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□女の子同士の特権でしょう?
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『女の子同士の特権でしょう?』



「神っ田先っぱぁーーいッ!!!!」
昼休みになるといつものように先輩の教室に駆け出す。
「せ・ん・ぱーい!!!!」

「うっるせぇ!!」
教室の扉を入ると拳が目の前に飛んできた。
それを簡単に避ける。
「やあやあ、酷いな先輩」
ギュ、と拳をほどいて手を握る。
「可愛い可愛い後輩が1日振りに逢いにきたって言うのに…うわっと!!」

次には足だ。軽々ジャンプして避けた。ひらりとスカートが舞う。
しょうがないなぁと握った掌にキスをする。

「っお前、こんなとこで何しやがる!!」

ゴツッ

迂闊だった。もう片方の拳が脳天に降ってきた。
「痛いですよ〜」
「…飯は」
突然昼ご飯の催促。
「あ、ありますあります。手作りですよ〜屋上、行きましょう?」
「行くか」
それだけの応答でもニッコリ笑って手を引いた。
「手を繋ぐなっ!!」
「良いじゃないですかぁ〜」
「お前本当に手ぇ繋ぎたがるな。何でだよ…」
「先輩が大好きだからですよ」
笑った。
先輩を困らせたかな、と思った。





ここは女子しかいない、いわゆる女子高。
神田先輩は、剣道部の2つ上の先輩。
僕は弓道部の一部員。
弓道場と剣道場が近いために、知り合った。

毎日聞こえる先輩の声。毎朝早くから練習している先輩の姿。
僕は、そんな神田先輩に惚れてしまった。



女子高だから僕らは勿論女だ。
だけど僕も先輩も一人称は男のもの。何でかと言うと、僕は帰国子女で何か‘僕’が定着しちゃったから。
先輩は、家柄の所為。親は剣道の偉い先生なんだそうだ。
男同然に育てられた──けど案外本人は乙女チックだったりする(云ったら殺されかねないけど)。



だから僕が先輩を好きだなんて極秘だ。
神田先輩だってきっと男が好きになるんだろうから(今はまだ男っ気ゼロだけど)。
ただ、1人、ラビだけは違うのだけれど。
ラビは唯一、僕の性癖を知っているうえで僕を認めてくれている人だ。

ああ、ラビも一人称は‘オレ’だった。
この事情はよく知らないけれど。
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