第5巻マ
□第137話 少年剣士!
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バキッ!!
「おごぉ〜〜〜!!」
「目が覚めた?」
セフィリアがいきなりダイナマイトパンチで私を起こす。
「あれで目を覚まさない人間なんているわけないだろう。」
「それじゃあ、早く食卓へ来なさい。」
セフィリアはさっさと部屋を出ていく。
私はその後を追って食卓へ向かう。
「おはよう、エバンス。行くわよ。」
挨拶から行動の切り替えが早過ぎるぞ。
私はいつものようにニーナに引きずられて家の外に出る。
「おはようございます、エバンスさん。
すみません、今日は情報がないのですよ。」
「そうですか、仕方ありませんね。」
私とニーナは家に戻る。
「エバンスさん、お邪魔しています。」
家に帰るとアリスさんが来ていた。
「アリスさん、おひしゃしぶりだす。」
今のはもちろんニーナだ。いい加減慣れろよ。
「ん?アリスさん、こちらの少年は?」
「ああ、この子はアレックス。私に弟子入り志願をしてきたのだけど私は弟子を取らない主義なの。だからエバンスさん、お願いね。」
押し付けるな!!ここは断固拒否するべきだな。
「カッコイイ〜。私はアシュリーです。これから宜しくお願いします。」
アシュリーはアレックスを相当気に入ったようだ。
「それじゃあ、家はどうしようかしら?」
私の意思とは裏腹に話はどんどん先にすすんでいる。
「ちょっと待ってください。」
今まで静かにしていたアレックスが口を開く。
「僕は神速のアリスさんの弟子になりたいのです。こんな馬鹿っぽい人の弟子になるつもりはありません。」
私の心は海よりも深く傷ついたぞ。
「アレックスさん、ハンターさんを馬鹿っぽいと言ってはいけません。」
フローラ、ありがとう。君だけだ。私をフォローしてくれるのは。
「ハンターさんは馬鹿っぽいではなく馬鹿なのです。」
もう立ち直れないかも・・・・・。
「でも、ハンターとしての実力や指導力はアリスさんも認めているのよ。」
「・・・・・わかりました。では僕と勝負してください。」
「面白そうじゃない。徹底的にやりましょう。」
私達は朝食を済ませて修業の準備をする。
「それじゃあ、まずは基礎体力の修業よ。」
勝負を挑まれた私だが私自身はあまり勝負にこだわっていない。しかしアレックスはずっと私を睨んでいる。
「それでは始め。」
アリスさんの号令で基礎体力の修業が始まる。
もちろんアリスさんが人間離れした早さで一番最初に終える。次にマリー、セフィリア。私とニーナが続く。
アレックスはと言うと・・・・・。
「おえっ!!!」
完全についてこれていない。
「アレックスさん、しっかり。頑張りましょう。」
アシュリーに励まされ必死にアシュリーについていく。
「あ、あのアリスさん、彼は・・・・・・」
「ええ、全くの初心者よ。ハナから勝負にならないことも解っていたわよ。」
「では、どうして?」
「エバンスさんとの実力の差を思い知れば素直にエバンスさんの弟子になると思ったから。」
アリスさんが満面の笑みで言う。
「最初から計算していたのですね?」
「ちゃんと理由はあるわよ。私に弟子入りして私の修業についてこれると思う?」
「・・・・・思えません。私だったら逃げます。」
「そういうことよ。」
絶対あとからつけたこじつけだ。
「さて、次の修業にいくわよ。次は組み手よ。エバンスさんはアレックス。メアリーはアシュリー。セフィリアさんはニーナさん。私はマリーさんと組み手をします。」
なるほど実力が近いもの同士で組み手をするわけか。
「いきますよ、エバンスさん。」
アレックスは猛然と私に向かってくる。しかし、初心者のアレックスでは当然のように私の相手にはならない。
「少し休憩をしよう。見るのも修業だ。」
私はアリスさんとマリーの組み手を指差して言う。
「はい。」
アレックスが初めて私の指示に素直に従う。
「くっ!!」
マリーがアリスさんの動きに撹乱されている。
「そこっ!!」
マリーがアリスさんの動きをとらえパンチを繰り出す。
アリスさんは必死に両手でブロックする。
この一撃をきっかけに攻守が逆転する。
「今度はこっちからいきます。」
マリーのパンチは轟音をたててアリスさんに襲い掛かる。
「くっ!!」
アリスさんが必死にかわす。マリーが間合いを詰める。
「甘い。」
アリスさんは自分の距離に戻し再び攻守が逆転する。
「二人ともバケモノだ。」
私は二人の組み手をこう論評する。
アレックスはただ見入っているだけだ。
「ストップ。終了だ。」
私の終了の合図でようやくアリスさんとマリーが息をつく。
「はあ、はあ、はあ。さすがはマリーさん。私も良い修業になったわ。」
「はあ、はあ、はあ。こちらこそ。ありがとうございました。」
二人は握手して家へ戻る。
「これで解ったでしょ?エバンスさんに弟子入りしなさい。」
「すみません、僕を弟子にしてください。」
「わかっ・・・・」
「エバンスさんではありません。マリーお姉様、僕を弟子にしてください。」
「わ、私ですか?とんでもないです。私はハンターではありませんから。」
アレックスはアリスさんと互角に戦うマリーを見て敬意を抱いたようだ。
「ハンターでなくても構いません。僕を弟子にしてください。」
「どうしましょうか?エバンスさん。」
「う〜ん、今のアレックスの実力では狩りに連れていくことは出来ないからマリーが師匠としてアレックスを鍛えてもらうと助かるのだが・・・」
「でも、私って人の上に立つようなタイプではないですよ。」
「それなら大丈夫よ。私も修業に付き合うわ。」
セフィリアがマリーを後押しする。
「・・・・解りました。師匠らしくないですけど、よろしくお願いします。」
「それでは男同士で風呂にでも入るか。」
「はい。お兄さん。」
「お兄さん?」
「エバンスさんというのは言いにくいので。ダメですか?」
「そんなことはない。大歓迎だ。」
私とアレックスは風呂場へ向かう。
ガラッ!!!
「あ・・・・・・・・」
「きゃ〜〜〜〜!!」
お風呂にはアリスさんが既に入っていた。
「馬鹿ハンター・・・」
後ろには殺気をまとったセフィリアが立っている。セフィリアはアレックスは不可抗力ということで許し私にだけダイナマイトパンチを炸裂させる。
「な、なんで私だけ〜〜〜〜???」
・・・・つづく。