第5巻マ
□第121話 戦死!!
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「アシュリー!!!」
「ど、どうしたのですか?お師匠様?」
私はメアリーの言葉で我にかえる。どうやら夢だったようだ。
「い、いや、何でもないのだ。おはよう、メアリー。」
「でもすごい汗ですよ。本当に大丈夫ですか?」
「ああ、大丈夫だ。心配をかけてすまなかった。」
私は朝食の前にシャワーをあびることにする。
「おはよう、エバンス。朝からシャワーなんて珍しいわね。」
「ニーナ、少し話があるのだが・・・・・」
私はニーナを外に連れ出す。
「どうしたの?」
「実はアシュリーがモンスターにやられてしまう夢を見てしまったのだ。今日の狩りはやめておいたほうが良いのかもしれない。」
「でも、モンスターを放っておくことはできないわ。私とエバンスだけでも行くべきよ。」
「それはそうだが私とニーナだけで狩りに行くのをメアリーが許すはずがない。となれば当然アシュリーもついてくる。」
「それなら私とエバンスで守ればいいじゃない。」
「ニーナの言う通りね。二人で守ればいいのよ。それとも守りきる自信がないの?」
突然セフィリアが会話に割って入る。
「どこから聞いていたのだ?メアリーとアシュリーには聞かれていないだろうな?」
「大丈夫よ。二人とも朝食作りを手伝っているわ。それよりもどうなの?守りきれるの?」
「もちろんだ。何があっても守る。」
「それならこの話はおしまい。朝食にするわよ。」
そうだ。夢は所詮夢だ。アシュリーは私が必ず守る。
私は心に誓い家に入り朝食をとる。
「それではアーサーさんのところに行ってくる。」
私は情報を仕入れにアーサーさんの店へ向かう。
「おはようございます、エバンスさん。情報ありますよ。」
「今日は何ですか?」
「密林でリオレウスとリオレイアが目撃されています。どうしますか?」
私は正直ビビった。夢の内容とあまりにも酷似している。夢ではアシュリーは密林でリオレウスの炎をまともに受けてしまったことが致命傷だったからだ。
「エバンスさん?大丈夫ですか?顔が真っ青ですよ。」
「あ、ああ、すみません。行きます。お願いします。」
「大丈夫ですか?無理しないでくださいよ。それではステフに代わりますね。」
「それでは契約書にサインと情報料をお願いします。気をつけて行ってきてくださいね。」
私は一度家に戻る。
ニーナに夢の内容と今日の狩りの内容の合致点を伝える。
「私も気になったから助っ人を呼んできたの。」
現れたのはピーターさんだ。
「ピーターさん、店はいいのですか?」
「もちろんです。店とニーナさんのお願いを天秤にかけたら誰でもニーナさんのお願いをとりますよ。」
普通は誰でも店を選ぶと思うが・・・・・・。
しかしピーターさんの助っ人は正直ありがたい。
「それでは行くか。」
「はい。」
私達は密林へと向かう。
「メアリー、アシュリー。今日はリオレウスとリオレイアと二頭もいるから絶対に無理はしないでくれ。わかったな?」
「はい。」
私のいつも以上の厳しい声に二人は圧倒されたように即答する。
「まずはリオレイアのようね。いくわよ。」
ニーナがリオレイアを発見し突進する。
アシュリーは援護するように閃光玉を投げる。
「ピーターさん、アシュリーをお願いします。」
私は同じ弓使いのピーターさんにアシュリーの護衛を頼み私自身はニーナの援護に向かう。
「リオレイアに時間をかけている余裕はないわ。一気に行くわよ。」
「ああ、任せてくれ。」
私とニーナの連携によりリオレイアは早くも足を引きずり逃げようとする。
「逃がしませんよ。」
そこへ私とニーナの猛攻を呆然と見ていたメアリーが我にかえり攻撃を加える。
「やりました。トドメを刺しました。」
「よくやった。」
私とニーナはアシュリーを守れる距離を保ちリオレウスを捜す。
「師匠もニーナさんもどうしたのですか?何か様子がおかしいですよ。」
私とニーナは一瞬ドキッとしたが平静を装い適当にごまかす。
「ニーナさんは今、好きな人がいるのですか?」
緊張感がないのはピーターさんだけのようだ。
「ノーコメントよ。」
ニーナは軽くあしらう。
「ノーコメントということはいないということか・・・・いや、待てよ。ひょっとして私の事が好きで照れてノーコメントと言っているのかも。」
ピーターさんはどうやらポジティブシンキングの持ち主のようだ。
「お師匠様、来ましたよ。」
メアリーの一言でスイッチが入り私は戦闘モードになる。
「エバンス、アシュリーを頼むわよ。」
ニーナはいつものように先陣をきりリオレウスに斬りかかる。
そこへアシュリー目掛けてリオレウスが炎をはく。
集中していた私は難無くアシュリーを救出する。
「メアリー、ニーナの援護を頼む。」
「はい、お師匠様。」
メアリーはリオレウスの足元にはいり双剣乱舞を叩き込む。
「閃光玉は私に任せろ。」
閃光玉を投げようとした瞬間リオレウスは再びアシュリー目掛けて炎をはく。私は閃光玉を諦めアシュリーの救出にはいる。
「エバンスさん、閃光玉は私にお任せください。」
ピーターさんが閃光玉を投げてくれるおかげで私はアシュリーの護衛に専念できる。
しかし今日のリオレウスはなぜかアシュリーばかりを狙う。
「もしかして私リオレウスに無視されてる?」
ニーナがなぜかキレている。
「ニーナさん落ち着いてください。」
メアリーが必死になだめるがニーナはメアリーを振り切りリオレウスをメッタ斬りにする。
しかし相変わらずリオレウスはアシュリーばかりを狙う。私は必死にアシュリーを守る。
「こなくそ〜〜〜!!」
ニーナの口から出たとは思えない声色とセリフだ。ついにリオレウスも息絶える。
「ふぅ〜。何とか守りきることができたな。」
私達が一息ついたところにマリーが慌てて駆け寄る。
「エバンスさん、すぐに家に戻ってください。急いで。」
マリーの迫力に押されて私達は急いで家に戻る。
「お母さん。こんなところまでどうしたの?」
家に戻ると一人の女性がセフィリアと話していた。アシュリーのお母さんだ。
「アシュリー、よく聞きなさい。お父さんがリオレウスに殺されたわ。帰ってお父さんの跡を継ぐのよ。」
「お父さんが・・・・」
アシュリーはショックでその場に気絶する。
フローラがメアリーの寝室へアシュリーを運ぶ。
「というわけでアシュリーを連れて帰ります。」
「待ってください。アシュリーはまだ子供です。隊長職をすぐに継げるものでもないでしょう。」
「子供だからこそ連れて帰るのです。」
「しかしアシュリーはまだ修業中ですよ。」
私とアシュリーのお母さんの話し合いは平行線をたどる。
「アシュリーは確かに子供よ。だからと言って大人が勝手に人生を決めるのもどうかと思うわ。アシュリー本人の意思を尊重しましょう。」
セフィリアの案に全員賛成する。
そして・・・・・
「私、ここに残ります。そして立派なハンターに成長したときには家に戻りお父さんの跡を継ぎます。」
アシュリーの決意の固さに母親は何も言えず・・・・いや、感動して涙を流し翌日一人で帰宅の途へついた。
「師匠、これからは今まで以上に精進します。これからもご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いします。」
・・・・つづく。