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□憧れてました。恋になってしまうほどに。
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憧れてました。

ずっとずっと、貴女にきっと、憧れてたんです。


だけどこの得も言えぬ感情は、決して¨憧れ¨と程良く近く、だけど根本が相違
で反発し合っていたんです。
この感情を、ただストレートに応えるのなら…






憧れてました。





季節は冬。
周りは人の吐く温かい息により白く濁りを催していた。
寒空の下で唯一完璧なる防寒対策が出来ないスカートがこんなにも恨めしいと感
じたことなんぞあっただろうか、いやいや、それだったら態々短くスカートを折
り跡が付いてでも短いままを貫き通したいという信念に素直にこちらが折れれば
いいのだが、お生憎長いスカートを態々はく趣味もこちら側にはないのだ。
だからといって靴下でどうにかしようとしようものなら先に靴下がダメになると
いうことは寧ろ実証済みなのでそんな考えは等の昔に却下された。



「あぁ……さっむ…」



この寒さの中、果たして神田は風邪なんぞ引かないだろうか。
きっと指定冬服だけを着こなして、碌に防寒対策すらも考えていないんだろうな
と思うとふっ、と口元がつり上がる。
いけない、とは分かっているが、最悪の場合が到来するのなら全裸になって神田
と熱々なことをしてそれで神田をがでろでろに溶け出してしまうまで温めてあげ
たい。

女だって性欲に従順な生き物だと思う。
好きな人なんぞ十人十色多種多様。
それをどういう風に受け止め流すかによってその人が想いを寄せている者に何を
望んでいるのかがおおよそ検討も付くものだ、そして、何から順番通りに事を進
めるかが一番重要な鍵と化す。




女が女を好きになる。
異例だろうがなんだろうが好きなのだから仕方がない。
あがく時期は十二分に与えられていたし、諦めようものならあっさり切り捨てを
行っていただろうに、それをせずに選んだ選択肢は順番その一¨想いを伝える¨
ことだった。
だから今僕は愛してやまない大好き大好きな彼女を後ろから思いきり抱き締めて
あげることが出来るのだ、誰がその辺の男共に渡すものか。




「ぁ…………居た…」


想像通りの格好の彼女に一層の愛しさが込みあげ、寒い中での体を温める方法、
と軽い言い訳を考えてただ目的人物目がけて全力疾走した。
無論歩いている速度と走る速度の違いは一目瞭然も妥当で、僕のほうは至って息
上がりもそこそこの状態で彼女の姿にたどり着く。

おはようの代わりに後ろからがばりと抱きつく。
こればかりは神田がどんなに嫌がろうとやめることはしないもの。抱き心地が最
高なのは、神田の体温を直に感じられる瞬間だから




「かん、だ!!おはよー、ござい、ます!!!」

「…………お前……朝から騒がしい……っ!」



恥ずかしさの頂点到達までまだまだといったところなんだろうけど、それでも赤
くその頬を染めさせている人物こそ自分自身だと思うと暫くはこちらの頬の歪み
を治すことは出来ない。



赤くなる鼻で話は進む


「神田、、今日はね、」




これ、と渡すのは彼女の事だけを考え彼女のみに使用してもらいたいがために作
った防寒着の一種
本当は買うほうが簡単だったのだろうけど、愛の篭らない機械に作られたソレで
彼女を温めてあげることなんぞ出来るわけがない。
だから、一編み一編み丹誠を込めたコレのほうが絶対効果も威力も抜群だと思っ
た。




「まふらー…?」

「うん。神田ってばいつも防寒対策しないでしょう? これならきっと温かいと思
いますし、僕が編んだマフラーだから愛も一緒に編み込まれて、、神田と一心同
体になれるから」



ね?と小首を掻いた途端に赤くなり、それが丁度熟した果実に似ていたものだか
ら思わず耳たぶに噛みついた。
温かい口内では耳は冷たいらしく、今こそマフラーの活用時ではないかと言わん
ばかりに神田の首辺りをぐるぐりだぼだぼにさせ、鼻も耳もすっぽり収まった可
愛らしいその状態を確認するとご機嫌顔で笑みを見せた。



「…モヤシの匂いがする……」

「そりゃあ、僕がずっと頑張って編んだ代物ですから」



僕の匂いが付いていて当たり前、等続くはずだったのだが、、たった五文字、い
や、聞こえていなかったらきっと一、二文字にしか聞こえなかったであろう言葉
に、今度こそ破面しただらしない表情を焙り出してしまった。












『ありがとう』


あぁ、もう。
これだから、僕はキミを愛すという選択肢を選んだんだ。

確かに始めのスタート位置は憧れだったのかもしれないけど、終わり良ければ全
て良し。

…なーんて、ね。


憧れてました。
(恋になってしまうほどに。)




(じゃあさ、お礼はマフラーに掛った分エッチしましょうよ!!)

(どんだけ掛けたんだよマフラーに!!)

(嘘。 ね、キスしたいな。)

(…今、、学校登校中……)




END

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