第3巻ユ
□第70話 決断a
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「おはようございます、お師匠様。朝ですよ。」
いつものようにベッドの上に乗りはしゃぐメアリー。
「頼むから普通に起こしてくれ。」
「でもお姉様がこうやって起こせと言うものですから。」
今日こそはあの女にガツンと言ってやる。
「あら`おはよう。どうしたの`怖い顔して`」
「いや、ちょっと謎のハンターのことで考え事を・・・」
やっぱり言えるわけがない。
「で`考えはまとまったの`」
「ああ、しばらく謎のハンターのことは考えないことにする。私にはそれ以上にやらなければならないことがある。」
そう、謎のハンターより調査やメアリーの修業のほうが私には大事なのだ。
「そうね、メアリーを立派なハンターにするほうがよっぽど有益だわ。」
「それで、今日はどうするのですか`お師匠様`」
「今日は実戦だ。だから双剣を持ってくるのだぞ。」
「はい、お師匠様。」
ヤバイ時にはマリーからもらった閃光が走るビンもある。大丈夫だろう。
「ちょっと馬鹿ハンター、そのビン見せて`」
私はセフィリアにビンを渡す。
セフィリアはビンをしばらく眺め何かメモをとる。
「ねえ、馬鹿ハンター、調査に行くならこれも採取してきて。」
私はメモを受け取り見てみる。
【石ころ】【ネンチャク草】【光蟲】
「石ころは解るがあとの二つは聞いたことがないぞ。」
「ちょっと待ってなさい。」
セフィリアは研究室に入り何か資料を持って戻ってくる。
「これよ。ちゃんと覚えなさい。」
光蟲は解るけどネンチャク草は区別がつきにくいな。
「すまないがこのページだけ破いてもいいか`」
「ええ、かまわないわよ。間違えて採ってこられるよりマシだわ。」
他に言い方があるだろヤ
「お待たせしました。朝食です。」
マリーが朝食を運んでくる。フローラも研究室から出て来て朝食をとる。
「それでは行くぞ、メアリー。」
「はい、お師匠様。」
私たちは密林へと向かう。セフィリアに頼まれた素材を集める。
素材集めに集中しているところにドスファンゴが突進してくる。
「危ない、メアリー。」
私は間一髪、メアリーを突き飛ばすが私自身、ドスファンゴに足を突かれてしまった。
「お師匠様、大丈夫ですか`」
「大丈夫だ。だが、これでは戦えないな。メアリーが倒すのだ。」
「で、でも・・・・」
「心配するな。メアリーの今の実力なら大丈夫だ。それに私がアドバイスをするから。」
「はい、わかりました。やってみます。」
私は万が一に備え木に登り閃光が走るビンを持ってかまえる。
「突進してくるぞ。マトモに受けてはダメだ。しっかり避けるのだ。」
「はい、お師匠様。」
メアリーはドスファンゴの突進に集中して避ける。
「今だ、乱舞を叩き込め。」
私のアドバイスの前に既にメアリーは攻撃体制に入っていた。
そして、双剣乱舞。
「油断するな。また来るぞ。」
「はい。」
メアリーはかなり集中している。至近距離からの突進もしっかりと避ける。そして追い掛けて双剣乱舞。
「す、すごい。流石はアリスさんの娘。」
たまらずドスファンゴが逃げようとする。
そこで私は閃光が走るビンを投げる。
ドスファンゴは目をくらませて動けなくなる。
「メアリー、今だ。」
「はい、お師匠様。」
ここぞとばかりにメアリーは双剣乱舞を連続で叩き込む。
そしてドスファンゴは息絶える。
「よくやったな。素晴らしかったぞ。」
私はメアリーを抱きしめて頭をなでてやる。
「あ、あの、あ、ありがとうございます。」
メアリーは顔を赤くして私の手を引き家へ帰る。
「ただいま、持って帰ってきたぞ。」
「お帰り、ご苦労様。・・・・って怪我してるじゃない。どうしたの`」
「お師匠様が私をかばって・・・・」
「とにかく治療するわよ。フローラ、ちょっと手伝って。」
フローラが研究室から出てくる。
「あら、大変ですね。早く治療しましょう。」
セフィリアとフローラの迅速な処置のおかげで徐々に痛みが和らいでくる。
「ありがとう、助かるよ。」
「もう、大丈夫そうね`私は仕事があるから。」
セフィリアは研究室へと入っていく。
「フローラもありがとう。私はもう大丈夫だ。」
「いえ、お役に立てて良かったです。無理をなさらないでくださいね。」
フローラも研究室へ戻る。
メアリーが泣きそうな顔で私を見ている。
「どうしたのだ`メアリー。」
「すみません、私のせいでお師匠様が・・・」
「気にするな、弟子を守るのは師匠の仕事だ。それよりもよく一人で頑張ったな。エライぞ。」
泣きそうなメアリーの表情が一気に笑顔へと変わる。
「ありがとうございます、お師匠様。」
・・・・つづく。