第5巻マ
□第126話 番外編 雑談
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「おはよう。」
「お、おはようございます。お師匠様。」
「どうしたの?エバンス?珍しいわね。」
「天変地異でも起きなければ良いけど・・・・」
確かに私が自らの力で起きてくることは珍しいことだが、酷い言われようだ。
「セフィリアもニーナさんも失礼ですよ。ハンターさんだって一年に一度くらいは自分で起きますよ。」
フローラの言葉が一番酷いのだが・・・・。
「メアリーさん、そろそろエバンスさんを起こしに・・・・・え〜〜〜〜〜?エバンスさん、熱でもあるのですか?」
「私も一年に一度くらいは自分で起きるぞ。」
ん?どこかで聞いたフレーズだな。まあ良い。
「とにかくアーサーさんの所へ行ってくる。」
「待って、私も一緒に行くわ。」
私とニーナの二人でアーサーさんの店へ情報を仕入れにいく。
「エバンスさん、来ていただいて申し訳ないのですが今日は情報がないのですよ。」
「情報がないって昨日のクシャルダオラは目撃されていないの?」
いや、情報がないのだから目撃されていないだろう。
もちろん口に出して言える訳がない。それほどまでにニーナの剣幕はすごい。
「クシャルダオラ?ああ、昨日の得体の知れないモンスターですか?目撃されていません。」
アーサーさんはすごい剣幕のニーナを相手に冷静に答える。
「情報がないものは仕方がない。帰ろう。」
ニーナはブツブツ言いながらも私についてくる。
「お帰り。どうだったの?」
「今日はモンスターが目撃されていないらしい。今日は久しぶりのオフだな。」
「師匠、私、修業をしたいです。」
アシュリーはそう言うが昨日の疲労が抜け切っていない。
「アシュリー、休むのも修業のうちだ。」
「はい、わかりました。」
「それでしたらニーナさんの昔話を聞きたいです。」
「メアリー、昔話って私そんなに歳くっていないわよ。」
ニーナが眉をぴくぴくさせながら言う。
「い、いえ。そういう意味ではなくて、なぜ師匠に見捨てられて無事でいられたのかと・・・・」
「メアリー、無神経だぞ。そういうことは聞かないものだ。」
「いいわよ。別に。」
実は私も聞きたかったことだ。しかしニーナは無理をしていないだろうか?
「ニーナ、話したくなければ別に無理をして話す必要はないぞ。」
「大丈夫よ、ありがとう。」
私達は朝食後にニーナの話を聞くことにする。
「それじゃあ、師匠が私を見捨てた後の話ね。その後、私は必死で逃げたわ。あの時の実力では100パーセント勝てる見込みがなかったし。」
ニーナは淡々と話し始める。
「あ、それからあの男を師匠なんて呼びたくないからこれからは【ブライド】って呼ぶから。」
それはそうだろうな。自分を見捨てた人間を師匠なんて呼びたくないだろう。
「私はブライドを必死に追ったけどあの男、逃げ足だけは速かったのよ。」
「ニーナさんの足でも追い付かなかったのですか?」
確かにニーナでも追いつけなかったということは相当な速さだ。
「今の私なら簡単に追い付くわよ。それからよ、私が脚力を鍛えたのは。アリスさんに憧れているからということもあるけどブライドを見つけた時に逃がさないようにするために鍛えたのよ。」
「そろそろ本題に戻しましょう。」
セフィリアが脱線した話題を無理矢理もとに戻す。
「そうね。とにかく私は必死に逃げたわ。でも相手はリオレウス。逃げ切れるなんて思わなかった。私はここで死ぬんだって思ったわ。」
「でも無事だったのですよね?」
「私のスタミナも尽きて諦めたその時に一人の男が私を助けたの。」
「姉ちゃん、大丈夫か?俺がやるから逃げや。」
ん?この言葉ってもしかして・・・・・・・。
「ニーナ、その人の名前は?」
「聞いていないわ。というより聞く気にならなかったわ。」
「どうしてだ?」
「それは後で話すわ。続きを話しても良いかしら?」
話の腰を折った私はみんなから白い目で見られる。
「ど、どうぞ。」
「その人は大剣を体の一部のように扱って、それはもう華麗な戦いぶりだったわ。そしてあっという間にリオレウスを討伐したの。」
言葉といい大剣を華麗に扱うといいやっぱりあの人だろうな。でも確証がない。
「これで大丈夫や。でも一応心配やし町まで送っていくわ。」
「ありがとうございます。とは言ったものの私はブライドの一件で人間不信になっていたわ。でも折角助かった命を無駄にしたくなかったからその男に町まで送ってもらったわ。」
「名前を聞く気にもならなかったのはブライドのせいで人間不信になったからなのか?」
「最後まで聞いて。もちろん町に戻ってもブライドは戻ってこなかったわ。それはそうでしょうね。弟子を見捨てる最低なハンターと言われるのは目に見えてるから。私はお礼だけでも言おうと思って助けてくれた男に名前を聞こうと思ったわ。でも、その男は私には見向きもしなかったのに私より美人でもない女を口説いていたわ。」
や、やっぱり。あの人だ。
「なあ、ニーナ。その口説かれていた女の人ってココがふくよかな人ではなかったか?」
私は胸を指差して言う。
「ど、どうせ私は貧乳ですよ!!!」
ニーナのフルスイングパンチと何故か解らないがセフィリアのダイナマイトパンチが私の顔面をとらえる。
「あぎゃ〜〜〜〜!!」
どうやらあの人で間違いないようだ・・・・・。私は薄れゆく意識の中、疑惑が確信に変わって安らかに気絶する。
・・・・番外編 完。
・・・・つづく。