第5巻マ

□第125話 風翔龍!
1ページ/1ページ

「お師匠様、朝ですよ。起きてください。」

「やだ。」

はっきり言ってまだ眠い。そもそもこれだけ早く起こされるのはマリーの温かいうちに朝食を食べてほしいという願いからだ。作る立場の人間からすると当然の想いだが私の立場からすると作る時間を遅らせたら良いだけの話だ。

「ぐはぁ!!!」

私が油断している所へメアリーが全体重をかけて私の上に乗る。

「目が覚めましたか?」

「あ、ああ、バッチリだ。おはよう。」

「おはようございます。」

私達は食卓へと向かう。

「おはよう、エバンス。そろそろ古龍が現れる頃じゃない?アーサーさんの所へ行ってみない?」

「そうだな。行ってみるか。」

私とニーナは朝食前にアーサーさんの所へ行くことにする。

「ちょうど良い所に来てくれました。スティーブが見たこともないモンスターを見たと言っているのです。今回は情報料はいりませんから密林まで確認に行ってくれませんか?」

「はい、わかりました。密林ですね。」

私達は一度家に戻りセフィリアに指示を仰ぐことにする。

「おそらく古龍でしょうね。これを持って行きなさい。」

セフィリアが本のようなものを差し出す。そこには【古龍事典】と書かれている。

「私が作ったものよ。写真入りだから解りやすいと思うわ。」

「ああ、ありがとう。」

私達は朝食を済ませ密林へ向かう。

「師匠、私自信がありません。」

「大丈夫だ、自分を信じろ。私とニーナもいる。必ず守ってやる。」

「はい。」

「お師匠様、いました。あれですね。」

私は古龍を確認し【古龍事典】で調べる。

「あれはクシャルダオラだ。閃光玉は効くらしい。」

「先手必勝よ。」

いつものようにニーナが無鉄砲に突っ込む。

「きゃあ!!」

クシャルダオラは身に風をまとい近寄ることができない。

「どうすれば良いのよ。」

ニーナがキレる。

「と、とにかく閃光玉を投げてから考えよう。」

私は閃光玉を投げてクシャルダオラの視界を奪う。

「風が無くなったわ。これならいけるわ。」

私はその間に【古龍事典】で弱点を調べる。

「ニーナ、顔面だ。顔面を破壊すれば風は止まる。」

「あんたがやりなさいよ。結構怖いわよ、顔面を破壊するなんて。」

「は、はい。」

私が顔面に狙いを定めた所へクシャルダオラがウィンドブレスを発射する。

「ひえ〜〜〜!!!」

私は間一髪かわす。

「が、顔面なんて無理だぞ。」

閃光玉の効果が切れて再びクシャルダオラが風を身にまとう。

「仕方ない。もう一度だ。」

私は再び閃光玉を投げる。

「今度こそ。でやぁ!」

一撃大剣を振り下ろし回転して距離をとる。

「こんなことでは顔面破壊なんてできないぞ。」

「私がやります。」

アシュリーが弓を構えて精一杯溜めて撃つ。
弓はクシャルダオラの顔面を貫通する。
クシャルダオラは少しひるむ。

「よし、いいぞ。しかしウィンドブレスには気をつけるのだぞ。」

「はい。」

「私もアシュリーには負けていられません。尻尾はお任せください。」

メアリーがクシャルダオラの背後にまわり尻尾に双剣乱舞を叩き込む。

「子供が頑張っているのに私達が頑張らないでどうするのよ。」

ニーナは意を決してクシャルダオラの顔面を斬りつける。
閃光玉の効果が切れたのを確認して私はもう一度閃光玉を投げる。

「危ない、ニーナ。」

クシャルダオラのウィンドブレスがニーナを狙う。私は飛び付きニーナを助ける。

「あ、ありがとう。」

「一気に顔面を破壊するぞ。」

「わ、解ってるわよ。」

赤面した顔を隠すようにニーナは後ろを向いて答える。

「メアリー、アシュリー、大丈夫か?」

「はい、大丈夫です。」

二人とも大丈夫とは言っているが明らかに今までのモンスターとは違う。精神的疲労が激しいようだ。

「ニーナ、二人とも限界だ。一気に片付けるぞ。」

「わかったわ。」

私とニーナが決死の覚悟でクシャルダオラの顔面をメッタ斬りにする。

「よし、顔面を破壊したぞ。」

その時、クシャルダオラは急に空に舞い上がり密林から逃げていく。

「追うわよ。」

「無理だ。メアリーとアシュリーも限界だし今日の所は帰ろう。」

「・・・・・そうね。」

ニーナは渋々納得する。

「折角追い詰めたのに・・・・・」

帰る途中もニーナはブツブツ文句を言っている。
追い詰めていたのは確かだ。しかしメアリーとアシュリーの状態を考えると仕方がない。ニーナもそこは重々承知している。

「ただいま。すまない、クシャルダオラを逃がしてしまった。」

「お帰り。それなら大丈夫よ。古龍には自然治癒能力がないからダメージは残ったままよ。」

「そうなの?」

ニーナの顔に笑顔が戻る。

「メアリー、アシュリー、お風呂に入るわよ。」

「はい。」

コンコン!!
「エバンスさん、アーサーです。」

「はい、どうしたの・・・・うわぁ!!」

私は顔を腫らしたアーサーさんを見て驚く。

「情報料を貰わなかったことでステフにハイキックを食らわせられまして・・・・。すみませんが情報料をいただけませんか?」

気の毒に思った私は情報料を支払う。

「あ、ありがとうございます。これでステフに殺されないで済みます。」

アーサーさんはホッとした表情で帰っていく。

「へ〜、成功報酬も貰えないのに情報料を支払うほど余裕があるのね?」

私は恐る恐る後ろを振り向く。

「ご、ごめんなさい。人助けだと思って見逃して下さい。」

「問答無用!!」

「あぎゃ〜〜〜!!」

私はセフィリアのダイナマイトパンチで風呂場まで転がる。

「きゃ〜〜〜〜!!!」

今度はニーナのフルスイングパンチを喰らう。

「にぎゃ〜〜〜〜〜!」


・・・・つづく。

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ