ん〜、やっぱりかぁ・・・仕方ない、綱殿に直接・・・」

「俺がどうかしたか?」

いきなり噂の本人が現れたのだから三人とも驚いた。成実なんか、まるで悪巧みを聞かれたかのようにどもる始末。

「っ綱殿っ;」

「おぅ、綱元タイムリー♪ほら、早く聞いちまえよ」

「分かってるよ;」

さながら、学生の告白の如く。

「一体なんなんだ?」一人訳の分からない綱元は首を傾げ訝しげる

「あのね、綱殿の好きな物って何?」

「は?好きなもの?」

突然聞かれても・・・と思ったが真剣に考える。

「・・・・・・」

「・・・・・・」 ドキドキ

長い沈黙の後綱元が出した答え


「・・茶漬けかな」

「はぁぁ?」

やや拍子抜け。誕生日の贈り物に「茶漬け」は無いだろう!っと心の中で突っ込むが本人は「好きなもの」としか聞かれていないのだから、勘違いしても仕方が無い。気を取り直して聞き直す

「いや、そうじゃなくて・・・」
「ずんだ餅も好きだぞ」
『違うのっ!!』

背後で意地の悪い従兄弟が、床を叩いて大笑いしているのが視界の端に映ったが、取り合えずココは聞き流す

(梵・・後で覚えてろよ)

「食べ物じゃなくて〜。ほら〜、あるでしょ?」

「月見酒は好きだな」
ちが〜うっ!

「兵の訓練・・・」
ダメ〜!!

「馬で遠乗りなんかも好きだ」
そうじゃなくて〜!(泣)

「盆栽なんかも最近は良いなぁと・・・」
だぁぁ〜!

「囲碁や将棋も好きだぞ」
あぁぁぁぁ!!

最後には息も荒く、半泣きの成実と、さっきまで大爆笑していた政宗が、不憫な従兄弟に哀れみの目を向けていた。

聞かれている本人、綱元は好きな物を言えと言われ並べ立てたが全て却下。一体何の遊びを始めてのかと思いかけたその時、ハッとひらめいた

「あぁ、そういう事か・・」

『エッ?!』内緒で用意しようと思ってたのにバレた?

内心ドキドキしていると、不意に綱元の手が成実の頭を撫でた

「ちゃんと・・・」

「?」

「ちゃんとお前の事も好きだぞ」

『へっ?』

「「・・・・・」」傍で見ていた政宗と小十郎は唖然とした。ココまで天然?だとは・・・

黙り込む成実に綱元は不思議そうに尋ねた

「なんだ?そう言って欲しかったから聞いてたんじゃなかったのか?」

「っち、違っ!いや・・・それは凄く嬉しいけど・・・」

下を向き顔を赤らめ恥じる姿のなんと愛らしい事か。
綱元は満足げに

「ん、それは良かった」と伝えた

(何だよ、こっちが恥ずかしいぞ)政宗は段々馬鹿らしくなってきた

『でも、違うの〜!!!』ダダダダダダダッ

「なっ」

突然叫んで部屋を出て、廊下を走る成実を追い掛け、皆廊下に出た

「ちょっ、待っ!」えっ?何故?と落ち込み綱元に後ろから政宗が声を掛けた

「ただの照れ隠しだろ」

ピタッ  止まった

? ?

廊下の向こう側まで走ったと思ったら急に立ち止まり、真っ赤な顔のまま振り返ったと思うと、成実は大きく息を吸い込み叫んだ

『オレも綱殿大好きぃ〜!!』

ビクッ

「「「・・・・・・・・」」」

「あ・・・」

「今のは城中に響き渡ったな」

「はぃ・・・」

しばし呆然としていた綱元だったが、ハッと我に返った

(城中にだと?)

「待っ!恥さらしではないかっ!」

『大好きvV』

「あははははは」

『綱殿 大好きぃ♪』

『『止めんかぁぁ!!』』

歳の差バカップルのじゃれ合いと若き筆頭の大爆笑が響き渡った頃には、お天道様が天辺に昇りきっていた

「たまにはこんな平和な日があっても良いのかもな」と一人しみじみする小十郎だった。




*オチなくて御免なさい;夏に出した本の漫画を小説にしてみました。下書き無かったので、読みづらいかも知れませんが。お許し下さい。

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