第3巻ユ

□第63話 候補者a
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毎回恒例のメアリーの独壇場。それはもちろん私を起こしにくる時。今日も例外ではない。

「お師匠様、修業の時間ですよ。早く起きましょう。」

「まずはベッドから降りてくれ。そして、もう一つ、修業の前にまずは朝食だ。」

私は起き上がり食卓へと向かう。

「おはよう、今日はどうするの`」

最近はこの会話が当たり前のようになってきたな。しかしセフィリアが修業を手伝ってくれると非常に助かる。

「今日はせっかくビンセントさんがメアリーのために作った弓があるからな。弓の修業をしようと思う。」

「でも馬鹿ハンターは弓を使えないでしょ`どうやって教えるの`」

「そ、それは・・・・・そう、気合いだ。気合いで教える。」

「それは是非とも私にも教えてほしいわ。」

セフィリアはイヤミたっぷりで言う。しかし実際にセフィリアの言う通り私は弓など使ったことがない。さて、どうするべきか・・・・・・

「お師匠様、今日は弓の修業なんですね`よろしくお願いします。」

メアリーの期待に満ちた目を見ると今更予定変更なんて出来ない・・・。やるしかない。

「あの〜、エバンスさん`最近私の出番少なくないですか`」

「出番`意味が解らないぞ。」

せっかくヤル気になったのにマリーにいきなり出鼻をくじかれる。

「エバンスさんは主人公だから仕方ないとして最近はセフィリアさんとメアリーさんが目立ち過ぎです。」

「マリー、ハンターさんに言っても仕方ないでしょ`作者さんに言いなさい。」

マリーとフローラの会話に全くついていけない。とりあえず私達は朝食をすませる。

「さあ、お師匠様。修業に行きましょう。」

私はメアリーに手を引かれて外に出る。

「よし、まずはこの空き缶を狙ってみるのだ。」

「はい、お師匠様。」

メアリーは弓を構えて発射する。
ポトッaa
弓は1メートルも飛ばずに落ちる。

「もっとしっかり引くのだ。」

私の助言で力一杯弓を引く。
ビュッaaaa
今度は勢いよく飛んだが見当違いな所へ飛んでいく。

「やっぱり難しいですね。」

「簡単に諦めてはダメだ。ビンセントさんが心を込めて作ってくれた弓だ。しっかり使えるようにしよう。」

「はい、お師匠様。」

その後、何度も挑戦するがコントロールは相変わらずだ。
そこへ・・・・・

「お嬢ちゃん、それじゃあダメだよ。弓を引く右手にばかり頼ってはいけない。左手こそが重要なんだよ。」

私より少し年上かというような男がメアリーに助言し手本を見せる。
見事、空き缶のど真ん中に命中。
続いてメアリーが挑戦する。

「ほら、お嬢ちゃん。また右手にだけ頼ってるぞ。」

「はい。」

メアリーはしっかりと目標に狙いを定める。
ビュッaaa
弓矢は空き缶のど真ん中とは言えないが見事に命中する。

「よくやったな。メアリー。」

「ありがとうございます。お師匠様、お兄さん。」

「お嬢ちゃんがメアリーちゃんかい`すると、あなたはエバンスさん`」

「はい、何故知っているのですか`」

「私はビンセントさんの弟子の武器職人ピーターと言います。師匠がこの村には武器職人がいないからと私をよこしたのです。」

怪しい点が多すぎる。武器職人にしては弓の扱いがうますぎる。なぜ全く迷わずにこの村に辿り着いたのか`
私はピーターさんに聞いてみる。

「私は元ハンターです。ビンセントさんの武器に惚れ込んで弟子にしてもらったのです。弓は護身用ですね。ポッケ村には何度か来たことがあるので・・・・」

全てつじつまは合うが合いすぎて怪しい。私はピーターさんを謎のハンター候補者リストにリストアップする。

「で`家はどうするのですか`」

「実は師匠が以前に来た時にアルバートさんという方と話をしていたらしく彼の店で共同で店を出しても良いらしいです。家も近くの空き家を使っても良いと・・・・。」

私はとりあえず家に案内しセフィリア達を紹介する。一通り挨拶をすませアルバートさんの店へ案内する。

「どうもありがとうございました。これからよろしくお願いします。」

私はピーターさんと別れ家に戻る。

「ねえ、馬鹿ハンター。あのピーターさん、怪し過ぎるわよ。何で武器職人が弓を持っているのよ`」

私はセフィリアに説明する。私が説明を聞いても怪しいと思うのだ。当然セフィリアも納得がいかない。

「とりあえずピーターさんは保留ね。彼の動向には注意しなさい。」

ようやく謎のハンターの尻尾を掴んだような気がする。しかし決めつけは禁物だ。彼はあくまでもグレーだ。

・・・・つづく。

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